第17話 これ、調査と言うよりもデートな気が…… By銃器人格

「エルドラグーン伯爵って太っ腹だよね。あんな木っ端の盗賊を倒しただけで金貨を30枚も貰えるなんて」

「あの盗賊どもは、拘束魔法を用いた戦闘で被害を出していたらしいからな。被害者は100にも上ると聞く。だから、妥当ではないか?」

「へぇ、そうなんだ」


依頼じゃこんなに沢山は受け取れないからね。あの盗賊どもを倒して良かった。資金調達ができたし、来た意味がもう一つできたかな。それが幸せを邪魔されたのが複雑だけど。


ギルドから受けていた依頼も、無事に達成できそうかな。監視が何も引っかかっていない。仕事を切り上げて自室に入っても、女の人影が一切見ることがない。唯一あるのは、正式な夫人であるミロエッタだけ。


「……なあ、いつまで調査を続けるつもりなんだ。ほとんど疑いは晴れている。完全になくすのも、精々あと二日あれば十分だ。だが、今のアヤトからはそんな気がしない。まるで、浮気調査とは違う何かを探っているような気がするんだ」

「やっぱり気づくよね。俺さ、嫌な予感がするんだよ。エルドラグーン伯爵に不幸が襲いかかるだけじゃなくて、この領地全体がまずい気がさるんだ。強烈な負の因果の予感がするんだよ……」

「そうか。なら、アヤトの予感も含め、調査をするか」


叶わないなあ…ほんと、よく見てる。


ーーー


「あのぉ、ミリャンさんやい。俺たちがするの、調査ですよね。浮気、そして俺の予感の。…今やってるの、男女がする逢瀬おうせな気がするのですけど」

「そうだな。視線を紛らせるのは、男女の格好を装うのが一番良い。……もしかして、私の服装は似合わないか?頑張って選んだんだがな」


困ったように笑いつつ、悲しんだような音色を持ってこちらを見つめる。白いワンピースを手で握って、悲しさを押し殺していた。心苦しい気持ちになるが、目を向けられない。目に入れられない程見苦しいという訳ではない。


むしろ逆。俺が目を向けられないのは、服装とミリャンが似合いすぎて見られないから。少しの花の刺繍が装飾である純白のワンピースは、元の姿でも可憐や儚さを出していたミリャンを更に際立たせている。


顔立ちが整っているが、とっつき難かった(気遣いもできて優しい良い子)のが、そんな欠点を目視しても許容できるい子に変化した。元々が良い子だったのを知っており、愛いと美しさを兼ね備える姿になったことで感情が爆上げになったのか。一気にストライクゾーンに入って来たからなのか。俺には分からない。


けれど、分かること一つ。ミリャンには「似合っている」という言葉を今からでも送らなければならない。誰だ、こんな子を悲しませたのは。殴ってやろうか。


※あなたです


「そんなこと無いよ。ただ、可愛すぎて目線を合わせずらかっただけ。心臓バクバクになってるなんて、恥ずかしいじゃん?」

「それなら私が頑張って選んだ甲斐があったというものだ。えぇと、どれどれ。……本当だ、心臓の音が早い。私なんかにこんなドキドキしてくれるなんて、少し嬉しいな」


やばい。何がやばいって撃沈しそう。表面上は何とか保てているけど、今にも暴発してしまいそう。いやだってよ、こんな可愛らしい行動して、嬉しそうにニヤけてるの。少なくとも俺は耐えられんね!


表面上、表面上はクールを押し倒すんだ。照れなんて言う恥ずかしいのは見せたくない。何故か知らないけど、俺はミリャンの前だと格好をつけたいんだ。


「ミリャン。調査もあるし、そろそろ離れて移動をしよっか。せっかくならこの街も楽しみたいしね」

「ぁ、ぅん。分かった。動きにくいもんな。仕方ないよな」

「あー、手を繋ぐか?」

「ああ!」


喜びをめながら頷くその姿に悶える俺が今ここにいる。負けました。俺は完膚なきまでに敗北しました。というか、勝てる人はいるのか。


そんな降伏宣言を心で上げていれば、ミリャンは俺の手首を掴んで走っていく。走ったら危ないと思うのだけど……いや、これは無粋か。初めてできた友達と、初めての経験を知ろうとしている。なら、俺は注意はできないな。


ミリャンの初めての経験が楽しいものであるために、俺も楽しむとしますかね。こんな可愛い子が俺のためにと言ってくれているのなら、俺も楽しまなきゃ損と言うもの。


「なあ、どこから行けば良いんだ?私、外食とか食べ歩きとか、したこと無いんだが。どうすれば逢瀬らしい逢瀬ができる!?」


走っていた足を止めたかと思えば、突如としてそんな発言をこぼす。えぇ……?嘘でしょ、あの走り方でどこに行くのか決めてなかったのか。計画とか特に決めてないんだろうし、仕方ないと言えば仕方ないのかもしれないけど。


苦笑いをしつつ、脳内で情報を展開する。確か、館にある予定ではこれから知り合いの商人に会いに行った後、露店や鍛治屋を見回り、最後に街を守る城壁の上で周囲を確認するはず。


即興で考えたデートプランになるけど、最初はその商人が経営している商会での買い物。その後に露店での食べ歩きとかをしようかな。


「それでどうですか?お嬢さん」

「流石アヤトだな。手慣れてるぞ」

「俺は初めてだよ。…再度手を握らせてもらってもよろしくて?案内しますよ」

「ふふ、それはありがたいな。よろしく頼む」


____

☆作者一言メモ

始まりましたデート回。作者の語彙力が心配ですけど、頑張って書くので楽しみにしておいてください。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る