第16話 平穏を壊すヤツなんて大抵がクソ野郎だから、遠慮は必要ないよね By銃器人格

「ミリャン、殺そうか。調査の邪魔をするのなら、天罰を下さなきゃ。死という避けられない天罰を」

「何故もそんなに怒っているのだ。まあ、放置していても大変だから、退けるのは賛成だが。殺しを積極的にするなんて、珍しいな」


疑惑の視線を向けてくるミリャンに微笑みを浮かばせつつ、すぐさま盗賊たちに意識を向ける。あの幸せな空間を邪魔された。その事実に立ってしまった怒りの矛を向け、攻撃のタイミングを確認する。


その姿に説明を求めるのを諦めたのか、ミリャンはため息を吐きながらも、俺の隣にしゃがんて時を見極める。


狙いはリーダー格。絶命が目的ではなく、リーダーが怪我をしたことによる動きの鈍化が目的だ。場合によってはすぐに立て直されてしまうが、あのリーダー格にそこまでの動きができると思えないから、問題はなしだ。


……見えた。撃ちやすい体勢になってくれて助かるよ。


日に日に強化されているSAA(コルト・シングル・アクション・アーミー)の弾丸がリーダー格の手に当たり、周囲の動きが鈍った瞬間、ミリャンが飛び出してリーダ格に跳び膝蹴りを与える。やっぱりミリャンの打撃って威力高いよなあ。魔法使いになりたいなら魔力を織り交ぜた魔拳タイプになれば良いのに。


そんな思考を展開しながら、ミリャンに対して武器を向けている盗賊に打撃を送る。所持している武器をはたき落としつつ、腹部にストレートパンチを五発ほど。その結果、 破裂音と赤の血が残るが、気にせず他の盗賊に意識を移す。


「怪我はない?」

「怪我をする暇もなく、盗賊たちを絶命させたのが何を言うか。私が一人で飛び出したのはアヤトを信頼していたからだ。流石の結果だったぞ」

「だからと言って、一人での独断行動はどうかと思うけど。俺のが間に合わなかったら死傷にまで及んでたかもしれないんだよ。最悪ね。そこも含めて行動してくれる?」

「なら大丈夫だな。あの距離であのような低位の実力者相手にお前が間に合わないなんてことはない。それに、私単体だけでも最悪は回避していたさ」


ほんと、ミリャンは物事をよく見ている。俺がSAAを撃ち放った後、ミリャンが突っ込むのを予測して身構えていたこと。リーダー格とその周りにいる実力をよく見ている。死には届かない安全を意識しているから、こちらは安心して動くことができる。


タイプが格闘などの徒手空拳だから、銃器による援護も合わせやすい。加えて、技巧が中々に高いレベルまで迫っているから、隣や背後を任せて戦う時も、流れを動かしやすい。


誰とが戦いやすいかなんて言われたら俺は多分ミリャンを選ぶ。未来に進めば晴人とのコンビネーションが高まるのだろうが、まだまだ関係が浅い今ではミリャンが一番だ。


その事実に目を細めつつ、未だに残っている盗賊たちに矛を向ける。SAAを片手に装備し、一気に襲いかかってくる盗六人組を冷静に対処する。


攻撃を避けながら、右から襲いかかる一人の盗賊に腹パンを与えてから、首元に弾丸をお見舞いする。二人は右肘、三人は左肘、四人は膝。五人は引き寄せてからのゼロ距離弾丸。六人はアッパーを喰らわせてから、口に銃口を放り込んで引き金を引く。


唾液と血で濡れてしまったSAAを拭いつつ、【人智の叡智】を用いての弾丸生成でリロードをする。やっぱり、この能力の利点はここだな。魔力で生成をすることができるから、態々弾丸を携帯しなくて良いから戦いやすい。まあ、魔力が切れたら使えないのは考えものだが。そんな事態にならないのを祈るしかないよねえ。


「っと…お節介でしたか?エルドラグーン伯爵様」

「いいや、そんなことはない。助かった、礼を言うぞ。名も知らぬ戦士よ」

「それはどうも。…半分の盗賊を任せても?」

「ククク、誰にものを言っておるのか。儂はエルドラグーン・バーン伯爵であり、若き頃に戦場で暴れ回れ、殺戮の狂犬と謳われた男だぞ。この程度の有象無象うぞうむぞう、簡単にほうむり去れるわ!」

「知ってますよ。全ての姿見て、理解できます。一応の確認です」


リロードを終えたSAAで、伯爵馬車を狙おうとしている盗賊を撃ち抜く。もしかしたらプライドが刺激されてしまうかもと思いはしたが、エルドラグーン伯爵の器が広くて助かった。今の状態でエルドラグーン伯爵と戦闘するとなると、勝てるビジョンが見えてこない。


こちら側に引き込めた事実に安堵の息を吐きつつ、地を走り抜ける。俺とエルドラグーン伯爵が話している隙に戦い、無傷とは言えぬ怪我をしているバカのために。


そんなミリャンに迫っているナイフを頭突きで打ち砕き、SAAを脳天に打ち抜く。必死で走ってきたためか、息が荒くなってきている。物事を見る視線が鋭いのなら、もっと考えてから行動してくれないかな。今のは、俺が行かなきゃ間に合わなかなった。


ほんと、信じるのも良い加減にしてほしい。信頼故の無鉄砲、それもそれで困るものだから。


呆れと怒りと闘争心。その渦巻く感情を瞳に映し、右手には危険だったミリャンを抱えていた。


「覚悟はいいか。俺は一切容赦をしないぞ」


__

☆作者一言メモ

次回、戦闘シーンはありません!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る