第9話 どんなの痛手を受けようが喰らいつく、それが俺のやり方 By銃器人格

「やってくれたな。アマツゥゥゥ!貴様らとの因縁を今ここで終わらせてやる!」

「俺は末席だから意味ないと思うけどな!」


腹に突き刺したSAAを即座に抜き、背後へと下がる。本人を中心とした魔力の中規模爆発。避けなきゃ死んでた。ほんと、随分と殺意が高い。そこまで殺したいのかね。


つい呆れの息を漏らしていれば、ウツシカガミは巨大化した腕の攻撃が迫る。魔力が強く、濃くまとっている腕を受けるのは……無理だね。少し受けてみたけど、抑えることなんて夢物語だった。受け身を取ったから大丈夫だけど、取ってなかったら死んでる。


全力ではないとは言え、力で負けて、SAAを撃ち込む暇もある訳ないし。万事休すに近い状態だな、これは。けど、負けてるからって折れてる場合じゃないんだよな。こいつ倒して、アッチの援護にも行くのが最善回答だ。


しょうがない、【人智の叡智】の身体強化をフルに活用したものを使うとするか。設定は時空の時の俺。肉体の強度が離れすぎてるから、体が壊れるかどうかは不安に思うけど…。今とにかく全力の本気でぶち当たるしかないよな。


感覚共有・時空センス・ザ・リンク


体が身軽になると同時に、ダメージが一気に入る。時空時代と今の差異がダメージとして現れているんだ。人外だった時空時代の頃のように、人外へと至らせようとしているからか、魔力が体を蝕んでいる。


しかし、折れない。不屈の精神を持てるほど強くはない。ただ、仲間を思う心があるだけだ。


歪な笑みを浮かばせながら、地を走り抜ける。地面に亀裂が出るほど強く蹴り、空中を跳びながら拳を握る。瞳で対象をしっかりと捉え、拳を前に出す。


それに気づかれて、何十にも壁が展開される。ウツシカガミの体から取り出された肉は、取り出した主人を守ろうとする。


あぁ、そうか。やっぱり俺が思ってた通りの性格だよ、ウツシカガミ。お前は何度も誰かを傷つけて、自分の思い通りに動かそうとする。けど、自分が傷つくことになると、傷つけていたことを忘れてぶるぶると怖がる。


因縁もあんまり無いし、あまりに善人だと拳の軌道が鈍っちゃうからね。ウツシカガミ、お前がクズ野郎で良かった。そのおかげで、遠慮なく、迷うことなく、殴れる…!


「知ってるか、王ってのは理不尽ぶっ壊すもんなんだよ。だから、仲間と友がピンチなら、俺は全力で理不尽を壊す!」


幾数もの肉壁を壊し、ある時空に降臨した皇帝の一撃が、刺さる。その一撃で怯んだウツシカガミ。その隙を狙って、春に散る桜のように、華麗に美しく舞う拳を向かわせる。


巨椀に負けないことなんてない。俺の体がどんどんダメージ負って、感覚共有・時空のパワーが衰えてきている。だからって、勝ちが見えない訳じゃない。


力で押してるからって、油断しまくってるところ。そこが一番のチャンスだ。


「はははっ!捕まえた!」

「しまっ……!がぁぁぁっ……っ!!?」


肉の蔓で両腕を掴まれ、森の木々、地面へと叩きつけられる。それが何十回も続き、はっきり言って体はボロボロだ。


このままは不味い。この肉の蔓、さっきの肉壁のりも何倍も丈夫に作られてる。そこまでして俺を殺したいのか。執着の度合いなら、既に天津家は超えてるでしょ。


いつの時代も、執着する者は面倒くさい。はっきり分かんだね。策はとっておくつもりだったんだけどな。しょうがない、秘策を切るか。


このままじゃ、どうせお陀仏だ。アルティナちゃんや晴人をここで死なせる訳にはいかない。


真技開放、コルト・シングル・アクション・アーミー。タイプ、オルフェニクス。


「おうおうおう!久方ぶりに俺様が復活してみればこの惨状はなんだぁ!?愉悦王であるお前らしかなぁねえなぁ!それに、俺様もこんな鉄野郎になっちまってよぉ」

「こっちにも色々と事情があんの。今でも結構なの背負ってるからさ、協力してくれるだろ?戦友」

「ダハハ!当たり前だなぁ!」


よし、オルフェニクスを仲間にできたんだったら話は早い。全力全開で終わらせて、勝ちをもぎ取りに行ってやる。


まずはウツシカガミから。肉体から出てきた巨腕の連続を足場にしつつ、破壊する。オルフェニクスが魔力タンクをしてくれてるお陰で、俺は冷静に対処できる。


一人でできない現実に怒りの対抗心が燃えつつ、目の前に向かってくる巨腕を利用する。体を魔力の応用で回転させた後、蹴る方法で。


そして頭上を通り過ぎたタイミングで迫る巨腕を蹴り、頭部にSAAを当てる。引き金はノータイムで引かれるが、死はやってこない。


大体予想通りとは言え、頭で死なないのはどうなってんだよ。人間辞めるにしても程があるでしょうに。


「一番言えないの、お前だけどな!」

「うっさいわボケェ!そもそもあの時は人間を辞めてますし。……てか、そんなこと言ってる暇あったら弱点探せ!」

「もう探して見つけてるわ!」


仕事が早過ぎる気がする。生前、オルフェニクスってこんなに仕事が早くなかったような……。


まあ、今は良いか。気にしている場合じゃない。腹部に一点集中だ。絶対に一度で貫いてみせる。


「……!見つけた。五連収束のとびっきり弾丸じゃあ!」


収束をしたことで一気に放たれた弾丸は、全てを貫通して目的地まで向かっていく。肉壁も巨腕も全てを貫いて、死へと至らせる。


「次は、援護か。大丈夫かな。あるてぃ、な、ちゃ……」

「……!?おい!アヤト!アヤト!しっ……」


____

☆作者一言メモ

綾人くん、君どんだけ秘密隠し持ってんの?

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