第4話 厨二を見ていると微笑ましい気持ちになるよ By銃器人格

「こんなもんか。それじゃあな、厨二少女。俺とお前はここでおさらばだ」

「ま、待て!旅をする者!こんな可愛く儚いか弱な女の子を見捨てるのか。それは人間としてどうかと思うぞ!」

「か弱ねえ…世界に愛されてるんだから、なんとかできるでしょ。封印されているとは言っても、自衛ができる範囲は持ってるだろ?」


『めっちゃいい笑顔…性格わるぅ…』


黙らっしゃい。こんな面倒くさそうなやつ、一緒に居たくない。覚えとけよ、綾人。俺がラノベのことを好きなのは、見ている分にはいいからだ。決して面倒くさそうな奴が好きだからじゃない。


だから俺は一緒にいたくない。そんなに絡みたいなら、俺と人格交代をしてやれ!


「薄々と分かってたことだけど、晴人は人と絡むのを嫌いすぎでしょ。それなのに俺とはすぐに通じ合えるし。あの時のことなんて覚えているわけないのに。ほんと、不思議だ。…あ、ごめん。独り言が多かったね。俺はさっき戦った奴、晴人の相棒、綾人だよ。よろしくね」


ーーー


「一つの体に二つの精神がある。……まるで二重面相だな」

「あれ?すんなり信じるんだ。少し認められないと騒ぐものだと思ってた」

「アヤト、お前は私をなんだと……タイプが違うからな。ハルト?とアヤトは私に対する対応が全然違う。それに、歩き方もな」


ほーん、なるほどねえ。俺はただの厨二少女だと思ってたけど、洞察力が高い。魔法使わなきゃ並み程度の洞察力、観察力しかないどっかの魔法使いとは大違いだね。


【人智の叡智】によって高められた無駄のない歩幅。通常の銃器よりも幾段か強化されたそれを扱えるようにされた身体能力。俺自身、隠しているつもりなんだけど。


魔法使いにしては異次元なんだよなあ。相棒の晴人が魔法を探究することに特化してるみたいだからこそ、余計に異常さが際立つ。この子の洞察力とか、観察力は体の動かし方をよく見ている。まるで格闘家のように。


「ふむふむ。アヤトの能力は物体を生み出すものなのか。なんとショボそうな!」


その言葉にキレるのは一秒も掛からなかった。ミリタリーオタク。その概念を知らず、その地雷を知らなかったとはいえ、手加減をする必要はない。魔法みたいな人類の歴史の中でポッと出てきただけのやつとは違う。確かな歴史を持つのが銃火器である。


つまり、妥当だ。


「反省したか、この厨二少女が」

「反省したからグーで殴るのはやめてくれ!アヤトの拳は足みたいに硬いんだから。あと、一つ。私の名前はミリャンだ。決して、けーっして、厨二少女なんて名前ではない。分かったか、変なところでキレる変態!」


はは、よく分かった。俺はよーく、よーく分かりましたよ。まあ、肝心のミリャンさんは分かってないみたいだけどねぇ!


怒りの炎が再点火してしまった俺は、先程よりも強い力でミリャンの頭を掴む。掴んでいる頭が軋んでいるが、俺にとっては問題外。何度言っても一切聞きやしないこのドアホちゃんに粛清を与えなくてはいけない。


『落ち着け!冷静になれって。息吐いて、息吸って。ひっひっふー、ひっひっふー』


俺は子供を産もうとする妊婦さんか。……もう、雰囲気崩れちゃったじゃん。しょうがない、この怒りは頑張って沈めておくとしよう。


「今度こそ反省をした?」

「ハイ、シマシタ。スミマセン」


柔らかい言葉ではあるものの、その中身には確かな覇気が存在していた。それは少し前の説教を思い出させるかのようで。だからだと思う。ミリャンが片言で震えているのは。


自業自得だと思いつつも、子供のように震えるミリャンが少し可哀想に感じてしまう。


「うぅ、まだ痛い」

「自分の力を馬鹿にされるのは誰でも嫌でしょ。ミリャンでも嫌じゃない?自分の魔法を馬鹿にされるのは」

「それでも強くやりすぎじゃないか?今回は私に全面的な非があると言えども。女の子に拳骨落とすのはどうかと思うぞ」

「あー、そういえばさ、ミリャンなんでここにいるの。ここ、危険な領域でしょ」

「話逸らしたな」

「うっさい」


自分自身でも話の晒し方が露骨すぎるのは分かっている。けど、そう指摘をされるのは……なんか嫌だ。


その感情のまま、視線を逸らせば、ミリャンはため息を吐きながら説明を始める。


少々長くなってしまったので、端的に済ますとするならば、調査だ。


『端的すぎだろ』


それはそう。もう少し詳しく説明すると、この平原の調査となる。最近、ここらで死亡件が頻繁に起こっているのだとか。そして、全てがモンスターによる死亡案件だった。人間が見せかけた、なんて希望を抱いていたみたいだけど、そんなことはなかった。


よく考えてみれば、確かに異常だね、これは。熊のモンスターと猪のモンスター。猪はともかくとして、熊は本当に何だアイツ案件だと思う。モンスターのことはよく知らないけど、あんな魔法使い殺しな生命体がいるとは思えない。


この森は魔力が多く、濃い魔法使いだけが来れる領域。戦士たちが来ることはできない。それ故の進化の可能性はある。ただ……そうだとしたらちょっと歪だ。


まるで、魔法使いたちを完膚なきまでに潰すために創られたようなモンスター。


「ミリャン。君がここに調査に来た理由はそれだけじゃないんじゃないの?」

「アヤト、お前……!」


____

☆作者一言コメント

ミリャンちゃんはアヤトくんのヒロインになりそうな予感

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