第3話 どんな魔法でも、磨けば宝石と並ぶ By魔法人格

「ブモォォォ!!」

「牛みたいな声出してパワー勝負か?良いぜ、その挑発に乗ってやる。綾人程身体能力に自信はねえが、大量の魔力を所持していても問題がないように、【魔導の叡智】で肉体が強化されてる。お前程度なら、問題なしだ」


大きな二本の角が生えている猪は、全身に魔力をまとって目の前にいる俺に突進をしてくる。中々のスピードであるが、熊の時に見せた綾人とデカ熊のようには早くない。力も、どんなに強力な銃器でも扱えるよう、【人智の叡智】で強化された綾人にすら劣る俺に負けている。


最初に出会ったモンスターが悪過ぎただけな気がするが、そのおかげでこのモンスターと対峙しても問題なく対処できる。不幸中の幸い、とでも言ったところか。


「ブモッ!?ブモ!ブモォォォオ!」

「おいおい、どうしたよ。俺をひきたいんじゃないのか?ご自慢の角で、その大きな体で潰したんだろう、俺を。したいなら、すれば良いだろう?体格差、種族。有利な条件が揃っているのだからな。いや、できないの間違いだったか。力の入り方が……なってないんだからな…!」


加減して握っていた角を強く握る。追い打ちとして手のひらに魔力をまとわせつつ、で身体強化を。


段々と割れ目が入り、角は崩壊の時となった。握っていた俺の手に猪の角は力負けをし、白い塊となって崩れる。


ご自慢の角が破壊された事に怒り狂っているのか、地面操作の魔法を使って生き埋め、そして体の貫通を狙ってくる。遅い、弱い、魔力がこもっていないの欠点三銃士であるので、避けることは簡単。ついでに壊すのも。


だけど、それだけじゃ味気ない。魔法をより効率的に威力を出すかを知らないこいつに、強い魔法しか使わないこのアホ猛獣に教えなければならない。魔法がどのような性質をしているのか。工夫をすればどんなものでも輝けることを。


魔法を探して、求めた魔法使いの手で。この世で一番魔法を愛していると自負する俺の手で。


「厨二少女。その瞳によーく焼き付けな。魔法がどれだけ強くて、どれだけ応用が効く最強の技術なのかをな」


怪力に驚いている厨二の少女に言葉を送り、目の前のモンスターに敵意と闘争を向ける。それによってモンスターは恐怖し、押し潰そうとするが、甘い。そんな応用もクソも存在していない魔法で俺は殺せない。


欠陥の穴開きまくりで、漬け込んでくださいと言っているような魔法の式。俺みたいな天性の才能を持った者や、ある程度実力と年季を重ねた者なら突破できる。お前が甘く見てるような魔法でもな。


石ころを自分の方向に引き寄せる魔法なんかでも、地面操作の魔法は陥落できる。地面操作の魔法は、細工をしないと簡単に崩壊させることができてしまう。何故なら、地面はピースとピースでできているのに、無理やり動かすから。魔力で補強とかをしないと、崩れてしまう。


その思考がないから魔法は壊されるし、奪われるのだ。支配権を奪った俺の魔力は、猪が使用していた地面操作の魔法を使って猪の体を動けないように絡めとる。


まあ、保てるのは一瞬だけだ。どんなに俺が魔力操作に優れ、どんなに魔法に関しての天性の才能を持っていたとしても、俺はこの魔法のことをよく知らない。よく知らない魔法は上手く扱えないし、改良の仕様がない。だから、一瞬だ。


「お前相手にはそれで十分だよな?そんな一瞬でしか拘束できなかったとしても、俺とお前では格が離れている。だから、簡単に飛ばされる。こういう感じでな」


岩の柱で行動が制限されている猪の頭に、突き蹴りが炸裂する。魔法使いらしく、そして魔法使いらしくない魔力を持っての打撃。その一撃で地面の柱は粉砕し、蹴られた猪は地面に大きなクレーターを作る。


えっ、なにこれ……。俺こんなに強く打ってないが?できるっちゃできるけど、今の制限をかけている状態じゃできないはず。こんなバカ怪力、俺が魔力を全開放した状態で身体能力に全振りするか、綾人に手伝ってもらうしか……。うん?これ犯人分かったな。綾人ォォ!お前かぁ!


『うん……まあ、そうなんだけどさ……晴人気づくの遅すぎでしょ。俺戦闘始まった時からちょびちょび身体強化してたんだけど。魔法こそが至高とか、現代兵器とかよりも魔法の方がええわーみたいなこれ言っといてこれ?天性の才能を持っててこれかー。ちょっとなー』


うるっさいわ!天性の才能と圧倒的な魔力センスを持っていても、経験が足りてねえんだわ。長年の間戦闘を続けた者ほどの経験がないから、こうなっちゃうの。そもそも、前の世界で使えなかった魔法が使えるんだ。大目に見てくれ。


『はいはい、分かったから。言い訳は良いから。さっさとこれを片付けるよ。俺も魔法を放つのに協力してあげるから』


してあげるってどうやってよ。俺は【魔導の叡智】を所持しているから魔法使用は可はだけど、綾人は魔法特化系のスキルを持ってねえだろ。綾人が持っているのはあくまでも物体を魔力という力で生成する【人智の叡智】。


俺の【魔導の叡智】とはタイプが違う。幻想的な概念である魔法を引き起こすものと、既存として存在しているものを生み出す能力。違うと言っても誰もに頷かれるだろう。


……いや、待てよ?確かにその辺りは違っているけど、似通っているところはある。体の性質変化。精密で緻密な設計によって作られている銃は、ある意味魔法と同じと言える。どちらも繊細な動作が必要だ。


なるほど。できるかもしれない。綾人、銃を発砲する感覚、再現できる?


『誰に言ってると思ってんの。俺はあのリボルバーの感触、全て覚えてる。心地よい衝撃の感覚を。そんな俺に再現できるか?はは、できるに決まってるでしょ』


頼りになんなあ。魔法のタイプの方向は綾人が決めてくれるから、俺は魔法内部を組み立てよう。オリジナル魔法……少し難しいけど、ワクワクするな。ファンタジーとミリタリーを合わせるの、悪くないねえ。


「さあ、とくと喰らいな。幻想と人智の組み合わせ技だぜ」


海駆ける一つの弾丸ウォルニアス・ブレッド


____

☆作者一言コメ

厨二少女出番ない……(´・ω・)

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