10おじ「ね、寧ちゃんまで!」
『な、何ですかリカさん! このわがままなバストは⁉』
豊満なバストに驚くシノの声は、更衣室の外まで
『何ですかはこっちのセリフだ! どこ見てんだよアンタ⁉』
外で待機しているおじさんには見えなかったが、どうやら胸をガン見しているようだった。悔しがるシノの声が聞こえた。
『本当に同い年ですか? これもう大人じゃないですか! くっ、なぜ。神様はひどいです』
『ひどいのはアンタだろ! 神様だってアンタに言われたかねーよ!』
『人の胸を見てひどいとはひどいじゃないですか!』
『胸のことじゃねー!』
二人のやり取りを聞いて思う。
(……なんか脱線してないか?)
気にはなったが、むろん中へ入るわけにはいかない。二人の間に
『リカ姉のおっぱい、久しぶりに見たです。前より大きくなってるです』
柔らかそうなDカップに興味津々だった。
『ちょっと遊んでみたいです。シノお姉さん、姉をしっかり押さえててくださいです』
『了解です寧ちゃん。私の分まで味わってくださいね』
不穏な空気を感じ取って、リカは妹を牽制する。
『寧……。後でどーなるか分かってんだろーな?』
『う……。だ、大事なのは今です。後のことなんて知らないです!』
『よくぞ言いました寧ちゃん。偉い!』
『どこがだよ⁉ 人の妹に変な自信植えつけんな!』
『リカ姉、かくご。えーい』
ぽいーん。
『やっ、やめろ!』
『今度はこっちです。やーっ』
ぱいーん。
『あっ、コラ! やめろって!』
『ああっ、なんて羨ましい。私もやりたいです』
人は自分にないものに惹かれる。シノも例外ではないようだ。羨望の眼差しでおっぱい遊びを眺めていた。
『……ふう。チャージ完了です』
寧は刹那的な快楽をひとしきり堪能した。満足そうな声を漏らしている。
『はあ、はあ……』
実の妹に
『そ、そんな目で見ないでくださいです……。がんばってくれたお礼に、ごほうびをあげますから』
『ご褒美だあ? んなもんいいから、さっさと解放してくれ』
『いいんですか? ごほうびに、服を着せてあげようとしたんですが』
思わぬリターンに、下着姿のリカは声を弾ませた。
『ほ、ホントか?』
『うそじゃないです。本当に着せてあげるです』
『や、やっと終わった……。何が何だか分からねーが、もう勘弁してほしいぜ』
張っていた気を緩める。全身の力が抜けたようだ。が、ことはリカの思っていた通りには運ばなかった。
『……? おい寧、それは青木シノの制服だろ?』
もはや『さん』付けではなくなっていた。
『オレの服をくれよ。服を着ていいって言ったろ?』
『言ったです……。言ったですが……!』
ただならぬ雰囲気を
『今回、まだその服の指定まではしていないです。そのことを、どうかリカ姉も思い出していただきたいです』
話が見えないリカは困惑していた。
『え……?』
『つまり……。寧がその気になれば、着せる服は――』
おそらくニヤリと笑って寧は続けた。
『シノお姉さんのセーラー服も、可能だろう……ということです……!』
ご褒美がシノの制服だと知って、リカは驚きを隠せなかった。たまらず異を唱えた。
『な……。何を、言ってるんだ。そんなアバズレ女の服なんて、着れるワケねーだろ!』
『さりげなく人をアバズレ呼ばわりしないでください。あれは誤解だと言っているでしょうに』
『オレの学ランやパーカーは?』
『あれはシノお姉さんが着るです』
『そんな……。認めねーぞ。断固反対する!』
痴女の服など着られるかと抗議する姉に、寧はあからさまにため息をついた。
『あくまでていこうするですか。おんびんにすめば、それにこしたことはないと思ったですが……。仕方ないですね』
パチンと指を鳴らす。その直後、シノはリカの腕を掴んで押さえた。
『くっ、離せ!』
リカの声に再び力が入る。
『往生際が悪いですよリカさん。心の底では
『変態かオレは⁉ アンタと一緒にすんな!』
『リカ姉、今かわいくしてあげるですからね。うおおー』
『い、嫌だ! 汚されるっ!』
『どういう意味ですかっ⁉ 清潔そのものですよ!』
シノのセーラー服を無理矢理着せていく。
『ぐっ……。あ、アンタ、細いのに力あるな』
『バレー部エースを舐めないでください。あと、細いのは全身です。決して特定の一部分の話ではありません』
『な、なんか、より力が強くなった気が……』
『恨むなら、そのわがままボディを恨むことですね!』
リカの着やせする胸が相当羨ましかったようだ。シノの怒りと悲しみが、更衣室の外まで伝わってくる。
(張り切ってるなあ、シノのやつ)
『あとちょっとで完成です』
『髪も下ろしましょうか。ポニーテールも素敵ですけど、より女性らしさを出すために』
『あくま的発想……!』
『……や、やばいですよこれ。早くおじさんにも見せたいです』
(ん? 俺も見るのか?)
てっきり女性陣だけで完結するものだと、おじさんは思っていた。が、どうやら着替えが済んだら、ギャラリーとして参加する流れになっているらしい。
『できたです。感無量です』
着せ替えが終わったようだ。その出来栄えに、シノが感嘆の声を上げる。
『うわ、何ですかこのクオリティ。つーちゃんではしゃいでた自分がバカみたいですよ』
おじさんのいないところで好き放題に言っていた。
『お、オレの服はっ⁉ どこだ!』
拘束を解かれたリカは、すぐに自分の服に着替えようとする。
『はーい、もう着ちゃいましたー』
『早っ!』
しかし、それより早くシノが横取りしてしまう。
『運動部あるあるの早着替えです。決して、出っ張りがない分引っかからずに着れるとかそういうことではありません』
『何も言ってねーよ』
寧は男装シノにも夢中な様子だった。
『ふわー。お姉さんイケメンです。きれい系不良です』
『きれいだなんて……。もう、上手ですね寧ちゃんは』
『そのへんの男よりよっぽどかっこいいです』
(……え? もしかして、俺のこと言ってんの?)
女装も普段の見た目もけなされて、おじさんはそこそこショックだった。
『……これは、新たなとびらが開いてしまうかもしれないです』
姉への興味とは別に、シノの男装という副産物にもゴクリと生唾を飲み込んだ。
『新たな扉? もう既に開いてる扉があるみたいな言い方だね』
『こ、更衣室のとびらのことです。早く開けましょう』
『ああ、この扉ですか。そうですね』
シノは大きな声で外へ呼びかけた。
『おじさーん! 終わったので開けまーす。リカさんが逃げるかもしれないので、通せんぼしてくださーい!』
恥ずかしがるリカがどこかへ逃げないよう出入り口をふさぐ。それは理解できたが……。
「俺は別に……。中で全部済ませてくれていいんだぞー?」
要はリカが衣装を堪能できればいい、とおじさんは考えている。その姿をおじさんに見せる必要はないのだ。
なぜ見せようとするのか――。疑問に思うおじさんの耳に、寧とシノの叫びがハモって届いた。
『『この興奮を、おじさんにも体感してほしいんです!』』
「お、おう。そうか……」
拒んでみせたところで、二人の意志は固いようだった。
『いきますよ……。オープン!』
更衣室の扉が開け放たれた。
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