解答編

 藤巻ふじまき刑事は、聞いてみた。

「ふむ。今回も君は、ちゃんと犯人が分かったようですね」


 奥野おくのは、力強ちからづよく答えた。

「はい。犯人は八名はなたくみ佐内さない博光ひろみつ井出いで佑真ゆうまの三人です! 名字みょうじで分かりました!」


 それを聞いた藤巻刑事は、説明した。

「はい、その通りです。このダイイング・メッセージはクロスワードパズルのように、『はな、さない』は横読みで『いで』は縦読みするのがミソですね」


 すると奥野は、疑問を聞いた。

「でも何で被害者ひがいしゃは、ひらがなで書いたんでしょう? 漢字で書けば、もっと分かりやすいのに?」


 藤巻刑事は、ため息をついてしまった。

「はあ、いいですか。ちょっと想像してみてください。ダイイング・メッセージを書く被害者が、最もおそれることは何ですか?」

「え? えーと……。あ、そうだ! せっかく書くダイイング・メッセージが、犯人に消されることです!」


 すると藤巻刑事は、満足そうにうなづいた。

「そうです。漢字で書いてしまうと犯人に、簡単にバレてしまいます。でも今回のようにひらがなで書くと『はなさないで』と読むことが出来て、犯人の名前をあらわしているとはバレないでしょう。被害者はそこまで、考えたのでしょう」


「なるほど……」と納得なっとくしている奥野に、藤巻刑事は聞いた。

「さて、今回の事件の動機どうきは、何だと思いますか?」


「うーん……」と考え込んだ後、奥野は答えた。

「あ! 犯人たちは給料に、不満ふまんがあったんじゃないですか? 被害者は、高級マンションに住んでいます。『俺たちの給料はこんなに安いのに、社長ばかりもうけている』と、考えたんじゃないですか? だから高級時計、指輪、高級ブランドのバッグをぬすんで売りさばいて、かねにしようと思ったんじゃないでしょうか?」


 藤巻刑事は、頷いた。

「はい。おそらく、そうでしょう」


 すると奥野は、り切った。

「よし。これから犯人の三人をさがして、めましょう! 絶対に、逮捕たいほしてやる!」


 それを聞いた藤巻刑事はやはり、満足そうな表情をした。

「ふむ。君もだいぶ、一人前いちにんまえの刑事らしくなってきましたねえ」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

今日も藤巻刑事は新人を育てる その三 久坂裕介 @cbrate

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ