2. 世界魔術師の力

「さぁ、どうしようか」

翼兄ちゃんが言って、みんなうーんと考え込む。

今日はひよりも帰って来て、やっと7人揃うことができた。

「でもさ、3年後のお兄ちゃんが留守番電話送ってくるってことは、やっぱりできることがあるんじゃない?できないの分かってて助けを求める人じゃないじゃん、お兄ちゃんって」

お兄ちゃん、って僕のことを呼んでるけど、紛れもない萌奈だ。

「確かに…僕だったら、植物と植物を調合させて、現実ではできないことを実現できるかもしれない、っていう飲み物は作れるけど…意味ないかな?」

「かもしれない?そのレシピ書いてあった本とかあるなら、見せてくれる?」

鈴羽が言って来たから、「はい」って言って、植物について色々書いてあって、いつも持ち歩いている本を取り出す。

「うん…そっか、できるかも」

「えっ?ほんとか??」

「うん」

頭のいい鈴羽のことだから、また僕らには意味不明なことを考えてるんだろうけど、できるならできるで本当に嬉しい。

「これ、見て」

鈴羽が見せてきたのは、携帯電話スマホの画面だ。

そこにあるのは、夕立と、日光と…虹。しかも、二本ダブルレインボー

「このタイミングは、現実ではできないことを実現できるっていうときなんだって。この時だったら、もしかしたら並行世界パラレルワールドに行けるかもしれない」

「そっか…でも、そんなの滅多にないんじゃねぇの?」

「いや、今でもできるよ」

と伊織が言う。

「だって、萌奈の光の魔法で日光を作って、翔琉兄ちゃんの水の魔法で雨を降らせれば、同じ状況になるじゃん。それって無効?鈴羽」

伊織は理科が得意なんだ。

「ううん、多分いけると思う。そうだね、それで行けるよ」

「あとは並行世界パラレルワールドに行きたいって願いを伝えるものさえあれば…」

「うーん…」

「あ、キーは鈴羽だ」

僕は閃いた。

「えっ、私?」

「うん、モールス信号あるだろ?」

そういう系のことは、多分この7人のなかで僕が一番詳しい。

「僕がモールス信号を教えるから、それを鈴羽が鈴の音で鳴らす。ひよりに神様を呼び寄せてもらって、それを聞いてもらえばいい」

「あっ、確かに‼蓮、いい仕事するじゃんっ!」

とひよりに言われて、少し照れてしまう。

「じゃあそれで、もしかしたら並行世界パラレルワールド行けるかも!」

「決行はいつにする?」

7人で話し合って、あっちの世界で生きて行けるような生活用品を用意する時間も込みで、明日夜22時に決行しよう、ということになった。

「そうだな…そうしよう」

「えっ?」

翼兄ちゃんと伊織が、なんか元気ない?

「「…俺らだけ活躍できない…」」

確かに、今回の作戦に二人の魔法は必要なくなってしまった。

「まぁいいじゃんっ、翼お兄ちゃんは情報整理、伊織は運動の時にみんなを引っ張ってくれれば!」

魔法のことを言っているのが分からない天然ひよりが、二人に向かって笑顔で言う。

やっぱりそういう行動で愛されてしまうのだろうか、二人も最終的には「「はぁ~い…」」と頷いていた。

並行世界パラレルワールドに行けるかどうかも分からないけど、やっぱり楽しみで、その日は胸が高鳴っていた。

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