第1章 カウントダウンの始まり

1. 作戦会議

「デタラメ…には思えねぇな」

僕らは今、僕の家に集まって、昨日送られてきた留守番電話の内容について、友達を呼んで話している。

ここにいる6人全員、世界魔術師ワールドマジシャンと呼ばれる、紀元前の時代から始まった、先祖代々続く、世に言う魔法使いである。

世界魔術師ワールドマジシャンは、世界のありとあらゆる問題を、誰にも世界魔術師ワールドマジシャンの存在を気づかれないように解決するお役目だ。

天王寺てんのうじ 翔琉かける。同じ高校1年生で、僕の幼馴染だ。クールな印象を持たれがちだけど、それはいつも世界の平和を考えているから。とても真面目で優しい人だ。

神楽かぐら 伊織いおり。一つ下の中学3年生で、意外にもしっかり者。運動神経が抜群で、少し僕の憧れでもある。

九条くじょう つばさ。一つ上の先輩で、頭がよく、学校では一番の成績を取っている。世界魔術師ワールドマジシャンには、勉強も必要だから、翼兄ちゃんはよくデータの分析をしてくれたりする。

伊藤いとうひより《ひより》。同じ高校1年生で、天然だけど愛されキャラ。結構ドジっ子だけど、僕の相棒のような人で、いつも助け合っている。世界魔術師ワールドマジシャン一番の能力者と言われているくらいすごいんだ。今は、他の世界魔術師ワールドマジシャンのチームに呼ばれて、どこかに行っている。明日には帰ってくるって言っていたような気がする。

早乙女さおとめ 萌奈もな一つ下の中学3年生。食いしん坊のくせに痩せている。可愛い系でまぁまぁモテている。甘え上手で、よく僕の妹、とかなんとか言ってくる。可愛いから許すけど(妹みたいな存在として、な!!)。

天王寺てんのうじ 鈴羽すずは。二個下の中学2年生で、翔琉の妹。翔琉と幼馴染なのだから、鈴羽とも当然幼馴染。心配性だけど清楚で美人系で、これまた下級生にモテている。しかも勉強もできて、手先が器用で、バイオリンを習ってて、めっちゃ綺麗な音を出すんだ。

この7人(今は6人)で、世界魔術師ワールドマジシャンの任務をこなしてるんだけど…。

「でも、配信日時は、2028年3月20日…ちょうど昨日の3年後だよね」

と萌奈が言う。

「偽造で日時を変えることはできないから、3年後の未来で何かができて、昔の携帯電話スマホに電話が送れるようになったのかもね」

と鈴羽。

「とりあえず、留守番電話を文字に起こしてみよう」

と翼兄ちゃんが言って、留守番電話を時折止めながら、慣れた手つきでパソコンに文字を入れていく。

「太陽が軌道を外れるってのは想像つくけどさ、もう一つの世界ってなんなんだろ?」

伊織が問いかけ、みんなが黙り込む。

「それなら鈴羽、小説でそういう系、読んでなかったか?」

「え、私?」

翔琉は鈴羽の兄ちゃんだから、鈴羽の情報にはやっぱり詳しい。

鈴羽はバイオリンもうまいのに、小説もめっちゃ読んでるんだ。

「…あっ」

「思い出したか?」

「うん。図書館から借りてた本だよ。すぐそこにあるから、5分で借りてくるねっ」

そう言って、ビューンって音がしそうなほどすごい勢いで僕の部屋を出て行った鈴羽を見て、「一個下なのになんでもできるから、なんかちょっといいなぁ…」と少し日本語になっていないことを萌奈が呟く。

「まず、この三年後の蓮兄ちゃん、どんなところでこの留守番電話を残したんだろう?」

「すごい雑音だから、きっと溶かされてる最中で、多分ネットには繋がってるところだな…でもこの音は、近くで色々なものが溶けている感じだから、電線も切れて、Wi-Fiも繋がらないはずなんだけどな…」

と、伊織と翼兄ちゃんが思案する。

そもそもこれは本当なのか?こんなにも何も問題が起きていなくて、世界魔術師の出番がない数か月は久しぶりだ。その分の返しが、地球の滅亡としてくるのか…?

「お待たせっっ!!あったよ」

そう言って鈴羽が猛スピードでページをぺらぺらとめくっていく。

「あっ、あった。並行世界パラレルワールドだって」

「私、それなんか映画で聞いたことある!」

「えっと…『君が死ぬと僕も死ぬ。僕が死ぬと君が死ぬんだ。だから、それを止めるために助け合おう』これ、並行世界パラレルワールドのもう一つの世界から来た同一人物が言ってる言葉だよ」

「あっ、そういうことか」

翼兄ちゃんが納得するけど…。

「…」

「…」

「…」

「…」

「「「「どゆこと?」」」」

と僕、翔琉、伊織、萌奈の声が重なる。

「だから、並行世界パラレルワールドにいる主人公と現実世界にいる主人公は、遺伝子が繋がってるってこと」

鈴羽の言葉を継いで、

「だから、並行世界パラレルワールドの地球と現実世界の地球は、遺伝子が繋がってるってこと」

翼兄ちゃんが言う。

「あぁっ、だから並行世界パラレルワールドの太陽が、何らかの現象の影響で軌道から外れて、地球を溶かしてるから、現実世界では太陽が近づいてないとしても、溶けているような感じで地球が無くなるってことか!」

と僕が言う。

「「「あぁっ!」」」

とみんなも納得した。

留守番電話を受け取った張本人が納得するのが遅すぎる。

「でもそれが分かったとしてさ、世界魔術師ワールドマジシャンの俺らができる事ってあるのか?」

と翔琉が事実を言ってしまう。

そう、僕らは世界魔術師ワールドマジシャンでも、僕が使えるのは花の魔法、翔琉は水の魔法、伊織は和楽器の魔法、翼兄ちゃんは風の魔法、ひよりは神様を呼び寄せる魔法(能力者だから他の魔法も少しずつ使える)、萌奈は光の魔法、鈴羽は鈴の音の魔法だ。僕たちにできることと言ったって、今すぐには何もない。

「そうだな…とりあえず、明日の昼、屋上に集まろうか」

僕たちが通っている学校は中高一貫校だ。6人全員同じ学校だから、高校棟にも中学棟にもお互い行けてしまう。だから、6人で話す時は、誰も来ない高校棟の屋上が最適なんだ。

「そうだね、もう夜だし」

「色々考えて疲れたよ~っ」

「なんかすごいことになりそうだな!」

「じゃあ今日はお開きだ!」

3人が部屋を出て行こうとする中で、翔琉だけが残っている。

「おい、全員言うことがあるんじゃないのか」

「えっ?」

「留守番電話のこと、話してくれたから、俺らでこのことが考えられるんだろ」

「あ…」

いや、僕そんなことしてないって、翔琉。

「蓮、ありがとう!」

「俺らもその話に加われて嬉しいよ」

「久しぶりの任務だね!」

「さっすが私のお兄ちゃんっ!」

みんなに褒め称えられて、少し心が軽くなる。

小難しい事ばかり考えていた頭も、少しほぐれた気がする。

「こちらこそありがとな、協力してくれて」

「ぜーんぜん!」

みんなが僕の個人的なことについて考えてくれている。

その事実が嬉しかった。

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