第6話







 魔国はミドガルズ王国から見て東の方角にあった。


 女の一人旅は危険なので私は護衛として冒険者を雇う事にしたの。

 

 私が雇った冒険者パーティーは【旋風の刃】といい高ランクだった。


 依頼料は高額だったけど、日本に帰る為だもの!


 命大事!


 強盗だけではなく異世界ではお約束の小鬼やオーク、コカトリスやドラゴンといった魔物が当たり前のように存在しているし、この世界の住人達は魔物から身を護る術を身に着けている。


 私だって柔道・空手・剣道の有段者。


 大会で優勝した事があるし、痴漢に強盗の撃退をした事もある。


 でも・・・自分を襲った痴漢と強盗の命を奪った事はない。


 だから、冒険者ギルドが提示した依頼料を払ったわ。


 異世界もののテンプレとでも言うべき・・・もしかしたら冒険していくうちに自分の命を護る為に山賊や強盗の命を奪う事に、小鬼やオークを倒す事に何の躊躇いも葛藤も抱かなくなるかも知れないわね──・・・。


 旋風の刃と共に魔国へと向かっている途中テンプレよろしく、小鬼やオーク、コカトリスやロックバードといった魔物だけではなく山賊が襲って来たけど、流石は高ランク冒険者パーティー。


 難なく倒していったわ!


 戦う事は出来ないけれど、その代わり私には魔法があった。


 食事を作る、血を浴びて汚れてしまった鎧と服を浄化魔法で綺麗にする、傷を負ったら治癒魔法で治療するという風に身の回りの世話をするという形で出来る限り旋風の刃の足手纏いにならないようにしたわ。


 野を越え、山を越え───やっと魔国に到着した私は冒険者ギルドに報告している旋風の刃と別れると魔王の居城へと向かったの。


 最初は私の事を胡散臭そうに見ていた門番達だけど(いきなり魔王に合わせて欲しいと見ず知らずの人間に言われたら警戒するのも当然か)ミドガルズ王国の聖女召喚に巻き込まれて追い出された日本人だと告げると、門番の一人が『魔王様にお前の事を伝える』とだけ言い残して城内へと走って行ったわ。


「人間の客人よ、魔王様が貴女の話を聞きたいとの仰せです。案内いたしましょう」


 魔王とやらの側近の一人かな?


 ミドガルズ王国のイケメン貴族達もイケメンの部類に入るけど、私を魔王の元へと案内している男性───狼の尻尾と耳があるから狼男というか人狼でいいのかな?


 名前は知らないけどミドガルズ王国の連中と比べたら人狼の方が遥かにイケメンだった。


「突然の訪問であるにも関わらず、見ず知らずの人間が魔王、様にお目通りを願い出たという無礼をお許し下さい」


 人狼に案内されるまま魔王と対面を果たした私は訴えたの。


 ミドガルズ王国の聖女召喚に巻き込まれた日本人で、日本に帰す方法があるのな

ら教えて欲しい!


 って。






  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る