第5話







 歩いて六~七時間くらいかしら?


 七センチヒールで長距離を歩いたから爪先が痛いけど、私の目の前には立派な城塞が建っていて、門番らしき二人の兵士さんが門を守っていたわ。


 町の名前は分からないけど、門番に『物々交換が当たり前の山奥に住んでいたのだけど、両親の死をきっかけに町で生活をしようと思い山を出た。でもお金を持っていない』という事を伝えたら、『山で採れた薬草とかを冒険者ギルドか商業ギルドで売ったそれで通行料を払うように。後、ギルドに登録した方がいい』って言われたの。


 ギルド・・・


 うん、これもまたお約束だね。


 というより十一世紀の西ヨーロッパには商人ギルド、商人ギルドの市政独占に反発した事で生まれた手工業ギルドが十二世紀にあったのだから、中世から近代ヨーロッパっぽい異世界にギルドがあっても不思議ではないのか。


 門番さん曰く


 ギルドカードは身分証明書にもなるから通行料を払わずに済むとの事、らしい。


 後で通行料銀貨一枚を払うという旨を記した羊皮紙にサインすると門番は門を通してくれたの。


 真珠のペンダントとイヤリングを商業ギルドに売った結果、金貨二十枚だった。


(金貨二十枚?日本円にしてどれくらいなのかしら?)


 自分に対するご褒美として買った真珠のペンダントとイヤリングは二十万円だった。


(という事は金貨一枚=一万円と換算すればいいのかしらね?)


 商業ギルドの受付嬢曰く


 私が持ち込んだペンダントとイヤリングに使っている真珠は本物で、一粒で金貨六~七枚の価値があるらしい。


 後に魔国を治める魔王の兄にして私の庇護者となる大公のフェルゴヴェールさんから日本円に換算したら銅貨一枚で八百円、銀貨一枚で三千円、金貨一枚で十二万円くらいの価値がある事を教えて貰うのだけど、それを知らない私は金貨一枚=一万円、銀貨一枚=千円、銅貨一枚=百円と計算していたの。


 それはどうでもいいとして・・・


 門番に通行料を払った後、町を歩いている私に視線が向けられている事に気付いたの。


(異世界では黒髪黒目が珍しのかしら?・・・でも、聖女って黒髪黒目の女子中学生か女子高生だと偉そうなおっさん達が言っていたから珍しくないはず・・・・・・って!)


 うん。


 町の人達はパンツスーツが珍しいから見ていただけだという事に気が付いた私は長旅に向いていそうな服と靴を揃える為、仕立て屋に向かったの。


 男物の服とブーツに着替えた事で自分を物珍しそうに見てない事に気が付いた私は食糧や調味料、調理道具等、旅に必要な道具を市場で購入。


 その時に情報収集した結果がこんな感じ。



 ・この国はミドガルズ王国。数十年に一度、異世界から聖女を召喚している


 ・魔王とは魔国を治める王の呼び名である


 ・魔国の住人の姿形は人間に近いが、耳が尖っているとか犬歯が長いとか獣耳が生えているという風に、身体の一部に異形の特徴がある


 ・そんな彼等を総称して妖魔と呼ぶ


 ・妖魔は人間より寿命が長く魔力が膨大。魔法だけではなく武術と体術にも長けている


 ・ミドガルズ王国は魔王が世界征服を企み、全人類を奴隷にしようとしていると主張しているが、それを信じている者など誰も存在しない


 ・世界征服を企んでいるのは、自分達こそが世界の中心であり支配者に相応しいと主張しているのはミドガルズ王国の方だ



 私とタレントのそっくりさんを拉致した偉そうなおっさん達が思っていたよりヤバい!


 何という誇大妄想!!!



 追い出されて良かった~!


 だが、一刻も早くミドガルズ王国を出て行かなければならないと思った私は魔国へ向かう為の護衛を依頼しに冒険者ギルドに向かったの。





  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る