第5話 それは友情の

 朝から雫さんと私は花火大会の為に浴衣を買いに総合スーパーに来ていた。


「先ずはWバーガーで朝食にしましょう」


 私は雫さんに対して積極的になる。コミ障害の私には考えられないほどの行動力であった。


 そして、総合スーパーの中を進むと、Wバーガーにたどり着く。


「ありゃ、まだ開いていない」


 この前、来た時はオープンしていたのに……。


 基本、友達の居ない私は外で遊ぶ機会が無く。この総合スーパーも久しぶりなのだ。


 仕方がない、ここはベンチに座って缶コーヒーだ。私はブラック、雫さんは微糖ブレンドを飲み始める。


 うむ、不思議な気分だ。普段は新たなコードを書く事と、コードの組み合わせを考える日々であった。これが友達の居る世界なのかと思う。


 しかし、雫さんは悪性リンパ腫で死が迫っている。私はハッキングを駆使して調べたが、裏世界に特効薬がある訳でもなく。どうしようもない、感情になったのだ。


「やっぱり、私と遊んでも、楽しくない?」


 しまった、考えている事が顔に出たらしい。雫さんを不安にさせてしまった。


 私はコードを書く時よりも頭をフル回転させて考えた。


「コーヒーを飲み終わったら、書店に行きましょう。私、雫さんがどんな本を好きなのか知りたいの」

「はい、私も嬉々さんの事がもっと知りたいです」


 意見は一致した。私達は缶コーヒーを飲み終わると、早速、書店コーナー向かう事にした。


 本屋に着くと雫さんは和風ファンタジーのコーナーに行く。どうやら、雫さんはこの様な乙女小説が好きらしい。普段、小説など読まない私にとっては新鮮な世界であった。


「嬉々さんならお仕事小説の方が好みかしら」


 雫さんは私を奥に案内する。


 手渡されたのは和菓子店に勤務する女子が私情事件を解決するモノであった。


 ほほう……これは面白そうだ、ここは一冊買うか。私がレジで小説を買うと、雫さんは嬉しそうだ。


 きっと、これが友達の関係だと思う。


 さて、私は浴衣コーナーに行く事を提案する。その後、買った浴衣はお揃いの瑠璃色とピンクのアサガオ柄であった。


「えへへへ、お揃いを買っちゃった」


 照れ臭そうにしている雫さんは可憐であった。

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