第3話 生きていて欲しい
『絡繰り人形』がばら撒いた、人々をネット依存にするコンピューターウイルスは巧妙で感染経路が全くの不明であった。その効果は感染するとスマホから出力される画像や音楽が人の脳内物質に作用してネット依存になるのだ。
発病すると一日中ネットに繋がっていないと生活ができなくなり。社会不安の要因として恐れられていた。
私の考えは、簡単、ハッキング技術は見るだけで楽しむ物であり、害が有ってはならないのが信念であった。
そして、雫さんの存在も心が揺らぐ因子であった。私は様々な宗教の死後の世界を調べ、死と向き合う事ばかり考えていた。地元の花火大会に合わせて総合スーパーで浴衣を一緒に買う事にした。
私の中で雫さんが生きた証を残すことで頭の中がいっぱいであった。
チリン、チリン……。
何処からか風鈴の音がする。季節は夏、Tシャツと短パン姿で目を覚ます。布団の横には昨日夜に書いたコードの紙があった。
どうやら寝落ちしたらしい。
私は基本、女子としての意識が薄く男子が見たら引く様な恰好で寝るのだ。
さて、学校に行く準備でもするか。日常をリックサックにつめて自宅を出る。
高校に着くと先ず探すのは雫さんである。最近は雫さんを見ると生きている事に対して安心を覚える。
「ハロー、元気?」
「私の秘密を知っていても友達でいてくれるのね」
「当然です」
そう、私と雫さんはいつの間にか友達になっていた。
そして、授業が始まる。私は数学以外の教科は苦手である。教室の窓際に席があり、数学以外の授業中は、そこから外を眺める事が多かった。
私は決して優等生ではなかった。
でも、『マスター・オブ・ザ・ペーパー』は確かに私の通り名である。それは神様から与えられた力であった。イヤ、正確には才能を自分の力で開拓したに近い。
午前の授業が終わり、昼食は何時ものベンチで食べる。
「嬉々さんは孤独に強いのね」
雫さんがやってきて、私に声をかける。私達は欠けた部分を補う様に友達としての関係が成り立っていた。そう、悪性リンパ腫で死が迫る雫さんは特別な存在である。
これが今の日常である。しかし、『絡繰り人形』によって雫さんがネット依存に落ちる可能性がある。クラスメイトの何人かは『絡繰り人形』のウイルスに感染して登校していない。
世界は『絡繰り人形』によって歴史が塗り替えられようとしていた。
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