第2話 死の予感

 その後、私は雫さんの情報をハッキングして色々調べた。名家の上に生まれるが両親は離婚、母方に引き取られるが弟は跡継ぎとして父親に引き取られて離ればなれ。


最近になって市立病院に通院歴あり。病名は悪性リンパ腫と……。


これは死に近いメールを書いてもおかしくない状況だ。私は生きる意味など考えた事もない。自然と雫さんに話しかけていた。


「ハロー、元気?」

「どうしたの、嬉々さん?」


 やはり、不自然過ぎたか。だが、私の辞書に『死』の文字は無かった。興味本位ではない。純粋に『死』について考えたかったのだ。


 数日後。


 私は木陰の下にあるベンチに座り。紙に新たなハッキングコードを書いていた。この地道な作業の積み重ねが『マスター・オブ・ザ・ペーパー』の通り名が付くからだ。内容は、最近、人々をネット依存に落とす『絡繰り人形』と敵対するコートを書いていたのだ。


 しかし……。


 クラスメイトの雫さんの事が気になって集中できない。彼女はもう直ぐ死ぬ。


 すると、雫さんが近づいてきて同じベンチに座る。


「少し、話したいの、いい?」

「はい……」


 私の隣に座った雫さんの肌は白く、簡単に言えば死が近い事を示していた。


「間違いメールをしたの、知っている?」


 私は静かに頷く。それは決断の必要になる選択であった。


「そう……」


 俯く雫さんは悲しげであった。


 そうだ、もう直ぐ、地元の花火大会があった。打ち上げ場所はこの高校から近く、屋上から観れば絶景スポットのはず。私は雫さんに花火大会の日に校舎内に潜り込むことを提案するのであった。

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