第66話 反省会
隊商は、明日にはシュネッケに到着するという場所で野営をしていた。
私達はブリューから食材を貰い、ちょっと3人だけで相談したい事があると言って一緒に食事をしたがるブリューを何とか宥めすかして追い出すことに成功した。
こうやって私は、平和な時間を勝ち取ったのだ。
気心の知れた3人きりになった私達が平和な夕食の時を満喫していると、自然と詐欺師の事が話題になっていた。
「ラッカム伯爵家を騙る詐欺師は、絶対あの宿屋にいたおじさんよね?」
「流石です、お嬢様は聡明でいらっしゃいます」
「ええ、間違いないでしょう」
ふむふむ、2人ともこれには同意見のようね。
「大体あの恵比須顔がいけないのよ。あんな人のよさそうな顔していたら、騙されても仕方がないわよね?」
「ええ、まさにその通りでございます」
「お嬢、それは言い訳にしかなっていませんよ」
ちょっとエイベルの一言が気になるけど、此処までは良さそうね。
「そ、それにあれよ。情報をタダで寄こさないなんで詐欺師の常套手段よね。串焼き1本分のちょっとお得な情報といった感じで言ってくるなんて、実に狡猾で騙し慣れてる相手なんだから、引っ掛かっても仕方がないわよね?」
「はい、それはもう致し方が無い事でございました」
「お嬢の騙されっぷりは実に見事でした。嬉々として居もしない詐欺師を追いかけている姿は実に滑稽・・・いえ、楽しそうでした」
「エイベル、先程から言葉が過ぎますよ」
エイベルの失言にすぐさまエミーリアが注意していたが、私の耳にはしっかりと聞えていた。
「ちょっとエイベル、貴方私の事を慰めていませんわね?」
「いえ、滅相もないです」
「他人の傷口に塩を塗るような行為はしてはいけないのですよ」
「はい、勿論でございます」
何故か、そう言った私に答えたのはエミーリアだった。
まったくもう。
これでは私が、大馬鹿者みたいではないですか。
だけど、あの詐欺師達はきっとフィセルの町に向かったわよね。
そうすると後で私達がのこのこフィセルの町に行ったら、それこそ飛んで火に入る夏の虫状態なんじゃないかしら?
こ、これは何か対策が必要よね。
「このままフィセルに行ったら、私達も詐欺師の仲間に間違われる可能性があるわよね?」
「そうですね。その危険はあると思います」
「え、馬鹿正直にフィセルに行く奴なんていませんよ」
え、そう言われると、なんだがフィセルに行くふりをして他の町に行った気がするわね。
あれ、だけどそれなら行く町々に被害者を手配しておく周到さはなんだろう?
「エイベル、それだと私達が向かう先に、被害者を手配しておく必要は無いでしょう?」
「それは・・・ひょっとしたら、罠を仕掛けるための時間稼ぎかも」
「大変ですお嬢様、今すぐ対策を練りましょう」
確かに時間稼ぎに見えるわよね。
でも、あの時始めて会った私達に、あれだけ周到な時間稼ぎの仕掛けが可能なものなの?
なんだか、目に見えない何かに踊らされているようで気に入らないわね。
まさか、これもゲームフラグなの?
暫く考えていなかったあのゲームのエンディングが脳裏を過った。
「隊商に送ってもらうのは、フィセルの町の手前までにした方がいいのではないかしら?」
「それは構いませんが、ブリュー様はラッカル伯爵からお嬢様をフィセルの町まで送って行くように指示されているはずです。簡単に承知するとは思えません」
そうなのよね。あの軽そうな男でもラッカル伯爵の命令には忠実なのよね。
でもこのままだと、ラッカム伯爵領の二の舞になるんじゃ?
また、お白洲の場に引き出されるのは御免被りたい。
それに確かターラント子爵は第二王子派だ。
何をしてくるか皆目見当がつかない。
「ラッカム伯爵家の偽物が出た後で、隊商の馬車と一緒に入ったらきっとトラブルに巻き込まれそうよね」
「それなら町が見えた所で、こっそり抜け出してみますか?」
エイベルがそう言ったが、そんな事をしたら後が大騒ぎになってしまうだろうし、後でラッカム伯爵から嫌味を言われそうね。
まあ、フィセルは、レドモント子爵領に行った後だ。
まだ、考える時間はあるだろう。
問題を先送りした私は、木の皿に入っていたスープの残りを食べ始めた。
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