第11話 帰還

「タリオ、起きろ。タリオ!」

目を覚ますと見慣れない神社の境内にいた。

「ここは?どこですか?あれ、今何時だ?」

「ようやく目が覚めましたね。ここは八甲田神社ですよ。月の神を祀っているところです。今の時刻は午後19時10分ほど。家を出たのは17時30分。喫茶アルテミスに着いたのが18時。月へ出発したのが18時15分。さあ、帰りますよ」

「八甲田神社…。いや、帰るってここ、幸畑じゃないですか。遠すぎますよ。僕の家、沖館にありますけど。ここ、山の方!僕の家海の方!」

「大丈夫です。ここは青森市内ですよ。バスだってありますよ」


「じゃあ、私とタクトは帰るかな。頑張ってくれよ。明日は8時半から任務が待ってるからな。気をつけて帰れよ」


そう言って、ホーラさんたちは帰って行った。

*********************


「いくら県庁所在地だからって舐めないでもらえます?夜になるとバスなんてそんなにバンバンこないんですよ!電車もバスも1時間に1本くらいしかないんです!」


あ、思ったよりも口調が強くてヴンシュさんがしょんぼりしちゃった。どうしよう。


「あ、あのー、ヴンシュさん。そんな、責めるつもりはなかったんです、はい。すみません。知らないことだってありますもんね。ほら、もう1時間くらい待ってればバスも来ますし、ね」


「憐惺、いえ、タリオ。私の考えが甘かったのです。申し訳ありません。ホーラたちが早めに帰ると言ったのも、先ほどのバスに乗るためでしょう。ここで1時間待つのもなんですから、次のバス停まで歩きましょう。その間に、明日の任務や月のうさぎについてなどお答えできることはなんでもしますので」


結局、僕らは2時間半かけて家まで帰った。家に着いた時点でもうすでに時刻は22時を回っていた。こんなに疲れたのに明日は朝から活動があるなんて地獄でしかない。戸棚から適当にカップラーメンを出して食べた。ヴンシュさんはいらないらしい。シャワーだけ浴びて、ベッドに倒れ込む。

あ、ヴンシュさんに今夜はどこで寝るのか聞いてないや。聞きに行かないと。

でも、まぶたの重みに耐えられない。ああ、5分だけ寝てから聞きに行こう。


月の明かりが部屋を照らす。カーテンを閉め忘れるなんてよほど疲れていたのでしょう。

布団もかけずに寝ている相棒の枕元で、私は寝ることにしましょう。


「おやすみ、タリオ。月の幸運を受け取れますよう」

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