第2話 星降る夜に

8月13日、夜。


とってきた宿題、入浴、ご飯など全てを終わらせた僕は、部屋着でベランダにでる。


海風が顔を撫でる。


「綺麗だなあ」


思わず漏れた本音に言葉を返してくれる人はいない。


でも、そんなことがどうでも良くなるくらい綺麗な空だった。言葉では表すことができないほどの。


月明かりのない空には、数え切れないほどの大小様々な星があって吸い込まれそうな気分になる。


何年も何十年も何百年も何千年も数え切れないほどの昔に生まれた光たちが僕の元に届いている。


そんなこと思ったら、自分がとても小さな存在に思えて、僕はここにいるよと誰かに伝えたくて、星に向けて祈った。



あまりにも静かだったから、つい物思いにふけってしまう。


いろんなことを思い出した。


忘れていた小さい時の自分のことも。


いつしか、考え事に夢中になって、下ばかり見ていた。


どのくらいそうしていたんだろう。ふと、上から声がした。

「見つけました。私の運命の相棒」

「うわっ、誰?」

驚いて上を向くと、白くてもふもふした鳥が目の前にいた。


「シマエナガ?でも、今は夏なんだから白くてもふもふしてないよね?そもそも、北海道にしかいないんじゃなかったっけ?え、でも待って待って待って。インコでもないのにしゃべった?」


鳥は、呆れたようにため息をつく。


「落ち着いてください」

「無理です」


「…いいから、話を最後まで聞いてください。

この姿は私の本当の姿ではありません。いわば、仮初かりそめの姿。ですから、夏であろうとも、冬の時の姿なのは仕方がないことなのです。そして、私はある使命をもってここにきました。私の願いを叶えるためには林憐惺はやしれんせい。あなたの力が必要です」


「え、名前…なんで…。使命…?なんのことですか?」


「そのことを話すと少し長くなります。夏とはいえ、外で長話もあれでしょう。家の中に入ってもよろしいか?」


「あぁ、ええと。はい。大丈夫です。玄関は向こう…なんですけど…」


「問題ありません。ここから入らせていただきます」


「ああ、はい」


何がなんなのかわからないまま、僕は謎の鳥と一緒に家に入った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る