第7話 修行

 風呂からでると、姜馬が居間で待っていた。

 今日一日、朝から本当にいろいろあり疲れていたが、姜馬がどうしてもと言うので、居候の身分もあり、呼ばれて来た。

 「どうしたんだ、姜馬。今日は、もう疲れたぞ。」

 「悪いな。早う始めたくてな。儂には、あまり時間が無いきに。」

 彼はそういうと、1枚の魔法陣が広げた。

 「なんだ、この魔法陣は?」

 「これが『始まりの魔法陣』じゃ。」

 「あの『始まりの魔法陣』か。」

 「そうじゃ、儂に魔力に目覚めさせてくれた魔法陣じゃ。」

 姜馬が自分の生い立ちを語った話しで、魔力に目覚めた時に出てきた魔法陣だ。

 「これが、その魔法陣か・・・。」

 「そうじゃ。この魔法陣のおかげで、儂は魔力に目覚めた。慶之、おまんの魔力も目覚めさせねばな。約束じゃ。」

 「この魔法陣で、本当に俺が魔力に目覚めるのか。」

 マジマジと魔法陣を見ると、確かに、崩れた日本語の文字が書かれている。

 加えて、魔力回路も含めて、複雑な図柄の術式が描かれていた。


 「・・・・・・凄いな。」

 魔法陣を見つめながら、昔のことを思いだす。

 魔力が無かったおかげで、この世界での15年間、本当に苦労してきた。

 偽貴族だとか、無能貴族だとか、貴族の子弟に馬鹿にされた。

 両親にも心配をかけた。期待にも応えられずに、悲しい思いをさせた。

 何故俺だけと恨んだが、転生者だからと諦めていた。

 死んだはずの俺が、この世界で転生しただけでも運が良いと自分に言きかせた。

 それが、突然、こんな形で魔力が手に入るとは・・・。

 考えてもいなかった。


 「それじゃ、いくぜよ、慶之。覚悟はええか」

 「ああ。」

 「これから、この『始まりの魔法陣』が、おまんの魔力を発現させちゃる。」

 「頼む。」

 姜馬は目を閉じて、魔法陣の一角に両手を置く。

 俺も目を閉じて、心を落ち着かせる。

 「それじゃ、いくぜよ。」

 姜馬が、魔法陣に添えた手に大量の虹色魔力を注ぎ込む。

 魔法陣が七つの色に光り、光が俺を包み込む。

 頭に、あの無機質な声が直接、語り掛け、頭に痛みが走る。

 『リミッターを・・・、解除します。魔力を解放。この力・・・で、・・・民を救え。魔力を解放・・・。民を救え。』

 途切れ途切れに話す無機質な念話の声が俺の頭に響く。

 頭が割れるように痛い。

 思わず、叫び声を上げたくなる。

 「ウウウウ・・・・うわぁぁぁぁぁぁぁ」


 無機質な念話の声は単なる言葉の信号に過ぎないはずなのに。

 言葉が、俺の魂の中に・・・、そして、体の中に染み込んでいく。

 これが、姜馬が言っていた、『本能として刻み込まれる』という感覚か。

 そして熱い。熱い何かが、俺の体中で暴れ始めた。

 頭の痛みは和らぎ、代りに強い眠気が襲った。

 『あぁ、これは魂の契約だ。』

 俺の意識が遠のきそうになる。

 頭の中に、姜馬の話を聞いた直ぐの所為か。

 民たちが魔物や貴族などの強者に苦しめられる意識が入り込んでくる。

 殺される民の恐怖や怒り、絶望感に、苦しみが。

 『助けてくれ』という救いを求める民の叫び声と一緒に頭の中に入り込んでくる。

 その叫ぶ声と、殺される際の感情全てが。

 俺の本能の中に、刻み込まれていく。

 頭の痛さと、民の苦しみを感じる。

 体の中に強烈な何かの力が流れるのを感じながら、強烈な睡魔に襲われるのであった。


 俺は夢を見ていた。

 この世界に転生したばかりの、子供の頃の夢だ。

 家庭教師が、毎日、俺に魔法を教える。

 俺には家庭教師が唱える魔法の呪文がさっぱり分からなかった。

 同じ呪文を唱えても魔力は発現しない。

 家庭教師は呪文を唱え、魔法陣を頭に思い浮かべれば、魔法が発動すると言ってい たが、いくら魔法の呪文を唱えても、魔法は発動しなかった。

 そして暫く経つと、「この子はダメですね。」と言って、俺の元から去っていく。

 魔力が発現しない俺を見て、親父殿、母上の悲しそうな顔が横切っていく。

 義之兄も剛之兄も俺を励ましてくれた。

 王常忠は、魔法や武術を教えてくれたが、魔力は発動しなかった。

 妹の琳玲も、諦めずに魔法を俺に教えてくれた。

 「はぁ~」と、家庭教師の溜息が聞こえてくる。

 魔法を教える家庭教師が去っていく。

 すると、次に新しい家庭教師がやってきた。

 俺はとっくに諦めているのに、両親は諦めずに大陳国中から、金に糸目は付けずに魔法の家庭教師を集めた。それでも、俺の魔力は発現しなかった。

 「ダメですね、この子は。魔力が発現しません。」

 その言葉を最後に。

 家庭教師は誰も来なくなった。

 俺は魔法の本を全て燃やしてしまった。

 俺が落ち込んで、芝生で寝そべっていると。

 赤茶色の髪の女の子が『子雲は、私が守るわ』と言って。

 横でずっと座っていた。

 しばらくすると、その女の子は、剣を振っていた。

 走馬燈のように景色が変わっていった。

 異世界人である俺が魔法を使えるわけなどないのだ。

 夢の中で、俺はそう言って、自分を諦めさせた。


 「はっ。」

 震える瞼を開くと。

 見覚えのない部屋の景色が目に入った。

 『ここは・・・、姜馬の館の風呂に入って・・・、そうだ。』

 薄っすらと、昨日の記憶がよみがえってきた。

 体を起こすと、そこは知らない部屋だった。

 綺麗な畳の部屋で、障子から、光がこぼれている。

 『そういえば、昨日も、知らない場所で目を覚ました。』

 昨日は、確か、目が覚めて台所で水や食料を探していたら、首筋に刀の冷たさを感じさせられた。

 今日は昨日のような失敗は回避しなければと、あまり動き回らない選択をする。

 布団から起き上がると、障子を開けて、縁側で外を眺めていた。

 白砂で枯山水の模様が描かれた庭を見ながら、自分の体の変調を感じていた。


 体の中を、何かが動き回るのを感じる。

 昨日の朝には感じなかった何かだ。

 たぶん、これは魔力なのだろう。魔力が体から溢れ出ようとする流れを感じる。

 目をつぶって、魔力を感じていた。

 ゆっくりと近づいてくる人の足音が聞こえる。その足音が俺の横で止まった。


 「慶之。目が覚めたか。体調はどうじゃ。」

 顔を横に向けると、姜馬と桜花の2人が立っていた。

 姜馬は、昨日よりやつれて、より一層老けた感じがした。

 「ああ、体調か・・・、なんか体が変な感じかな。」

 「まぁ、魔力が目覚めると、体が驚くきの。儂の時もそうやった。」

 「姜馬。何かが体中を動き回っている感じがする。」

 「それは、魔力じゃ。おまんの魔力を開眼させたからの。」

 「そう言えば、いつの間に寝ていたようで、記憶も一部あやふやだが。」

 「おまんは、あの場で眠ってしまったのじゃ。儂の時もそうじゃった。それより、腹が減っただろう、一緒に朝飯を食べるか。」

 「ああ、食べる。」

 朝食の膳の準備を行っていたのか、桜花が2人に膳を出した。

 「魔力に目覚めたのなら、腹が空いただろ。一杯たべろ。魔力を使うと、腹が減る。」

 「そう言えば、父や兄もそんな事を言っていた。俺には分からなかったが。」

 「そうか、なら、これから分かる。」


 姜馬と話していると、桜花が目の前に膳を置いた。

 純和食のメニューだ。

 ご飯に生卵、みそ汁に、漬物に海苔。・・・夢にまで見た日本の朝ごはんだ。

 昨日の天婦羅も美味しかったが、朝飯はこれだ。米が美味いと何でも美味い。

 この里の食事は、米だけでなく、調味料や味付けに拘っている。

 このみそ汁も良く出汁が取れていて美味しい。それに、この醤油も、日本の醤油と変わらない味わい深さだ。

 「この料理は桜花が作ったのか。」

 「そうだよ。子雲。美味いかい?」

 桜花は俺を字の子雲で呼んでいた。

 そういえば、お互いに堅苦しい敬称は止めていたのだ。

 「あぁ、この世界で食べた食事の中で一番美味しいと思うよ。」

 「大袈裟だな、子雲は。只のお米にみそ汁。それに卵や漬物などを加えただけさ。料理らしい、料理じゃないぜ。」

 「それでも、美味い。ありがとう、桜花。」

 「そうか・・・まぁ、美味しいと言ってもらえると、僕も嬉しいよ。」

 俺は心の底から、この朝ごはんを美味いと思った。


 姜馬も、頷きながら米を食べている。

 ただ、箸にのった米の量は多くは無かった。

 「分かる。分かるぜよ。儂は『始祖芋』ばっかり食べよったきの。『始祖芋』がこの世界の主食か思うたくらいやったが、他の料理を食べても『始祖芋』よりは上手い程度の味やったきの。この里の食べ物は、皆で心血注いで改良した成果じゃ。」

 姜馬は涙ぐむように、調味料の醤油やソース作りの苦労を語った。

 「この美味しい食事が食べられるのは、素材を開発した姜馬と、料理をしてくれた桜花のおかげだな。」

 俺は2人に感謝の言葉を伝えて、朝食を頂いた。


 「ところで、姜馬。昨日よりやつれていないか。」

 「ああ、これか。昨日も話したがや。儂の命は長く無いきの。昨日、おまんの魔力を開眼させるのに、けっこうの魔力を使ったぜよ。やっぱり普通の魔力を開眼させるんと、虹色魔力を開眼させるんじゃ、使う魔力量も違うきの。これほどの魔力が持っていかれるとは思わんき。」

 姜馬はバツが悪そうに説明した。

 「姜馬。お前の脈を見せてくれ。」

 「あ、そうか。慶之は前世では医者じゃったがや。」

 そう言うと、姜馬は右手を俺に差し出した。

 脈を診ると、脈の流れが異常に遅い。普通の老人の半分の遅さだ。

 これは、前世の医療であれば、直ぐにでも入院させるレベルの症状だ。

 「お、おい・・・。この脈の速さは絶対安静が必要な水準だぞ。」

 俺は、病院の患者を診る目つきで、姜馬を見た。

 「診ての通りの。老化じゃ。儂はこの世界で80年を生きちょる。この世界では、80歳まで生きている方が珍しいぜよ。ははははははぁ。」


 この世界に医学は無い。あるのは治癒魔法や回復薬だけだ。

 だが、治癒魔法では怪我などの外科の治療しか治せない。

 伝染病や癌、老化、毒、呪いなどの内科系の病気の治療は治せないのだ。

 だから、平均寿命は短い。だいたい50歳が寿命である。

 「姜馬。こんなに症状が悪かったとは。すまん。無理に魔力を使わせてしまって。」

 「慶之。気にせんでええが。老化や、老化。誰もが年をとったら死ぬんじゃ。儂は明日死んでもおかしくないからの。あと儂に出来ることは、おまんに魔法を伝授する事だけや。早く、食事をしたら、力を得る為の修行ぜよ。」

 姜馬は、食事には少し箸をつけただけだった。

 桜花は悲しそうな目で、膳を片付ける。


そして、力を得る為の修行が始まった。


 「まずは、魔法の修行を始めるぜよ。」

 「儂ら異世界人が使える属性魔法は、聖魔法と闇魔法だけじゃ。火、水、土、風、雷の5属性の攻撃魔法は使えん。」

 「姜馬、異世界人は5属性魔法を絶対に使えないのか?」

 「いや、始祖も始めは2属性の魔法しか使えなかったが、使えるようになったそうだ。始祖の日記では、属性の主(あるじ)か。それに類する属性の力を持った者の祝福を受けると、その属性魔法が使えるようになると書いてあった。そして、5属性全てを手に入れて、覚醒してから、魔王と戦ったと書いてあった。」

 「属性の主に。それに類する属性の力を持つ者か。それに覚醒か。良く分からんが、とにかく絶対という訳ではないのだな。主に龍に、覚醒って何の事なんだ。」

 「儂にも分からん。その本には、始祖は覚醒して、魔物と戦ったとしか書いてなかったのじゃ。」

 姜馬が言うには、始祖は、なんでも昔の源氏にゆかりがある者らしい。

 それで、大聖国の王族は源を名乗っているそうだ。

 その始祖も、始めは聖魔法と闇魔法しか使えなかったが、5属性の主や龍の祝福を受けて、5属性魔法の力が全て覚醒した後で、魔王を倒したそうだ。


 「それじゃ、魔法の特訓じゃ。まず、聖魔法じゃが。聖魔法は、光、味方の援護や防御、死者の魂の浄化などだ。具体的には治癒魔法、結界魔法、仲間の魔力を強化する強化魔力、浄化魔法等があるが。まずは結界魔法からやってみるぜよ。」

 「姜馬。やってみろと言われても・・・。いったい、どうするんだ。」

 俺には、魔法の発動の仕方など分からない。

 「慶之。まず頭の中に結界の魔法陣の図柄をイメージして見ろ。」

 「魔法陣の図柄・・・?」

 「すまん、これだ、これ。この図柄を頭の中に念写してくれ。」

 姜馬は目の前に、魔法陣の図面を広げた。


 その魔法陣を頭に念写して、思い浮かべる。

 しばらく図面を見て、結界の魔法陣の図柄を頭にイメージしてみる。

 「神聖文字(ルール語)の言葉は、『我らを守る壁よ、現れよ。』だったか。」

 頭の中に、結界の魔法陣の術式の言葉を思い浮かべて、魔力を注ぎ込む。

 すると、虹色の結界が俺を包み込んだ。

 「見事だ。慶之は、ずいぶん飲み込みが早いな。」

 自慢ではないが、前世で国立の医学部に現役合格した頭脳を持っている。

 特に、図面を頭に記録することは得意だ。

 俺には記憶ではなく、頭に記憶させた情報を自由に引き出す特技であった。

 そのおかげで、魔法陣を念写する力には自信がある。


 「じゃ、次はこの魔法陣じゃ。明かりを点ける光魔法じゃ。」

 姜馬が次に開いた魔法陣の術式を頭に浮かべていく。『明り照らせ。』と神聖文字で書かれている。

 神聖文字は日本の言語(げんご)で意味も同じなので、容易に魔法陣を頭に念写できた。

 そのおかげか、光魔法も簡単に発動で出来た。

 「優秀じゃ。慶之には才能がある。こんなに短い時間で、魔法習得ができれば合格じゃ。これなら儂の寿命も間に合うかも知れん。」

 「姜馬。冗談でも止めてくれ。お前には魔法以外でも教わる事がたくさんある。」

 「それは大丈夫だ。儂の弟子たちにしっかり伝授してある。ゴホゴホ。」

姜馬は、苦しそうな咳をして目を閉じた。

 「急がねばならぬが、今日の魔法の授業はこれでお終りだ。後は、この魔導書を見て自習。術式を覚えて、分からんことは明日聞いてくれ。それと、明日の朝からは武術の練習もじゃ。武術は桜花が訓練をつけてくれるきに。」


 姜馬はそう言うと、『姜氏の魔導書』と書かれた本を一冊、俺に渡した。

 開いてみると、魔法陣の術式や魔法の理論が書かれている。しかも日本語だ。

 この本は俺と、姜馬にしか読めない本だ。

 「姜馬。この本、お前が作ったのか。」

 「そうぜよ。儂が40年の歳月をかけて作った魔導書や。全部で10巻ある。この魔導書を全て読んで、魔法の理論を理解したら、お主は卒業じゃ。ゴホン、ゴホン。でも、良かったぜよ。この本が無駄にならんで。」

 再び、姜馬は苦しそうに咳をしていたが、表情は嬉しそうだった。

 あの脈の動きで、布団から体を起こして、話すだけでも本当は辛いはずだ。

 たぶん、魔法で体を動かしているのだろう。

 「分かった。この本で修行しておくから、寝ていてくれ。」

 「すまんの。儂はちくと休むきー。慶之、気張れや。」


 俺は、魔導書を持って、姜馬の部屋を出た。

 陽が当たる屋敷の庭に面した縁側に移って、魔導書に目を通した。

 本は魔法の理論が良く整理されて書かれていた。

 魔法を発動する時間を短くする必要性や修練の方法。

 いくつかの魔法を同時に発動する方法などが書かれている。また、魔法を覚える方法のポイントなども書いてあった。

 そして、使い勝手が良さそうな。または必要そうな魔法陣から順に書かれている。 「これを全部暗記するのか・・・。まぁ、俺なら楽勝だな。」

 この『魔導書』は、まるで受験勉強の参考書のようだった。

 前世で貧乏だった俺にとって、この程度の勉強は苦ではない。むしろ、魔法陣を覚える毎に力が得られるのだ。楽しくて仕方がない。

 その日は夜遅くまで、『魔導書』の暗記を集中していた。

 修行なんて楽勝だと、俺は楽観視したが、それは甘かった。

 本当にきつい訓練がどういう物なのかを、翌日知ることになるのであった。


 翌日の夜明け前のまだ、暗いうちにいきなり布団を剥された。

 「おい!子雲。いつまで眠っているのかな。さぁ、始めるぞ、訓練を。」

 いきなり、桜花が姜馬の館の俺が寝ている部屋に乱入してきた。

 寝ぼけている俺は、体を起こして腕で目を擦(こす)りながら、外を見た。

 「ああ、桜花か。まだ、暗いぞ。昨日、遅くまで魔導書を読んでいたんだ。もう少し寝かせてくれ。」

 すると、『ビシッ』と木刀が俺の背中を叩いた。

 「子雲。君は、やる気があるのか。」

 桜花は俺の首を掴むと、強引に立たせた。

 「お、おい。まだ、外は暗いぞ。まだ、夜だよな。」

 「君は何を言っているんだ。もう直ぐ夜が明けるぞ。早く着替えろ!」

 彼女は俺に服を渡して、廊下に出た。

 「いいな。僕が30数えるまでに着替えろよ。着替えられなければ、寝巻だろうと。下着だろうと。その恰好で、訓練を始めるぞ!」

 慌てて、服を着替えると、桜花が「26!」と数字を叫んだ所で、着替えが終わった。


 障子を開けて、廊下に出るとまだ寒い。

 大陳国は大陸の南に位置する暖かい国だが、今の季節は1月で冬だ。

 まだ寒い外に出ると。

 「はい。これから、里の周りを一周走ってもらうよ。僕の前を走ること。遅いと、お尻に木刀が飛ぶからね。じゃ、そういうことでよろしく。はい走るよ。」

薄着で、外は寒い。

 いきなり走れと言われても、道も分からなければ、どれくらいの距離かも分からない。

 「いや、ちょい待ってくれ。いきなり走れって。道も分かんないし。里一周ってどれくらいの距離なんだ。」

 「はぁ、子雲。君はいつも全ての情報を持っていないと戦えないのかな。走りながら考えるのも重要だよ。一応、道は僕が指示するけど、この里を良く観察した方が良いね。そうすれば、次回から道も分かるはずだ。さぁ、走るぞ、青年。」

 『ビシッ』と木刀が俺の尻を叩く音がする。

 桜花は俺を青年呼ばわりして、走り始めた。

 仕方が無く、俺も付いていくように走り始める。


 「遅いね・・・。遅すぎる。君、『身体強化』の魔法を使っても良いよ。僕は使わないけど。」

 桜花が後ろから、プレッシャーをかけて来た。

 『身体強化』魔法は楊家の家宝の魔法で、姜馬から借りた『魔導書』にも魔法陣の術式が記載されていたので魔法を発動することは出来る。

 この『身体強化』魔法をかけると、走る速度が愕然に上がった。

 『すげぇ』

 自分の魔法の力を始めて体感した。

 改めて自身が魔法を使えるようになったことに実感していると。だが、魔力を発動しても、桜花は後ろから煽って来る。

 「なに、ぼっとしているのかな・・・。もっと、早く走らないと朝ごはんを食べる時間が無くなってしまうよ、青年。」

 桜花は『身体強化』の発動なしで走っている。

 慌てて、走る速度を上げるが。


 彼女の走る速度を上げて、『ビシッ』と木刀で容赦なく俺の尻を叩く。

 「遅いわね・・・。遅いよ、君。『身体強化』魔法を発動しても、この速度なの?今まで体を鍛えるのを怠けてきたようだね。」

 「・・・・。」

 鍛錬については、前世では何もしてこなかったが、この世界では、従者の常忠や妹の琳玲に鍛えられて、頑張ってきた・・・。

 だが、『身体強化』魔法を発動しているのに、桜花に煽られている状況では言い訳も出来ない。魔法が使えないのを理由に、体を鍛えるのに手を抜いていたのだ。


 『ビシッ』と木刀が俺の尻に飛んでくる。

 「容赦ないな。でも、魔法が使えれば、体力なんて要らないんじゃないのか。」

 「何、君は甘いことをいっているんだい。魔法は遠距離や中距離で有効だけど、近距離では武術に敵わないよ。それに、子雲は5属性の攻撃魔法が使えないんだろ。最後に止めを刺すのは刀だ。神級魔物は接近戦で攻撃してくる。武術の技量と魔力が上手くかみ合わないと死ぬぞ。」

 たしかに、魔物も、鎧騎士も強い相手だと長距離攻撃では避けられる。

 それに、魔物は結界を張るし、皮も頑丈だ。鎧騎士の場合も装甲が頑丈で、確かに強い相手では倒せない。

 そうすると、確かに近距離戦の魔力を籠めた一撃が、止(とど)めになる。

 強い相手の敵だと、結局は近距離戦になると、桜花が走りながら教えてくれた。

 俺も楊公爵家の貴族軍の訓練を見たことがあるので、近接戦でないと、鎧騎士同志の戦いでは歯が立たないと一応は知っていた。


 「分かったよ。だが、ケツを叩くな!パワハラだぞ。」

 「えっ、なに、なに、そのパワハラって。ちんたら訓練している子雲を改心させる道具か?とにかく、姜馬様の朝ごはんに間に合うように早く走ってくれ。」

 この世界に『パワハラ』という概念は当然に無い。

 言っても無駄と分かりながらも、一応言ってみたのだが、やはり無駄だった。

 「わ、分かったよ、真面目に。走れば良いんだろ。」

 俺は『身体能力』魔法をフルに発動させて、桜花に尻を叩かれない速度走った。

 桜花に木刀でケツを叩かれながら、なんとか里の周りを完走した。

 「ゼェゼェゼェ。やっと走り切ったぞ。」

 走り終わると、立っているのも辛くなり、地面にしゃがみこんだ。

 約1時間で走った。

 走ってみて分かったが、だいたい60㎞だ。これも、桜花に言われて、考えながら走ったおかげで知ることが出来た。


 『身体強化』魔法を使って、やっと完走できたが、魔法無しでは辛い。

 だが、悔しいことに桜花は全然、息が上がっていなかった。

 「は~い。ご苦労様。次いくよ。次ね。次は刀術だよ。まずは木刀で始めるよ。」

 「待ってくれ、桜花。少し休憩をくれ。」

 「子雲。さっき、君に説明したよね。姜馬様には時間が無いの。子雲が早く強くなって、姜馬様の夢を叶えるんだよ。それと、今日の朝ごはんの時間もあるんだよ。」

 桜花はニコッと笑って、木刀を差し出す。

 大陳国では、あまり刀の武器は使われない。

 多くの貴族が剣か槍を選ぶ。

 貴族の子弟として剣を習ってはいたが、俺はこの里にきて武器を刀に変えた。

元々、日本人と言う事もあるが、刀の方が軽くて斬れる。それに、持った重みもドッシリとして手に馴染む。

 そういう理由で、刀を武器にしていた俺に、問答無用で木刀が手渡された。

 「分かったよ。そんなに、急がなくても・・・・。」


 ――ビシッ。

 ブツブツ文句を言っていると、彼女の木刀が俺の足を叩いた。

 「子雲。戦う時は、命を賭けて戦うものだ。君が魔物に襲われた時を想像して見てくれ。休憩する時間をくれと言ったら、魔物は攻撃を待ってくれるかい。」

・・・桜花の言う通りだ。

 あの【曲阜】で、魔物に襲われた時を思い出して、俺の意識は変わった。

 『そうだ、力だ。俺に、もう少し力があれば、・・・・。』

 木刀を持つと、桜花に上段から攻め込んだ。

 ――バシッ。

 彼女も動いた。擦れ違いざまに俺の腹に彼女の木刀が喰い込んでいた。

 「ゲホッ。」

 腹を強打されて、腹の中の空気が口から出た音がした。

 腹に激痛が走る。思わず、地面にうずくまってしまった。

 「子雲。魔物との戦いなら、今の一撃で死んだね。君の攻撃は、隙が大き過ぎる。実戦をもっとイメージしろ。いいな。・・・・、あと、これを飲んでおけ。回復薬だ。それに、魔法を使って攻撃してこい。魔法無しでは相手にもならないからな。」

俺はうずくまった態勢から手を伸ばして、回復薬を受け取って口にした。


 スッーと痛みが引いていく。

 この世界の回復薬と治癒魔法の効き目は凄い。

 外傷や打ち身なら、ほとんどの傷が直ぐに完治する。

 「分かった。次は魔法を使う。」

 俺はそう宣言して、『瞬歩』の魔法を使った。

 『瞬歩』は空間魔法で、自分が見た場所に体瞬間で移転する。

 突然、彼女の前に移転して、木刀を振るった。

 「遅い。」

 俺が彼女の前に現れた瞬間に、既に彼女の木刀は俺の腹目がけて動いていた。


 「グフッ。」

 先ほどと同じように腹に激痛が走った。

 「子雲。君が死ぬのは、これで2回目だね。隙を見せたらダメだよ。君の目線や魔力の動きで、次の動きが読めるんだよね。初見殺しなら有りだけど、手の内を知られている僕には効かないな。」

 彼女はそう言うと、再び、回復薬を俺に差し出した。

 黙って手を出し、回復薬を受け取る。

 治癒魔法も使えるのだが、自分には効きが良くない。

 他人を治すのは良いが、自分には効果が小さい。

 「このままではダメだ。俺は、強くなる。弱いままの俺ではダメなんだ。」

 回復薬を飲むと、『空歩』を使って、空中から木刀で斬り掛かる。『身体強化』で攻撃力を高めてみたりするが、彼女には、一本も木刀が当たることは無かった。


俺の方は、9本目の回復薬だ。

――バシッ。

 「もっと早く、強く。そして間髪を入れずに流れるように攻撃を繰り出すんだ!」

 「もっと、腕を伸ばす。中途半端な刀は、僕には届かないよ。」

 「もっと、相手の攻撃を読みなさい。」

 「動きにフェイントを入れるとか。工夫が必要だよね。もっと頭を使わなきゃ。」

 「隙が多いのよ。もっと動きをシャープに。」

 「攻撃動作の継ぎ目を無くして。除けられたら、次の攻撃だよ。」

 彼女のスパルタ指導は止まらない。

 「腰が引けているよ。背中を伸ばして!もう一歩踏み込む。」


――バシッ。

 今度は、木刀で腕を叩く。

 容赦なく、木刀が腰や背中に打ち込まれた。

 「はい、君は今日、10回死んだ。」

 今日、10本目の回復薬を渡される。

 俺は、それを飲み干すと、木刀を手に持つ。

 「ハァ、ハァ、ハァ。」

 息を切らして、木刀を杖にして立ち上がろうとするが、腕に力が入らない。

 体の傷は、回復薬で治療されるが、肉体的、精神的疲れは回復しない。

 疲れて、地面に座り込んでしまった。

 「まだ、目は死んでいないね。よく頑張った、でも、今日はもう終わりだ。姜馬様の食事があるからね。」

 そう言うと、彼女は練習場を去って行った。

 もう、太陽は東の空に上がっていて、周りは明るい。

 俺の感覚では、朝8時頃の時間だ。


 俺は、姜馬と一緒に食事をした。

 ほとんど食事を食べようとしなかった。

 姜馬の表情は昨日より更に悪くなっていた。時間が無いと姜馬が言っていたのは嘘では無かった。

 今日の魔法の修行は自習になった。

 姜馬が書いた魔導書を10巻まで借りて読む事にした。

 内容が丁寧に書かれている所為か、分からないことは無かったので、自分で読んで実践してみた。朝の桜花の修行の成果もあり、魔法の発動時間にこだわったり、攻撃をイメージしたりして魔法を発動してみた。


 午後になると、桜花がやって来た。

 「は~い。子雲。素振りをしようか。」

 彼女は俺に木刀を渡した。

 「いや、午後も魔法の修行の続きをしたいんだが・・・。」

 「今日、実戦形式の打ち合いをして分かったんだけど。君の場合、魔法の修行より、武術の修行の方が重要じゃないかな。魔法は戦いながらも発動した方が役に立つと思うよ。その方が、実戦に役立つと思うんだけど。子雲はどう思う。」


確かに、そうかもしれない。

 5属性魔法が使えないのが、最大のネックだ。光属性や闇属性の魔法では、戦いを有利に進めることは出来るが、攻撃力が弱い。

 そうすると、攻撃は近接戦の武術に頼る戦い方になる。それに、魔法は魔法陣を覚えるだけで、特に修行をしなくても自分で出来る。実際、実戦形式の戦いの中で、魔法の発動に慣れた方が良いのもその通りだ。

 「そうだな。確かに桜花の言う通りかもしれない。」

 「じゃ、決まりだ。まず素振り千回。それが終わったら、打ち込み稽古をこなしてもらおうか。じゃ、素振り千回から始めようか。」


 『素振り千回だと。』思わず反論したかったが、俺は黙々と素振りを始めた。

 「もっと、木刀に魔力を籠められないかな。」

 「はい、集中して・・・、一心不乱に木刀を振って。」

 「太刀筋に注意するんだよ。はいっ、魔力を籠めて素振りを続ける。」

 桜花の指導で、すでに2時間近い時間をかけて、千回の素振りを行った。

 「よし。素振りは終わりかな。」

 その声を聞いて、再び、地面に座り込んだ。


 「はぁ~、まじ疲れた。桜花は鬼だな。ほんとうに鬼だ。」

 「酷いな、子雲は。こんな美しい鬼はいないけどな。まぁ、それだけ冗談を言えるのであれば、まだまだ余裕だね。はい、次行こうか。」

 結構、集中して魔力を籠め、太刀筋も気にして振ったので腕が鉛のように重い。

 手にはタコが出来て、指の根元が水ぶくれのように少し膨れている。

 桜花は木刀で自分の肩を軽くトントンと叩く。

 「い、いや、いや。無い、無いぞ、余裕なんて。ただ、いきなりこのスパルタ訓練は流石にないかな~と。」

 「スパルタって何だい?君はさっきもパワハラとか言っていたが。まぁ、良い。子雲。とにかく始めようか、次の訓練を。姜馬様の目が黒いうちに、なんとしても姜馬様の夢を叶えないといけないからな。」

 「わ、分かったよ。やるよ。」


 「じゃ。次は打ち込み稽古かな。」

 「打ち込み稽古?なんだ、それは。」

 「あの人形の・・・胴に向かって上段からの斬り降ろしを100本。右足、左足も各100本。そして、腰を落とした低い姿勢から刀を振り上げて胴体を100本。最後に首を横撫で振り下ろしを100本、合計500本。その後は自由にやってみてよ。言われたように、あの人形を魔物とイメージして斬り掛かってくれるかな。」

朝から、けっこうの運動量だ。

バテているが、とにかくやるしかない。

 「子雲が得意の魔法を使っても良いよ。というか魔法を使うイメージでやってみて。刀術の打ち込みと魔法の併せ技。たとえば、『瞬歩』の魔法を使ってみてよ。『瞬歩』で移動して、相手の前に移動した瞬間、隙なく攻撃するとか。さっきの実戦練習で、君の場合、移動してから、攻撃に移るまでの時間が長すぎる。『瞬歩』で敵の目の前に現れた瞬間に敵を斬っているのが理想なんだけど。」

 なるほど、桜花の言わんとすることは理解できる。

 ただ、人形に打ちかかるのではなく、実戦をイメージして、攻撃のキレを増す為の攻撃する力を磨けという事だ。

 「分かった。」

 「それじゃ、終わる頃にまた来るよ。」

 そう言うと、桜花は姜馬の館に戻って行った。


 楊家では、王級魔力の妹の訓練に付き合わされて、前世に比べて、そこそこ体を鍛えていた。加えて、『身体強化』魔法も発動できるようになったので普通の貴族であれば、簡単に倒せるハズだった。それでも、桜花には敵わない。

桜花は神級魔力を少ししか使わなくても、俺の攻撃を捌いてしまった。

 『・・・『空歩』も、『瞬歩』も、桜花には全く効かなかった・・・。どうすれば。』

間違いを発見し、検証し、対策を練るのは前世で得意だった。

その高い学習能力で、国立大学の医学部にも合格したのだが、戦いに関しては何も思いつかない。何が欠点で、どうすればその欠点を克服し、桜花を倒せるのか・・・。

『俺の目線か・・・。目で認識した移転先への瞬間移動が、この『瞬歩』の魔法だ。目線を読まれているか・・。』

 『目線だけで無いか・・・。動きも読み易いか。移転場所を変えるか・・・。』

 『それに、動きに隙が多いと言っていたな・・。もっとシャープな動きとは・・・。』

 『木刀にもっと、魔力を籠めてみるか。そうすれば、刀の速さが増す。威力も・・・。』

次々に、俺は改善点を頭に思い浮かべながら、打ち稽古を始めた。

 『まぁ、改善点を思い浮かべるだけなら簡単なのだが、問題はどうやって、自分の力にするかだ・・・。』

 改善点を動作に落しこむ。

 動作を意識しながら、何回も、何回も打ち稽古を行っていく。

 既に500回の打ち稽古は終わっていた。


 人形も、すでに人形と呼べないようにボロボロになってしまっている。

 『身体能力』魔法を最大限に発動し、刀の振りをよりシャープに。

 攻撃が単調にならないように斬り返しを意識して。目線は、さりげなく。

刀を受け止められた時に、どう対処するかを想定して動く。

 いろいろなパターンをイメージした打ち込みを、何度も繰り返した。

 気がつくと、陽が赤く染まり、太陽が西にだいぶん傾いていた。

 「もう、こんな時間か。」

 辺りが暗くなってきた。


 しばらくすると、桜花がやって来た。

 「おーい、子雲。どう、動きがだいぶんサマになってきたようだね。」

 彼女は、離れて俺の訓練を見ていたようだ。

 「いや。まだ、まだだ。納得いかない。」

 「そうかい。だけど、もう陽が暮れるからね。また、明日、練習に付き合うよ。」

 桜花は、意外に優しく練習を切り上げるように言ってくれた。

 大人しく、彼女の言葉に従った。


 館に戻ると、姜馬が待っていた。

 「どうじゃ。慶之。今日はだいぶん練習できたか。コホン。ゴホ、ゴホ。」

 姜馬は相変わらず体調がきつそうだ。

 「ああ。武術中心で練習しているよ。魔法の理屈は分かった。魔法陣もだいぶん暗記したしね。後は、実戦練習でどれだけ力を発揮できるかだな。」

 「そうじゃろ。桜花は怖いからの。武術については手を抜かんからの。」

 「いや、本当に情け容赦がなかったよ。」

 「それで、今日はどんな魔法を使ってみたんだ。」

 「ああ、今日は『瞬歩』と『空歩』を練習した。魔法発動の時間も短くなったし。『瞬歩』と『身体強化』魔法の並列思考も上手く行った。順調だよ。姜馬。」

 「そうか。そうか。良かったぜよ。頼むぜよ・・・、慶之。ゴホッ、ゴホッ。」

 「ああ。頑張るよ、姜馬。姜馬は速く体を治せよ。」

 「ああ、そうさせてもらう。だが、無理はするなよ。慶之。」

 姜馬と俺は、桜花が用意した夕食を食べた。

 相変わらず、姜馬は料理に箸をつけるだけで、あまり多くは食事を食べない。

 桜花が悲しそうな表情で、姜馬の食事を片付けて帰って行った。


 体がきついのか、姜馬は布団に入り眠ってしまったので、俺も部屋に戻った。

 魔導書を読んで、今日の復習を行う。魔法の学習はだいぶん順調だ。

 それにしても、今日の練習は本当に疲れた。

 魔導書を読みながら、眠くなると開いた本に頭を乗せて眠るのであった。

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