第4話 姜馬
楊慶之 『姜氏の里』
「そうじゃ、慶之は当分の間、儂の館で暮らせば良いぜよ。明日にでも、慶之の魔力を発現しなきゃならんが。その後、しばらくの間は魔法や戦いの修行が必要じゃ。その間、儂の館を使えば良い。部屋はたくさん余っとるからの。それとも、やっぱり、桜花の家の方が良いかの。」
姜馬は笑いながら、ふざけるように俺と桜花の顔を交互に見回した。桜花は自分がからかわれているのが分かって、一瞬、顔を赤くしていたが。
「姜馬様、お戯れを。僕の家に泊まるのは無理ですよ。間違えて殺しちゃうかもしれませんから。」
脅しとばかりに、桜花は腰の刀の柄を「カチン」と鳴らした。
「そうじゃの。桜花の家に男を泊まらすのはさすがにまずいの。」
姜馬の顔を引き攣らせていた。
俺としても、美しい女性の家に泊まるのは嬉しいが・・・15歳くらいの年の女の子はマズい(病院の医師が未成年の女の子に手を出して懲戒免職になった)。それに、日本刀で一刀両断されるのは勘弁したいので出来れば辞退したい。
「姜馬、悪いが姜馬の家に厄介になりたいが、良いか。」
ここは、無難に姜馬の館に厄介になることにした。
「ああ、いいぞ。儂の家にしよう。儂の自慢の風呂を後で見せちゃる」
姜馬は上機嫌に風呂の話をした。
今は、姜馬との対面も終わって、宴会に移っていた。
この里の者も、俺が姜馬と同郷で虹色魔力の使い手の可能性があると聞いて、一部の者は態度が軟化していた。
法政という青年やまだ一部の里の者は、貴族である俺が姜馬の後継者と聞いて納得できないようであったが、この場で反対を大声で叫ぶようなことは無かった。ただ、俺を見る表情は相変わらずに厳しい。
桜花たちが、膳に食事を載せて運んできた。
俺としては、やっと食事にありつけて御の字だ。昨日の朝に食事をしてから何も食べていない。緊張もあって空腹を忘れていたが、落ち着くと急に腹が減った。
並べられた料理を見て唖然とした。
なんと、そこには夢にまで見た米があった。
腹が減っていたので、何でも食べられれば良いと思っていたが本当に驚いた。
まさか、この世界で米にありつけるとは思ってもいなかった。この世界、いや大陳国では小麦が主食だ。麺や団子にして食べたり、ナンの生地のような物を蒸かして食べる場合もあった。
そして、その米は美味かった。
口に含むと、甘味があり、みずみずしく、噛むと甘みが口の中に染み渡る。
「姜馬、こっちで米が食べられるとは思わなかった。しかも美味い。どうやってこんな美味い米を作ったんだ。」
「そうじゃろ、そうじゃろ。儂もこんな美味い米は食うたことが無かったぜよ。この米は、儂の弟子の姜作琳が作った新種の米じゃ。儂が前世で食べよった米より美味いきの。それでいて、この品種は天候不順や害虫にも強い。作琳が魔力も使って品種改良を何度も何度も重ね、作った品種の米じゃ。」
姜馬は米を口に含んで、弟子の姜作琳が作った米を誉めていた。
「ああ、本当に美味みが口の中に広がるな。」
この米は、日本の高級ブランド米よりも美味い。この世界で、こんな美味しい米に巡り合えるとは思っていなかった。
涙が出るくらいに感動ものだ。
「・・・姜馬、いま、この品種を魔力による品種改良と言っていなかったか。」
「ああ、言ったぜよ。」
「米の品種改良に魔力が関係あるのか?」
「ああ、あるぜよ。ここだけの秘密じゃ、誰にも言ったらいかんぜよ。実は、生き物に魔力を浴びると進化するんじゃ。例えば、動物に強い魔力を浴びせ続けると、子孫は魔物に進化する。植物も同じぜよ。種もみに魔物を適度に浴びせて品種改良すると、天候不順や害虫に強く、味も美味い品種の米が作れるんじゃ。」
「ま、魔力が進化を促す・・・確かに、それは危険な理論だな。」
魔力で生物が進化が加速するとは俺も知らなかった。
確かに、魔力の濃い『魔力溜り』では生物は発育が良い。そして魔力を蓄えている動物である魔物は、肉の味も美味しく高級素材として扱われる。魔牛妖なんかは普通の牛の肉より何倍も美味しかった。
だが、姜馬が言うように、この魔力進化論は危険な考えだ。
この理論が姜馬の言う通りでなら、人間が魔力を浴びて進化したのが魔人という事になる。
この世界には魔人という種族がいる。この種族は、千年以上も昔にこの大陸をかけて人類は争った人類の敵だった。争いに勝ったのは人類で、負けた魔人は南の魔大陸に逃げたが、人類は魔人を強く憎んでいる。その魔人と人類が同じ種族が根源だと知ったら、大きな波紋を呼ぶ。七光聖教あたりが特に騒ぎ出すだろう。
「危険な理論じゃが。事実として、この米の品種は魔力を籠めて作られたもんじゃ。魔力のおかげで美味い米が食えるんなら、危険な理論だろうが関係ない。黙ってりゃ良いのじゃ。」
姜馬は美味そうにお米を口の中に入れて嚙みしめている。
あまり量は食べられないようで、少しずつ味わいながら食べている。
「お米だけでなく、この里の料理は何でも美味いな」
餃子を箸でつまんで口に入れる。
熱い餃子を嚙むと旨味の詰まった肉汁が口の中に広がった。こんなに美味しい料理はこの世界では食べた事が無い。
「そうじゃろ、そうじゃろ。この里の食べ物には調味料をふんだんに使っておるからの。香辛料やニンニク、唐辛子、油などを世界中から取り寄せておる。」
使っている素材も良いが、これだけの調味料をふんだんに使った料理は王や大貴族でも食べられない。この世界の調味料は塩や砂糖、それに近くで取れる調味料ぐらいが良い所だ。
物流が悪いので、多くの調味料を調達できないのだ。塩だけは、凄く高価な値段だが行商人がいるが、それ以外の調味料はあまり出回っていない。
「この天婦羅も美味いな。前世の料理と同じくらい美味い。」
「それは、この里の者たちが、儂の前世の知識を工夫したからじゃ。」
天婦羅の料理も、カリッとして職人が揚げたように美味しかった。
この天婦羅を作る為に使われた油や小麦粉も、この世界の食べ物とは思われないほど素晴らしい素材だ。
「これは上質の油で揚げたのか。どうやってこんな上質の油を手にいれたんだ。」
「その油はオリーブという実の油じゃ。西の大陸の国から輸入したんじゃ。」
「西の大陸だと・・・この聖大陸の更に砂漠を超えた西の方の大陸があると聞いた事があるが、そんな国から輸入しているのか?さっきからの調味料でも思ったんだが。独自の物流でも持っているのか。」
大陳国は20か国の国が群雄割拠している聖大陸の一国だ。元々、聖大陸は千年前に大聖国が統一したのだが、今は乱世の状態だ。
この聖大陸を西に向かって砂漠を超えると、そこには西の大陸があると言われている。とても遠くにある国で交易等はほとんど行われていないと思っていた。
「ああ、やっちょる。この聖大陸の国だけでなく、西の大陸や南の大陸にも支店を持つ商会を運営しちょる。儂の弟子の姜栄一に任しちょるがな。表の顔は、魔道具の製造・販売。裏じゃ、輸出入や儲かる商売は何でもやっちょる。」
「西の大陸だけでなく、南の大陸ともか。それで、物流はどうしているんだ。あんな遠い場所なら物流が大変だろ。」
この世界の物流は全く機能していない。
盗賊や山賊、魔物は徘徊するし、貴族は高い通行税を取る。道も整備されていないので馬車なんて使えない。運べる量が少なく、危険とコストがかかり過ぎるので、この世界の経済は地域での自給自足だ。商売のネックは物流なのだ。
「慶之は、儂の後継者だから教えちゃるが、これは機密情報じゃきー、絶対に誰にも言ったらダメじゃぞ。」
姜馬は口の前に人差し指を立てて、念を押した。
「ああ、分かった。」
「儂らには、物流は必要ないんじゃ。」
「物流が必要ない。じゃ、どうやって物を運ぶんだ。物を運ばなきゃ、輸入も、輸出も出来ないじゃないか。」
「儂らには『移転の扉』があるきー、大丈夫なんじゃ。」
「『移転の扉』?何だそれは。」
「闇属性の空間魔法を利用した魔道具じゃ。『移転の扉』をそれぞれ離れた場所に設置すれば、扉どうしの空間で繋がるんじゃ。だから、他国の支店に繋がっている扉を開けるだけで、物や人の移動ができるんじゃ。どうじゃ、凄いじゃろ。」
姜馬は口角を上げてニヤッと微笑んだ。
「確かに凄いな。この『移転の扉』があれば、物流はいらない。物流を使わないで、人や物の移動が出来れば商売は大儲けだが。確かにあまり表に出せる魔道具じゃないな。」
この魔道具が世の中に知れ渡れば大変な事になる。
少なくとも、姜馬が他国に作った支店はその国から退去させられる。
国の中に、他国と繋がる移転魔法陣の出入口があるという事は、自国の防衛体制の崩壊を意味するからだ。もし他国に繋がる扉があれば、いつでも他国に侵攻が出来てしまう。
「そうじゃ。この扉は、物では無く人の移動に使っちょる。まぁ、貴重な物や特別な物を運ぶ場合もあるが、滅多には使わないようにしちょるよ。」
「そうか、それが無難だな。それで、その商会の名は何て言うんだ。」
「『亀山社中』じゃ。聞いたことがあるじゃろ。」
姜馬の言う通り、良く知っている商会の名前だった。というか、この聖大陸で一番大きいと言われている商会だ。知らないわけが無い。
「ああ、知っているよ。楊家領にも支店があったからな。あの店の名は姜馬が考えたんだろ。」
「そうじゃ。儂には思いのある名前じゃ。」
確か、坂本龍馬が長崎に作った商会の名が『亀山社中』だった。
楊家領内で、あの名前の看板を始めて見た時、この世界では聞かない名前だと違和感を持っていた。俺以外にも、この異世界にきた日本人がいるんじゃないかと思ったのを覚えている。
案の定、あの店の名前は異世界人が考えたという事で正しかった。
「それにしても、あの『亀山社中』が姜馬の傘下だったとは驚いたな。」
親父殿が『あの商会には手をだすな』と言っていたくらいの力のある商会だ。
あの商会なら、一国の収入に匹敵するくらいの資金は保有しているだろう。
「まぁ、儂の魔法の知識、それに前世の記憶、あとこの里の子供たちの工夫で大きくなった商会じゃ。儂の商会でしか作れない魔道具はたくさんあるきー。それに、隠れて世界中の『移転の扉』を使えば、金なんて稼ぎ放題じゃ。そういう事で、蔡辺境伯と戦争をする時の資金は気にせんでええからのう。」
改めて、姜馬の力を思い知った。
魔力や魔法の知識だけじゃない。これだけの商会を持っているとは思わなかった。
* * *
宴会のような食事が終わり、里の者も挨拶をして姜馬の館から帰っていった。
残っているのは桜花を始めとした数人が後片付けをしている者くらいだ。
「慶之、風呂に行くぜよ。」
俺もそろそろ、宴会場から退散しようと思っていた所で姜馬から声をかけられた。
「ふ、風呂か。この館には風呂があるのか。」
楊公爵家にも風呂はあったが、俺は使ったことが無い。
客人が来た時に使うぐらいで風呂は滅多に利用しない。それだけ、風呂はこの世界ではぜいたく品であった。
「ああ、あるぜよ。それも儂の自慢の天然かけ流しの温泉じゃ。これだけの風呂は、前世でも、そうお目に罹れない自慢の風呂ぜよ。」
姜馬は嬉しそうに俺を風呂に誘った。
「入る。風呂に入りたい。」
昨日から蔡家の兵士に追われて死ぬ思いで逃げ回り、体中が垢だらけだ。
それに疲れた。風呂に入って体を休められれば、疲れも取れるだろう。
「それじゃ、行くぜよ。付いてくるのじゃ。」
姜馬はそう言うと、辛そうに体を立ち上がった。
体が弱っているのが良く分かる。前世では80歳でも皆元気だが、この世界の平均寿命は50歳台の前半だ。相当無理をしているのだろう。俺が姜馬の体を支えて、脱衣所に連れて行った。
風呂場の扉を開けると、そこには贅沢な檜風呂の温泉があった。
この異世界に、これだけ立派な温泉を作るとは驚きだ。姜馬の風呂への情熱を感じる。その情熱は同じ日本人としては共感できる。
俺と姜馬は2人だけで、お湯で体を流して温泉に浸かった。
「ふう、それにしても、いい湯だな。」
15年ぶりの風呂だ。適温でぬめりのある湯だ。
今までの疲れが洗い流され、今までの苦労を忘れてリラックスできる。
このまま現実逃避をしたくなり程に、本当に気持ちが良い。
「そうか、そうか。気持ちええか。この湯は疲労回復に効くからの。良く疲れよ、慶之。」
姜馬は疲れないように、湯につかるのを腰の所までにしていた。
「そうだ、姜馬。聞きたかったんだが、姜馬がこの世界に来たのは転生か?」
「転生?ああ、この世界で生まれ変わったという事か。そうじゃ、儂は転生じゃ。前世で儂は殺されたんじゃ。刀で頭をガツンとやられての。目が覚めたら、この世界の赤ん坊で生まれ変わっちょったからの。」
「刀でガツンか。姜馬のいた時代はずいぶん物騒だったんだな。姜馬が死んだ時代って。いつの頃なんだ?」
「確か、『船中八策』を考えた後だから・・、慶王3年頃かの。」
「慶王3年、明治時代か。」
「なんじゃ、その明治時代ちゅうもんは。」
「明治時代を知らないのか。という事はその前だな・・・、じゃ、江戸時代か。」
「まぁ、政権が天皇に返還される寸前やったきの。まだ、徳川幕府の時代じゃった。」
「そうか。じゃ、大政奉還の前か。大政奉還は・・・1867年か。俺が死んだのは、2030年だから。俺が死ぬ163年前に姜馬は死んだんだな。」
「ほう、そうなのか、儂と慶之じゃ、年齢は65歳しか変わらんが、死んだ年は163年も変わるがか。不思議じゃのう。」
姜馬は右手で顎を触りながら首を傾げていた。
「前世の地球の時間軸と、この世界の時間軸はあまり関係なさそうだな。」
今の話だと、前世の時間の流れは、こっちの世界の時間の流れとは同じでは無いようだ。もしくは、転生する時代は前世とこっちの世界で全く関係ないのかもしれない。対象が俺と姜馬の2人しかいないので検証は無理である。
「それじゃ、慶之。おまんは徳川幕府の政権は天皇陛下に返上されたか知ちゅうか。」
「ああ。知っている。無事に返上されたぞ。」
俺の話を聞くと、姜馬の表情は嬉しそうになった。
「そうか・・・、『船中八策』は成ったか。志半ばで死んでしもうたけんど、良かった。それで、勝先生や、慶喜公はどうなったんじゃ。」
「今、姜馬が言って人の名前は勝海舟と、徳川慶喜のことか?」
「そうじゃ!163年後に生きていたおまんが、慶喜公や勝先生の名を知っとんのか。・・・さすがに2人は有名人じゃ。それで、2人はどうなったのじゃ。」
「どうなったって・・・、確か、天寿を全うしたはず。」
「そうか、良かった、ほんに良かった。平和に暮らしたか。これで、あっちの世界のあの世でも勝さんに安心して会えるぜよ。あとはこっちの世界だけじゃが。」
嬉しそうに相好を崩して喜んでいた。
姜馬から聞いた2人の人物の名を聞いて、俺はふとある人物の名前が浮かんだ。
「姜馬、もしかして、お前の前世の名前って・・・、坂本竜馬じゃないのか。」
本人かどうかは分からないが、その時代の人間に間違いないだろう。
「そうじゃ。なんで慶之が儂の名をしっちょるんだ。慶之が言う通り、儂の前世の名は、坂本竜馬ちゅう、勤王志士をしちょった男ぜよ。」
「そ、そうなのか・・・。」
俺は、白髪頭の老人である姜馬をまじまじと見た。
(本当にこの姜馬が、あの坂本龍馬とか・・・マジ有り得ねえ。歴史上の超大物じゃないか。坂本龍馬に会ったとか言ったら、前世の友達に自慢できるな。その前に信じておらえないか。というか、この世界で前世の事を考えても意味がないな。)
それにしても、姜馬が坂本龍馬とは恐れ入った。
「慶之。おまんは前世では何をしちょったんじゃ。」
一般人の俺が坂本龍馬に自分の素性を話すのは、おこがましいが・・・。
「俺か、まぁ、ただの医者だ。」
「医者か・・・蘭学か、それとも漢方の医者か。」
「そうだな・・・まぁ、どちらかと言えば蘭学の方だ。」
「そうか、蘭学医か。凄いの・・・象山先生も、蘭学はこれからの時代に必要じゃと言っちょった。そうか・・・蘭学の医師か。凄いの、慶之は。」
「いやいや、姜馬。坂本龍馬に褒められても嫌味にか聞こえないぞ。坂本龍馬は薩長同盟を成功させたり、船中八策の検索や、それに海援隊を作って貿易を始めたり、歴史を動かした人物じゃないか。」
「慶之、それは買い被りぜよ。儂は大した人物じゃ無いきに。ただの勤王志士じゃ。しかも、盟友の武市半平太も救えなかった弱き志士じゃ。慶之は儂が薩長連合を成功させたちゅう言ってくれたが、それは儂の力やない。薩長連合を成功させたのは薩摩の西郷と長州の桂が成し遂げたもんじゃ。船中八策も世に出る前に儂は死んでしもうた。結局、儂は走り回っただけじゃ。じゃが、医者は違う。人の命を救うたという実績がある。何人の命を救ったかは知らんが、少なくとも何十人、何百人の人を慶之が救ったんじゃ。儂とは重みが違うぜよ。」
姜馬は昔を思い出すように悲しそうに話した。
有名人の坂本龍馬に医者は『人を救う仕事』と言われると少し照れる。
この世界に医者という呼称は無い。
なぜなら、この世界に医療がないからだ。
この世界の怪我は治癒魔法か回復薬で直す。それで治らなければ死ぬだけだ。
だが、姜馬はこの里の中で医療をしっかり普及させていた。それは、傷だらけの俺を救った桜花の治療で分かる。この世界には消毒という概念すらないが、桜花はちゃんと俺の傷の治療に消毒を行っていた。
「まあ、直ぐに死んで、医師として働いた期間は短かったんだけど。」
医師になると直ぐに交通事故で死んでしまったので、あまり人を救っていない。
俺は自分の人生について姜馬に話した。貧しい子供の頃や姉の事など、姜馬は黙って俺の話を聞いてくれた。
「そうか、姉達に恩返しができなかった気持ちは儂にも良く分かるのう。儂も、千鶴姉や、栄姉、乙女姉に恩返しができずに死んでしもうたからの・・・、それに、お龍さんや、さだ子さんにも別れの言葉も言えんかったの・・・。」
その場が重くなると、姜馬は「パシャン」と水を自分の頬にかけた。
「まぁ、前世のことはこれくらいで良いじゃろ。これから、この世界を変えにゃいかん。もう、儂は成すことを成さずに死んで後悔はしたくないきに。」
「後悔・・・。」
「そうじゃ、儂は、日ノ本の激動の大事な時に死んでしもうた。しかも恩を受けた人たちにも恩を返せずに死んだんじゃ。儂は同じ間違いを繰り返したくないきー。残り少ない人生を『成すべき事を成す』為に費やすんじゃ。」
「成すべき事か・・・、姜馬にとって成すべき事は何なんだ。」
「儂にとっての『成すべき事』か・・・それは『復讐』じゃな。」
姜馬の言葉に俺は驚いた。
「えっ、姜馬も『復讐』・・・。姜馬にも復讐をする相手がいたのか。」
「ああ、いるぜよ、儂にも復讐相手が。儂が人生の半分の時間をその『復讐』を果たす為に費やしてきた。慶之の復讐に手を貸すと決めたのも、それが儂の『復讐』に繋がるからじゃ。だから、儂が築いたきた全てを慶之の『復讐』につぎ込むと覚悟を決めたんじゃ。儂の『復讐』と、『儂の成すべき事』はおまんの『復讐』を成すことにより成就されるんじゃ。」
姜馬は真剣な表情をして話した後、少し熱が入ったのか、のぼせない様に風呂桶の外に体を移した。
「俺は、姜馬の願い俺が敵える交換条件で、姜馬は俺の復讐(蔡辺境伯との戦争)に手を貸してくれたと思っていたが・・・。俺の復讐が姜馬の復讐に繋がると言っていたが、もしかして姜馬の復讐の相手は蔡辺境伯か。」
「それは違う。儂の復讐相手は蔡辺境伯じゃないぜよ。なかなか言っても理解できんかもしれんが・・・儂の復讐の相手は、この異世界じゃ。儂から大事な物を奪った者たちへの復讐をせにゃいかんのじゃ。」
(復讐相手が、この異世界・・・。確かに言っている意味が分からない。)
「姜馬、すまん。確かに今の言葉だけでは、姜馬の復讐の相手は誰なのか理解できない。もう少し分かるように教えてくれるか。」
「まぁ、そうじゃろうな。おれじゃ、ちっくと長湯になるが、儂の話を聞いてくれるかの。儂がこの異世界に転生する前から、復讐を決意するまでの話じゃ。」
そう言うと、姜馬は自分のこの世界での生立ちを日本語で話し始めた。
この世界に転生する80年以上前の話じゃ。
儂は、中岡と、近江屋に泊まっちょった。
部屋で酒を飲んどると、突然、黒づくめの侍達が部屋に入ってきて、上段からの一刀を儂に喰らわせたぜよ。儂は北辰一刀流の免許皆伝じゃが、あの日は寒うて、どてらを着こんで、火鉢に当たっとったんじゃ。ちくと油断し過ぎていたかのう。
そんで、気がつくと、儂はこん世界に、生まれ変わっちょった。
ほんにたまげたぜよ。
そんでもって当然、異世界人の儂は慶之と同じように魔法は使えんかった。
生まれは、貧しい農村だったが、おとんも、おかんも優しく接してくれたぜよ。
貧しいが、儂に愛情を注いで、一所懸命に育ててくれたのがよう分かった。
儂は前世では、波乱万丈な人生を送ったきに、こん世界では、ほんに農民の子供として、ありふれた一生を送るもんやと思うちょったぜよ。
けんど、この世界は、俺が平凡な人生を歩む事さー、許してくれんかった。
儂が暮らす村の貴族の領主がとんでもなえー奴だったぜよ。
今、思うと、この世界の貴族としては普通やったかもしれんが。前世の知識を持った儂には悪徳領主にしか見えんかった。
あの領主と比べたら、儂の幼馴染の武市半平太を殺した容堂公が聖人に見えるほどに、げに酷い男やった。
毎年、厳しい年貢の取立てがあり、不作による飢餓、魔物の襲撃、盗賊らにも襲われたけんど、儂の両親は何とか耐えて、暮らしちょった。
貧しゅうて食べる物は、いつも『始祖芋』じゃったきの。『始祖芋』はえらい不味いが、採っても、採っても直ぐにたくさん何処にでも生えちゅーき。儂の子供の頃は、あの始祖芋しか食べた記憶がなかったの。
まぁ、苦しいちゅーても、優しい両親の下で、慎ましい暮らしを送っちょったんじゃ。
その慎ましい暮らしすらも出来んようになったのは、悪徳領主が死んで、更に悪徳の輪をかけた息子に代替わりした時かの。
あの息子は、げに酷かったきの。
今までも収穫の8割ばあ、税で持っていかれて、残った2割の収穫と、農閑期に作った作物を売ったりしてなんとか生活しちょったんじゃ。
それが、代替わりした息子に、税を9割に引き上げられ、税の支払いが遅れると、家を荒らされて、種もみすら奪うていっちょったんじゃ。
両親は新しい領主に、いつかは奴隷にさせられるちぃー思うちょった。両親だけでのう、村民全員が同じように思うちょった。
そこで、村民全員で貴族の領地から逃げて、他の土地に移ろうと考えたのじゃ。
だが、それを知った新しい領主は激怒し、村を兵士で囲ました後で火を放ち、村の大人全員を殺し、村民の子供たちは奴隷として売り払うてしもうたがじゃ。
殺された大人の中に儂の両親も入っておったし、奴隷された子供の中には儂も入っていたぜよ。
その頃の儂は、まだ10歳じゃ。貴族に親を殺され、奴隷として今度は他の貴族に売られたのじゃ。
『奴隷の首輪』を首に付けられた時は、本当のこの世の終わり思うた。
首輪を外す事はできん。無理に外したら、首輪の魔術で首が締まってしまうかの。
そして、売られた先の貴族も非情な人間やった。
この世界の貴族は、げに領民や奴隷を人間と見ちょらんきの。
広大な土地をたくさんの奴隷が開墾させて、広げた開拓地を農民に貸し付け、年貢と地代として、収穫の8割を納めさせちょった。
そして収穫の小麦を売った収入で、再び奴隷を買い、開墾させて農地を拡大させていく。
毎年、耕作地は拡げ、年貢や地代の収入が増えて経済力が増していく。今、思うたら結構やり手の貴族やったようじゃ。
儂は、毎日、毎日、朝から晩までこき使われたぜよ。
荒地の石を運んで、ちっくとでも休むと、鞭で叩かれた。それでも初めは子供やったき、まだ力仕事は多うなかった。
たいした食糧は与えられんかったが、体だけは大きうなった。そんで、成長していくと力仕事が多うなり、鞭で叩かれる数が増えたぜよ。
周りの奴隷も、多くが鞭で叩かれて血を流しもっても、黙って働いちょった。
げに地獄のような所じゃ。
あの時も、この世界を呪うたの。
親が死んだ時も、奴隷の首輪を嵌められた時も、この世界を呪ったぜよ。
夢も、希望もない。早う死にたい思うたけんど、人間なかなか死ねんものじゃ。
独房に入れられて死ぬのが、本当に怖かった。
酷い病気になったり、領主の貴族に反抗したりする奴隷を押し込める独房があったのじゃ。
病気は他の奴隷にも伝染するきの。
その独房に入れて、他の奴隷に移らんように隔離するんじゃ。
だが、一度独房に入ったら、ほとんどの奴隷が戻ってこんかった。
あっこに入ったら、飯も与えられずに痩せ細って死ぬる言われたものじゃ。
皆、独房に入れられるのが嫌で、血を流しても黙って働いたぜよ。
あの貴族は、奴隷を使うだけ使うて、使えんようになったら捨てるぜよ。そして新しい奴隷に取り換えて、同じようにすり減らすまで使い続けるんじゃ。
今、思うと、クズのような男じゃ。
あの貴族の下で5年も生きちゅー奴隷はおらん言われるほど厳しかった。
そして、あの貴族は、奴隷だけでのうて領民にも厳しかった。
奴隷によって開墾した農地が増え、領民が耕す面積をどんどん増やしていったけんど、領民の生活はちっとも良うならんかったぜよ。
税と新たな土地の地代で、収穫のほとんどを持ってかられ、翌年は今まで以上の面積の土地を耕すように貴族に命令される。
領民は疲弊しておったのじゃ。
あの貴族は、奴隷だけでのう、領民も物として見ちょたからの。
奴隷は費用がかかるが、死んでも替えが効く物で、領民は費用がかからないが壊すと替えが効かん物と思う感覚やったのやろう。
遂に、領民たちの怒りが沸点に達したがは、領主の子供が結婚の時やったかの。
貴族の兵士が村を回って、息子の結婚を祝うき祝儀として『祝い税』を払えと触れをだした時じゃ。
普通の貴族の結婚式は、貴族が子供らあの結婚を祝う為に、領民に食べ物を振舞うが普通ぜよ、あの貴族は、物入りやき『祝い税』を払えと領民たちに強要したのじゃ。
領民たちは怒ったぜよ。
その怒りは領地中の町や村に伝播し、遂に反乱を興す気運までに膨らんだ。
だが、普通は反乱さあ興さず、儂の両親の村のように貴族の領地から逃げるのが常識ぜよ。
反乱を興したち、鎧騎士を持っちゅー貴族には敵わんきの。
鎧騎士1騎で、いくつもの村の反乱を容易に壊滅させるだけの力がある。殺されるがが分かっちゅーのに、反乱さあ起こす者はおらん。
だが、領民たちには切り札があったのじゃ。
それは、その貴族の抱える鎧騎士の半分以上が、領民たちの身内やったことや。
普通の貴族は、鎧を操縦する騎士に領民の者を採用せん。
鎧騎士は最大戦力やき、先祖代々から仕える譜代の家臣が登用されるんや。鎧騎士は特級魔力以上の魔力を持っとらんと機動させられんきの。
だが、あの貴族は経済力だけで先代が一代で成り上がった家じゃ。
最大戦力である鎧の数を増やしたんじゃが、譜代の家臣が少なかった。鎧騎士を操縦する騎士までは、一気に増やせんかったのじゃ。
操縦する騎士がおらんかったら、鎧騎士はただの飾り物じゃ。じゃけんど鎧騎士は特級以上の魔力を持つ騎士にしか操縦が出来ん。
そんで特級以上の魔力を持った譜代の家臣で騎士の人数を賄えん分が、特級以上の魔力を持った平民なら集められたのじゃ。貴族ほどじゃないが、平民にも少ない割合だが魔力を持った者はおったからの。
平民の中で魔力を持った若者たちで、鎧騎士の騎士の人数をまかなったのじゃ。
騎士に抜擢された若者は喜んだぜよ。突然、平民から騎士に抜擢されたからな。そりゃ、喜ぶぜよ。だが、その喜びは始めだけやった。
あの貴族の家臣団には、平民が騎士になるがを快う思わん者がたくさんおった。
平民でも魔力があったら、誇り高き騎士になれてしもうたがじゃ。従来からの陪臣たちは騎士の誇りが傷つけられたと平民出身の騎士に嫌がらせをしたんじゃ。
先輩の譜代の騎士が平民出の騎士を暴力を振ったりして虐めたんじゃ。
平民出の騎士たちも黙っちゃあせん。お互いに派閥を作り、ぶつかり始める。初めはたいしたことはのうても、次第にエスカレートしていく。
まぁ、土佐潘の上士と下士(かし)のようなもんじゃ。
どの世界でも、特権階級は自分を守る身内をかわいがるもんやきー。
そがな険悪な状況の中、貴族の領主は当然のように譜代の騎士の片棒を持った。
平民出の騎士達の怒りも沸点まで上がっちょった。
そして家族の身内から、領民の反乱の話を聞くと、平民出の騎士は領民の反乱に加わったんじゃ。鎧騎士が味方についたら、領民も怖いものなど無いき。
一斉に蜂起した領民たちの反乱は上手くいった。
貴族は城内から反乱側の鎧騎士の奇襲を受けたんじゃ。
譜代の騎士が鎧騎士に搭乗する時間も与えられんで、反撃もできずに貴族軍は完敗した。その貴族の一族は見つけ出されて皆殺しにされた。
「ええ気味じゃ」
城内からの裏切り者がでた貴族の城は簡単に陥落したんじゃ。
儂は反乱のどさくさに紛れて、『奴隷の首輪』の鍵を奪い獲って逃げる事に成功したぜよ。
他の奴隷も儂と同じように一斉に逃げた。
その時、城に侵入した領民に捕まりそうな女奴隷がおっての。成り行きで、その奴隷を助けて一緒に逃げたがじゃ。
反乱を興した領民たちは、貴族の財産を奪おうと必死やった。城の中を、隅々まで荒し回っちょったきの。奴隷も貴族の家宝の一部やき、奪おうとしたんじゃ。
その女奴隷は特別に仲がええわけも無かったけんど、同じ人間を物としか見ん奴らが許せんかったきな。
気が付いたら、その女奴隷の手を引いて逃げちょったのじゃ。
だが、奴隷2人で逃げても、安心して暮らせる場所なんか無かった。
ただ、始祖芋はどこにでも生えちゅーたんで、飢え死にする事だけは免れた。
2人は貴族や野盗、魔物から逃げて旅をしたんじゃ。
見つからんように昼間は休んで夜に移動したがじゃ。
わし達を狙うがは貴族だけでない。
野盗に見つかったら、捕まって、また奴隷として売られる。
魔物なら喰われても終わりぜよ。
本当に惨めじゃった。
前世では、薩長同盟を成し、海援隊を作り、大政奉還のキッカケを作ったと言われた坂本龍馬が、貴族や野盗や魔物に襲われんように震えておった。
それが現実じゃ。
前世は、人にも、運にも恵まれておったんじゃ。
所詮、坂本竜馬ちゅう男の力なんて、こんなもんじゃった。
儂らは弱者や。この世界では強者の獲物でしかないんや。
別に悪い事をしたわけでも無いが、弱者は1日、1日を恐怖に震えて逃げるしかないがじゃ。それがこの世界や。
せめて、この女奴隷だけは助けてやりたかった。
そして、儂たちは長い旅をして、
ようやくある森の近くに住み処(か)を見つけた。
その場所は、魔物の森に近うて、貴族や野盗が近づかん場所じゃった。
『魔物の領域』からも微妙に離れちゅうし、魔物が来ない場所やった。
魔物達は、主に魔物の迷宮や、森、谷の『魔物の領域』で暮らしちゅー。
『魔物の領域』には魔力溜(だまり)りがあって、高濃度の魔力が供給されている場所じゃ、魔物はめったに魔力溜りの近くから離れるちゅーことは無かった。
魔物にとって、魔力溜から離れると、魔力供給が受けられんだけでなく、他の魔物からの魔力溜を奪われる危険が発生するからの。
魔物の本能が、魔物の領域から離れる事を許さんのじゃ。
その意味では、この場所は、貴族や野盗が近寄る可能性も少のうて、『魔物の領域』から微妙に離れた絶好の場所じゃった。
儂と女奴隷は、この場所で住む事を決めた。
魔物に襲われん範囲内まで森に入って、食べられる野草や茸を見つけたり、獣を捕まえたりして暮らすことにした。
一緒にいた女奴隷は『恵蘭(けいらん)』という名だった。
美しい女性では無かったけんど、それに無口で怖がりだが、儂だけには心を開いてくれた。
そして儂の事を兄のように慕うてくれた。
暫くすると、儂は恵蘭と結婚した。
そして2人の女の子を授かった。
2人の名は、前世の姉の乙女姉さんと、栄姉さんからもらった。
長女が姜乙女で、二女が姜栄じゃ。
前世でも、儂は子がおらんじゃったきに、初めてのわが子じゃった。
ほんまに可愛かったぜよ。
4人の生活は、森で魔物に見つからんよう、狩猟を行ったり、山菜を獲ったり、炭を作ったりもしたんじゃ。
魔物の気配を感じる時は緊張するが、魔物は襲って来んかった。
魔物の気配や貴族に怯えてはいたが、子供の顔を見ると辛さ忘れた。両親を亡くしてから、やっと人間らしい生活ができたと思った時間じゃった。
森で獲れた毛皮や炭がたまると、近くの村で売って現金や食料に替えておった。
特に寒くなる前は、毛皮や炭は金になった。
近くの村で、毛皮が高う売れた時には、お土産に小麦で作った「紙焼」を時々買うて帰ると、子供たちが本当に喜んじょった。
豊かな暮らしではなかったが、儂の人生の中で、げに一番幸せな時間やった。
だが、そがな幸せな時間は長うは続かなかった。
その日は、寒くなる前の秋の終わり頃やったかの。
儂はいつものように村に毛皮や炭を売りに行っちょった。
冬が近いせいか、運んだ毛皮や炭は直ぐに売れたぜよ。いつものように、お土産の「紙焼」を買って家に向かったんやけど、家に近づくと、家の周りの防御の柵が壊されちゅーのが目に入った。
走って、家に向かうと、地面に大きな足跡があった。
嫌な予感がした。
「恵蘭。乙女。栄。」
大声で3人の名を呼んだ。
焦って家の中に入り、3人を探したぜよ。
だが、目に映ったのは血の海やった。
赤い血が家のそこら中に飛び散っちょった。
魔物が、儂の家族を襲うたがじゃ。
この辺りには、魔物の領域から離れちゅーき、魔物が来るはずは無いとタカをくくっちょった。
領域が広がったがか、魔物の主の統制からはぐれた魔物かは分からん。
とにかく、魔物が儂の家族を殺したことしか分からんかった。
儂が甘かったがじゃ。
必死で、妻の恵蘭や子供達を探いたけんど、見つけられなかった。
死骸さえも見当たらなかった。
唯一、見に入ったがは、大きな骨とこんまい骨だけが転がっちょった。
儂は半狂乱となり、魔物を殺いて妻や子供たちの復讐しょうと誓うた。
その時やな。
儂が『復讐』を・・・、この異世界に復讐しちゃると考えたがは。
魔物だけじゃない。貴族やこの世界の強者をことごとく殺して、この世界を変えちゃると誓うたがじゃ。
だが、その時の儂には力が無いき、ただの弱者の遠吠えにしか過ぎんかった。
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