第50話 捜査

【RIME】


リコ: よっ。


リコ: 久しぶりに誰にメッセージを送るなんで、なんだか新鮮だね。


リコ: 前回ごめんな、ついあいつに腹が立ってしまって。結局、みんなが気まずい雰囲気で帰っちゃった。


リコ: 前に言いそびれたけど、羊羹ありがとう、とても美味しかった。


リコ: でも、他人の羊羹を食べるのはやっぱりよくないと思う。


リコ: ちゃんと謝っておくんだよ、名前は何だっけ、京香だよね。


リコ: 家族を大切に。


サヨ: 忠告ありがとう。


サヨ: それより、君の方はどう? 捜査の進捗は?


リコ: スターリーアイズの件だね。少し手がかりが見つかった。


リコ: 時間があるなら、この場所を見に来てみ。


リコ: 郊外の廃墟。


リコ: https://maps.app.yoo.cl/kjupf12VBSNGuxSEA


リコ: 多分、スターリーアイズが残した痕跡だ。何か見つかるかもしれない。


サヨ: わかった。見てくる。私はその辺で怪人を狩っている。


サヨ: それと、前回のあの二人の怪人の足取りは?


リコ: ない。


リコ: どこに消えたかわからない。


リコ: あんたも気をつけて。


サヨ: 了解。


リコ: ついでに言っておくけど、あの槍を振り回す駄犬には気をつけて。


リコ: 目を見れば分かる、奴はあんたの体を狙っているんだ。


リコ: マジ気をつけろ。


サヨ: ...善処する。



「気になることを言うね。」


リコシェからのメッセージに眉をひそめながら、私は地面に倒れている怪人に足を蹴り入れた。一声うめき声が上がり、その怪人の頭は私の動作により粉々に砕け散った。


私がナイフを抜き、剥ぎ取り作業を始める。


鎧の改造や修理のため、素材集めを急がなければならない。怪人の出現頻度しゅつげんひんどが減少したことは良いことのように見えるが、私には何となく嫌な予感がする。できるだけ早く準備を整えておく必要がある。


黙々と作業を進めていると、私の作業を見守っている金属製の小鳥、Qが突然話し始めた。


「ねえ、ちょっと聞いていい?」


「何?」


「あなた、リコシェって子と連絡先を交換したの?」


「ん?ああ、そうだ。あの子は万事屋みたいなもんで、ちょっと頼んでおいたことがあるんだ。スターリーアイズの居場所を探してもらってるし、前に出会ったあの二人のA級怪人にも注意してもらってる。連絡先があった方が便利だから。」


「ふーん?私がいない間に親しくなったの?」


「まあね。」


「前にはあなたを捕まえて賞金を得ようとしてたのに、どうして突然そんなに親しくなれるの?」


「いろいろあってね。どう言ったらいいかな、彼女もそんなに嫌な奴じゃない。ただ価値観かちかんがちょっと…功利的こうりてきだけどね。」


Qは不満そうなぶつぶつを漏らしていた。


「前回スノーランスがうちの店を見つけた時もそうだったけど、相手がかわいいからってまた警戒心を緩めてない?だらしない。前にボーッとしてたのも、女の子たちとイチャイチャすることを妄想してたんでしょ。私の羊羹まで使って彼女たちを喜ばせようとしたんだから。」


「ごっめん。あの時は本当に怖かったよ。あの羊羹がなかったら、抜け出せなかったかもしれない。だから約束通り、二倍の量を買って補償するよ。」


その時のことを思い出すと、思わず身震いがした。剥ぎ取り作業を終えた私は、携帯で指示された場所を確認した。


それは広々とした空地だった。


元々そうであったというよりは、何かによって無理やり作られたような広場。その場所を見ると、そんな感じがしてくる。


廃墟となった建物群が不自然に大きく欠けており、円形の空地を形成しているかのようだった。突然大爆発があったか、突如現れたブラックホールが建物を飲み込んだかのようにも思える。それほど不自然な景色だった。


地面を撫でてみる。地面は砂利ざりで覆われており、その中には怪人の残骸のような黒い粉も混じっていた。


「なるほど、ここで誰かが怪人と戦ったんだな。しかも、かなりの数。この状況を作り出せるのは、スターリーアイズ以外に考えられない。」


「ブレイズエッジの可能性は?」


Qの質問に、私は首を横に振った。


「その可能性は低いと思う。ブレイズエッジの活動範囲かつどうはんい都市部としぶ に集中している。それに、ブレイズエッジだったら焼け焦げたり溶けたりする痕跡がはっきり残るはずだけど、ここはまるで何かに打ち砕かれたようだ。」


「なるほど。」


「怪人の残骸が速く劣化することを考えると、ここにこの程度の怪人の粉が残っているということは、戦闘が起こったのはつい最近のことだろう。リコシェからの情報は確かに役立った。スターリーアイズが最近ここにいた可能性が高い。ただ、その後の行方はわからないな。」


「調査を続けるか?」


「いや、とにかく先にスノーランスに報告しよう。魔法省の方は何とかしてくれるだろう。私が一人で調査を進めて、本当にスターリーアイズと遭遇したら、また戦いになりかねないからね。」


「それもそうね。」


...


【RIME】


サヨ: 手がかりが見つけた。


サヨ: https://maps.app.yoo.cl/kjupf12VBSNGuxSEA


ユキ: ありがとう、助かります。


ユキ: こちらで早急に人を派遣して調査させます。


ユキ: でも早いね、もう少し時間がかかると思ってた。


サヨ: 私には私なりの方法と人脈があるから。


ユキ: へえ、さすがサヨさん。


ユキ: ところで、前回はごめんなさいね。ついあのメス猫に腹を立てて、みんなが気まずくなっちゃった。


ユキ: あなたが親切にも羊羹をごちそうしてくれたのに。


ユキ: でもダメだよ、許可なく他人の物を使っておもてなしするのはね。


ユキ: 京香さんにはちゃんと謝っておいてね。


ユキ: そして、あの紫のメス猫のこと。


ユキ: あいつの目を見れば分かる、絶対にサヨさんのことを狙ってるから。


ユキ: 気をつけてね。


サヨ: ...善処する。


...


「やれやれ。」


メッセージを見て、私は思わず苦笑いした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る