第23話 戦いに備える
G.ラポスと対戦した数回の過程から、自分が決定的な攻撃手段を欠いていることに気づいた。
私が他の魔法少女たちとは違う。スノーランスは爆発力を持ち、スターリーアイズは遠距離の飽和攻撃を持ち、ブレイズエッジ は突破力を持っている。正面攻撃手段が欠如している私にとって、打撃能力を強化するには変身後の体の強化と、錬金がもたらす手段に頼るしかない。
避けられない状況に対処するためには、やはりより強力な戦闘能力が必要だ。
この時は身体の強化に頼る必要がある。強化倍率は固定されているが、それは原始的な体能が強ければ強化後の結果も強いということでもある。
まあ、鍛錬が有効ということだ。
もちろん、普通のトレーニングに加えて、ちょっとした工夫を凝らしている。私は自分の右手の装備を見る。
それは黒いガントレットだ。いや、単に黒いガントレットと言うにはあまりにもシンプルすぎる。そのガントレットには、黒くて昆虫のような殻があり、継ぎ目からは緑色の下層部が透けて見える。さらに動力を供給するためにいくつかの管線が取り付けられている。全体として、甲虫の特徴を金属の手甲に融合させたような外観だ。
私は全身をねじり、拳に力を集中させる。気動音と共に、サンドバッグに重い一撃を打ち込むと、鈍い音が響いた。
サンドバッグが完全に元の位置に戻るのを待たず、私は体を回転させ、横蹴りを加えた。
サンドバッグを吊るす鉄鎖がキシキシと音を立てた。
私は、パイルバンカーを握っているG.ラポスを想像した。
深呼吸をして、私はサンドバッグにノンストップの連打を加えた。体全体を左右に振り、重量と慣性を利用して拳脚をサンドバッグにぶつける。ドスンドスンという重い音が地下室に響き渡った。数滴の汗が目に入り、目が痛くなった。私は痛みを無視して、歯を食いしばって攻撃を続けた。
肺の最後の空気を吐き出しながら、私は右のストレートパンチを振り抜いた。カンッという音がして、サンドバッグを吊るす金具が外れた。サンドバッグは少し飛んで、壁にぶつかった。
「フー…」
全身から蒸気が立ち上る感触を感じながら、私は呼吸を整えなおした。
「シンクロ率がいまいちだな。」
ガントレットを右手から外して、作業台に置いた。工具を取り出し、分解する。内部は先ほどの使用に耐えられず、いくつかの部品が緩んで脆くなっており、黒い粒子が漂っていた。
眉をひそめながら、隣の冷蔵庫から一袋のものを取り出した。透明の袋の中には、生物的ながらも異様な黒い光沢を持つ組織が入っている。その怪人から得た素材を錬金術で再形成し、スプリングとして取り付けた。
汗を流しながら作業をしていると、冷たい水の缶が、熱を持った私の頬に当てられた。
「お疲れ様。」
Qが水とタオルを差し出してきた。
「助かる。ありがとう。」
「ごめんね。前回、あの怪人が現れたときに、あなたのそばで助けられなかったことを。」
「大丈夫。君が妖精界から持ち帰ってくれたいくつかの本のおかげで、私は解決策を見つけることができたんだ。妖精界の技術理論はさすがで、研究する価値があると思う。」
「そう。助けになってうれしい。」
「ああ。でも、完成させるにはまだいくつかの材料が必要で、エネルギーの持続性の問題も完全に解決できていない。それは試作品に過ぎないということだ。実戦で使うには短期決戦しかない。」
私は汗を拭きながら、地下室にある緑の蛍光液体で満たされた
「この様子なら、最終決戦に間に合いそうだ。これだけの材料を集めた労力が無駄にならなくて良かった。」
「まあ、これを使えば基礎能力は大幅に上昇するけど、魔法少女にとってはちょっと。美学に合わないというか、これを使うと魔法少女の定義が...」
「何を馬鹿なことを言ってるんだ。私は元々魔法省のお行儀のいい魔法少女じゃない。ちょっと変わった手を使っても構わない。大事なのは勝利を掴むこと。その目的のためなら、見栄えが悪くても気にしない。」
「はぁ。サヨがそう思うなら...」
Qは首を横に振りながら、私のそばに立った。
「この数日、あの怪人からの騒ぎはない。それがかえって不安を感じさせるね。」
「ああ。でも、準備はできている。」
「うまくいけばいいが。」
「ええ。」
培養槽の中で浮かぶものを見て、私は思わず拳を握った。
「そういえば。」
Qは暗い雰囲気を払いのけるかのように、軽く咳払いをした。
「最近は少し緊張しすぎじゃない?適度な休息も必要だよ。近くにいいカフェを見つけたから、一緒に行かない?」
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