第12話 新たに現れた闇

「…輓歌の、姫君?」


Qの驚きの囁きを無視し、私は目の前に現れた人物に注意を向けた。ゆっくりと立ち上がり、手に持った銃でギリギリ息のかかっているゴミ箱の怪人に一撃を与えた。最後の命を失い、ゴミ箱の怪人は悲鳴を上げた後、黒い粉塵に変わった。


「僕の目の前で、一切のためらいもなく怪人を処刑する姿は、さすがの一言だね。まあ、残忍な部分さえも僕は好きになっちゃいそう。」


「君は何者だ?」


「ああ、ごっめん。自分の推しの姿を見て興奮しすぎた。まだ自己紹介もしていないね。」


相手は誇らしげに私に一礼した。


「僕の名前は…そうだ、G.ラポスと呼んでください。身分については…」


相手は考え込むような表情を浮かべた。あっと思いついたように、彼女は手を叩いた。


「さっき君が殺した子と同じで、怪人だ。」


気付いた時には、私の体はもう動き出していた。


手に持ったナイフを相手の頭部に振り下ろした。相手は慌てて身体を後ろに反らせて回避した。目の前の怪人がバランスを取り戻していないのを見て、私は素早く銃を構え、頭部と胸部にそれぞれ2発の弾丸を撃った。


パッと。相手は糸を切った人形のように地面に倒れた。


「気を付けて、サヨ。こいつはおそらくB級以上だよ。油断しないように。」


「分かっている。」


私は銃を倒れている怪人に向けて構えたまま、パイルバンカーをストレージから取り出した。私は慎重に近づいていく。あと一歩のところで、地面の上に突如として扉が現れ、テールコートの怪人を飲み込んだ。


私はすぐパイルバンカーを叩きつけた。しかし、煙が晴れると、割れたような蜘蛛の巣のような地面しか見えなかった。


「危ない危ない。もう少しでバイバイだったよ。」


声の源を見ると、テールコートの怪人が斜め後ろの開いた窓から顔を出していた。彼女は優雅に肩をすくめ、にやりとした表情を浮かべた。


「焦らないで。自己紹介もまだ半分…えっえっ、ちょっと待って、撃たないで!この部屋の中にいる人たちはどうなってもいいの!?」


相手の脅しを無視し、私は相変わらず狙いを定めて射撃した。テールコートの怪人は慌ててしゃがみ込んで避けた。


「待って…!わーお!判断がはやい!本当に容赦ないね!でもそんな君も可愛い!」


相手がしゃがみ込んだ隙に、私は三角跳びのような方法で窓に登った。しかし、相手はもう姿を消していた。


「ちっ。」


「隠れんぼも楽しいけど、そろそろ本題に移りましょう。」


振り返ると、テールコートの怪人は再び小路に戻っていた。こんな風に移動できるなら、たぶん固有能力だろう。ただし原理はまだ不明で、情報が不足。彼女と直接戦うのはリスクが高すぎるが、このような存在を外に出すわけにはいかない。


「僕は時折、他の子たちを通じてこの街を観察している。退屈な魔法少女たちによって、多くの子たちが殺された。退屈な魔法少女による、退屈な死。でも、君だけは違う。初めて君を見たときから、わかっていた。」


怪人は自分の体を抱きしめたまま、私を仰ぎ見て、うっとりとした表情を浮かべました。


「輓歌の姫君、君は特別な存在だ。君のもたらす死の中にしか、音楽を感じることができない。ああ、それはどれほど美しいことだろう。君は僕にとっての光なのだ。安っぽく量産された陳腐な光ではなく、闇の中で燃え盛る焚き火のような光。そして僕たちはその焚き火を包み込む闇なのさ。」


怪人はまるで傑作を披露するかのように両腕を広げた。黒い霧を放ちながら、彼女の後ろには巨大な扉が浮かび上がった。扉の隙間から粗いでかい腕が伸び出し、力強く扉を引き開ける。金属製の扉は悲鳴を上げ、浮彫りされた悪魔たちの顔は苦痛に歪んだ表情を浮かべた。


「闇が深ければ深いほど、君の輝きが際立つ。」


銃を構えて発砲した瞬間、巨大な斧が怪人の前に現れて私の攻撃を遮った。壊れかけの扉から現れたのは、牛の頭を持つ巨人型の怪物だった。その怪物の身長は私の3倍にも及び、漆黒の肌には隆起した筋肉が浮かび上がっている。手には巨大な斧を構え、私に向かって地を揺るがすような轟音の咆哮を放った。


「いつか僕が君によって燃え尽きる柴になると思うと、興奮で心が躍る!」


「燃やされたいと思うなら、間違った相手を選んだよ、変態。」


壁を蹴って窓から飛び出し、ミノタウロス怪人の斧は私がいた場所に命中した。飛び散るコンクリートの破片の中で、私は興奮に赤く染まったテールコート怪人の顔を睨みつけた。


「でも輓歌を聴きたいなら、例外的に一曲歌ってやるよ。」

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