第3話 三角関係の成立①
今日も無駄話の長い講義だった。いくら1コマ90分というルールがあるからと言って、終わりそうだったテーマを変な雑学で引き延ばして無理に時間通りにするのは如何なものか。
「おかえり」
「あ、管理人・・・・・・ん?」
管理人が知らない誰かとお話しをしている。少し背が低くて、ダークブルーの七三分けのミディアムヘアをした女の子だ。
「ああ、今日から201に引っ越してきた
管理人が私に挨拶を促すと、松平さんは少し緊張した幼げな面持ちで私の顔をじっくりと見る。もしかすると、少し人見知りなのかも。
「お隣の馬宿です」
「
「よろしく」
真田さんと毎日話しているからか、言葉遣いが普通に聞こえる(少し違和感があるけど)ことで理解がしやすい。
「幸ちゃんはお出かけ中みたいだから、また帰ってきたら声かけるよ」
「かしこまりました」
真田さんと似た低音ボイスで言葉遣いが丁寧だ。真田さんの時は、名前と素振りだけであの人が真っ先に浮かんだけど、松平さんからは特にそういう気配はない。気にしすぎか。
「あかり殿、ご飯の用意ができたぞ」
「あれ、この鯖の煮込み定食どうしたの?」
「大和殿から教えてもらったのだ。大和殿は腕が達者でな」
つい一週間前に、キャベツの千切りは千本にしてこそ、とか言ってた人が作ったとは思えないくらい立派な鯖の煮込み定食だ。
「何やら新参者がやってきているという話を聞いているのだが、あかり殿は何か知っているか?」
「ああ、松平さんのこと? 今日から私の部屋の隣に住んでいるみたいだけど」
「ほう、お話ししてみたいものだ」
「まだ挨拶してなかったんだ」
「入れ違いになってしまったようでな、間がなかったのだ」
真田さんは松平さんに興味がありそうな顔をしているが、果たして松平さんにこのお嬢さんのペースが体に合うのかどうか。
「ごちそうさま」
自分の部屋に戻ろうと廊下に出ると、買い物帰りであろう大きな袋を2つ持った松平さんと会った。
「こんばんは」
「馬宿さん、こんばんは」
「重くない?」
「いえいえ、これくらいどうってことないです」
「そうだ、真田さんとまだ挨拶してないんだよね?」
「うっ、ちょっと失礼しますぅ・・・・・・」
急に顔色を悪くして、自分の部屋へ逃げてしまった。荷物が柱にぶつかりながらも無理矢理扉が閉められたが、中身は大丈夫なのだろうか。
「あかり殿、一体何があった?」
「あ、真田さん」
騒音を聞きつけた真田さんが、背後から駆け寄ってきた。というか、どうして赤い六文銭はちまきを巻いて薙刀を持ってきているんだ。
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