1.非日常

「……ら…………ソラ!」

赤髪の彼女、月夜つきやあかねが寝ている青年、糸井いといそらを起こす。


昨日、家に入れなかったそらは月夜家に泊まらせてもらっていた。

隣でお腹を出しながら寝ている金髪の人物と。

「ん、おはよぉ……」

目を擦りながら起き上がった彼女は久保くぼ葉月はづき。この三人は幼なじみ、と言うやつだ。

「もー…。そら全然起きないんだけど。」

彼女はなぜかすこし嬉しそうに言う。

「……んう、さきリビング行こ…………。」

そう言った葉月はづきと一緒にあかねがリビングへと向かう。

あかねの両親は仕事で朝早くから居ない。

ので、朝ごはんはあかねが作ってくれているのを二人は食べる。


机の上に置いてある三枚の皿の上にはトーストと目玉焼きがあった。

「ふおおお……!美味しそおおお!」

顔を洗い終わった葉月はづきが、目を輝かせながら言う。


そのタイミングで、ゆっくりとあかねの部屋から出てくる人影があった。


「あ、そら!やっと起きたの?」


そう言った彼女をじっと見つめて、ん、とだけ返事をすると、洗面台へと向かうそら

それをみた二人は笑いながら目を合わせた。


「朝はやっぱり元気ないよね」

「あはは!だよね!」


なんて話をしていた。





その時だった。

日常が、なんてことの無い日常が、非日常へと変わったのは。





大きな警報音が外から鳴り響く。

耳をつんざくような、ひどくけたたましい音。普段聞くことの無いその音に、二人は慌ててテレビをつける。

つけたテレビには空に浮かんでいる神殿の映像が、生放送で映しだされていた。

「あわわわ……どゆこと!?なに!?」

慌てている葉月はづきに指で『静かに』と合図をするアカネ。

その合図に従って口を閉じる彼女の耳に、テレビのアナウンサー、とも言えないAIのような女性の音声が入る。


「緊急事態発生、緊急事態発生。

未確認飛行物体の出現を確認。警戒レベルMAX。

直ちにお近くのシェルター、避難所に避難してください。

未確認飛行物体は現在危害を加えていませんが、いつ何が起こるか分かりません。直ちにシェルター、避難所に避難してください。繰り返します……」


それを聞いた二人は洗面台に向かって走る。

洗面台で顔を洗っていたそらは何が起きたのか分からずに顔を濡らしたまま、二人の方を見る。

冷や汗を垂らして、絶望に満ちたような顔をした二人を見ると何が不味いことが起きていることが分かる。


「……何があった?」

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