私が私を愛する事

@tablegood0212

第1話

今日の昼、母の為に食事を作り僕も同じものを食べた。昨日から9月が始まり、夏の残暑が厳しいが日中過ごし易くなった。何もしないでいると幻聴が話しかけてくる、僕は逃げる様に彼の事を想った。彼は病室のベッドに横になっている、何も聞こえない静寂の中でようやく人間らしく暮らせると喜んでいる。


彼と同じ気持ちでいる、何もしないでも急かされないので落ち着くのである。僕はリビングで力を温存するのに目を瞑っている。睡眠が足らないので虚ろ虚ろしてくる。僕は蒸し暑くて眠れない昼のひと時を耐えている、僕は無意識に感情を押し殺す癖がある。恋愛や金欲等、満たされない想いを誤魔化すのだ。


頭の中のMさんは僕に彼とどういう人生を歩みたいのか?尋ねた、お互いに信頼関係を築き、今は僕と彼とが別人格であるけど、自然統合された一人の人間になりたい。僕の行動に彼も共感するし、僕も彼の事を理解したいと思っている。今回のエッセイでMさんの力を借りて、彼についてもっと知りたいです。


頭の中のMさんに僕が小学生の頃、彼の事を30才位だと思っていた。そのせいか僕も気持ち的に周囲より大人びていた。彼は僕が小学生の頃は直ぐ側にいたけど、彼から話しかけられる事はなかった。転校した学校でいじめられた時も彼は無関心でした、僕も子供の様に悩まず、周囲を素直に受け入れました。


頭の中のMさんは彼に覚えてる?と尋ねました。彼は前にも言ったけど彼は主体ではないよ、僕についていく存在なんだ。彼は大人びていると言っても小学生なので、彼が人生を誘導する様な事はしなかった。それは今でも同じで、僕が明確に彼を感じる様になっても、小学生の頃のスタンスを崩しはしないよ。


頭の中のMさんに僕は他人の後ろをついて歩く様な子供でした、幻聴がうるさくてそれを対応するのに精一杯です。もう一人の自分の存在を気遣うのはずっと先の事です。ただ何か自分とは別の存在が居る事には気づいていましたけど、彼を理解しようとは思いませんでしたよ。僕の対話の中心は幻聴とでした。


頭の中のMさんは、幼少期に僕の中にもう一人の自分が居て、大人へと成長する対話があるものですけど、それが幻聴によって妨げられたのですね。当時の体罰のある教育も僕の成長を妨げていますね。僕にとって悪い環境が重なり、精神の発達が遅れ自己中心的な考え方をする様になったのかもしれませんね。


僕は小学生の頃から幻聴に苦しんでいます、何故僕にこの様なものがついているのか?不思議でした、いつもどうしたら良いのだろうと考えていました。幻聴が色々な事を言ってくるのに対してどう対応して良いのかも分からず、幻聴を鎮める事だけに一生懸命だったと思います。今としている事は同じですね。


朝起きた瞬間から耳元で騒ぎ出します、僕は学校に行くと静かになるはずです。通学中もうるさかったけど、学校の門をくぐると幻聴は鎮まりました。低学年の頃は勉強よりも毎日の生活リズムを作るのに一生懸命でした、夜寝る時も疲れると眠れる筈と僕に言い聞かせていました。生活するのに精一杯でした。


だから幻聴も対話するものじゃなく一方的なものでした、僕も何がなんだかよく分かりません。彼の存在に気づく事もありません、小さい頃から何かと戦っている様な感じで、それが僕の運命だったのだと思います。僕は48才で幻聴がどういうものか理解できる様になって彼に幻聴について尋ねてみたいです。


頭の中のMさんは彼に彼に幻聴をどう思うと尋ねます、彼は何の事か分かりません。Mさんは僕が随分苦しんでいると伝えても、彼は僕に関心がなく反応がないのです。僕は何となくそうじゃないかと思っていました、彼が僕の方を向いてくれないのは、彼にも原因があります。Mさんは僕に話があると言いました。


頭の中のMさんは彼は僕にそっくりですねと話す、三年前僕と心理面接をしてどうして社会で衝突してしまうの?と思いました。彼と話してみて僕と上手くやっていけない理由と同じだと考えています。僕は障害ですか?と聞くと、社会で言うとそうなるかも知れません、他人と関係性を作るのが苦手な様です。


頭の中のMさんに僕は難しい人間であるので、もう一人の自分である彼とも辛抱強く付き合わなければいけないと思います。付き合い辛さがあるのは僕の子供なので当然ではないでしょうか、彼の障害も認めてあげれば、少しでも彼への理解に繋がる気がします。Mさんは分かりました、対話を続けましょうね。


Mさんが彼との対話が幻聴によって妨げられて、精神の発達が遅れて自己中心的な考え方になったのではないか?という話を、僕の人生を振り返ってみると、一人になっていく事が多く、最終的に良い結果にならないのです。もしかしたら、孤立化しない事が、彼と共に人生を歩むキーワードになる気がします。

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