第12話 『モアベス』その4


 長い時間が必要でした。


 時計もなく、光も届かないこの海の底で、目印になるのは、1日15分の照明が海中を照らし出すことだけでした。


 しかし、ここには、書く道具もなく、テレビもラジオもなく、希望したなかで、許可された書物が、一冊ずつ届くのみでした。


 運動は可能でした。


 独房は円形なので、中で走れば、ずっと走り続けることもできたのです。


 シューベルト先生は、子供たちのことが心配でした。


 自分が、自分勝手なことを教えたために、いじめられていないかどうかを心配していたのです。


 しかし、独房さんは、限られた世間話をするだけで、そうした情報はくれません。


  

 永遠のような長い時間が過ぎたように思いましたが、シューベルト先生は、耐え抜きました。


 やがて、ついに、その時が来たのです。

 

 食べられる時が。




      ⏰💥







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