第8話 『エウロパ』その2
おすしも食べ終わり、宇宙船内で放映されていた映画は『未完成交響楽』という、とてつもなく古い映画でした。作曲家シューベルトさまの物語です。なんと、1933年の作品とか。
よくもまあ、こんな古代の映画を見つけたものですが、おそらくは、今日の乗客である、シューベルト先生にちなんで、スタッフの誰かが選んだものかもしれません。ならば、見ないわけにはゆかないと、シューベルト先生は思いました。
これが、生涯最後の映画鑑賞かもしれないのですし。
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しかし、8時間という時間は、またたくまに過ぎ去りました。
『みなさま。前方、木星です。太陽系最大のガス惑星で、恒星を目指しながらも、ついになれなかった、巨大な惑星なのです。半径は70000キロ近くありまして、太陽の10分の1。また、直径は地球の11倍あります。しかし、木星はガスでできた惑星で、全体が一番スッキリと見えるのは、ここからです。あとは、視界から溢れてしまいます。』
ああ、それは、まさに感動的な光景だったのです。
たくさんの渦が巻き、大気が反対方向に走り、嵐が吹き荒れます。
かつては、大赤斑と呼ばれる巨大な高気圧の渦がありましたが、21世紀になると次第に小さくなり、やがてはっきりしなくなりました。でも、南極側に、新しい巨大渦ができてきています。
『人間なんて、やはり、小さなものだ。でも、大きなことをやりたいと思う。歴史に偉大な自分の名を刻みたい。そのためならば、名の無いひとたちの沢山の犠牲は厭わない。』
シューベルト先生は思いました。
エウロパの海は深いのです。
表面のつるつるな氷は、考えていたよりも厚くて、平均50キロくらいはありました。
しかし、地球人は、そこに高い知性が関与していることは知りませんでしたから、うまく計算ができていませんでした。
その知性こそ、モアベスだったのです。
モアベスというのは、仮の名前で、モアベス自体は自分の名前を持ちませんでした。
というのも、自分とそれ以外を区別する必要性が、そもそも無かったからです。
しかし、モアベスだって生き物ですから、食糧は必要だったのでした。
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