第7話 『エウロパ』その1
囚人輸送船は、意外にそんなに乗り心地が悪くなかったのです。
アナウンスが入りました。
『本日は、エウロパ収容所ゆきエターナル・プリズンにご乗船ご苦労様です。みなさま、最後の宇宙旅行となりますので、どうぞ、お楽しみください。この際、ガマダンプラールのジャヤコガニュアン風ステーキか、高級にぎりずしか、どちらか、ご希望のほうをお持ちいたします。所要時間は約8時間です。周囲の状況により、多少変わる場合がございます。ご了解くださいませ。』
みなさま、といわれても、実は一人しか乗っていませんでしたが。
エウロパは、木星の第2衛星です。
『ちなみに、エウロパは、地球の超古代ギリシャ神話に出てきますエウローペーが語源とされます。発見したのは、伝説の地球の科学者、ガリレオ・ガリレイさまとされます。地球のお月さまより少し小さく、火星のフォボスやダイモスよりは、かなり大きいのです。太陽系の衛星としては6番目に大きく、半径は、1560.8キロメートルあります。エウロパ収容所は、衛星内部海の深い海中にあり、この宇宙船のような、特殊な構造の船でないと到達不可能でございます。』
シューベルト先生は、ぼんやりと、アナウンスを聴いていました。
これで、良かったのだろうか?
とも思いましたが、決心したことですから、最後までやり遂げなくては、とも思いました。
食べ物は、にぎりずしを選びました。
ガマダンプラールのジャヤコガニュアン風ステーキは、伝説では、火星に由緒があるとされる高級料理ですが、シューベルト先生は、食べたことがあります。しかし、にぎりずしといいますものは、海のない火星では、まさしく、超高級希少食材ですし、めったにお目にはかかれません。
つまり、海のない火星です。お魚を養殖する『養殖衛星』は、火星に2つしかありません。
だから、シューベルト先生は、おすしにいたしました。
宇宙というのは、実は寂しい、厳しい場所なのでしたから。
💫😢
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