第6話 『火星』その2


 機動隊の隊長さんは、シューベルト先生のミキサーや、ノート類はごっそりと箱にいれました。しかし、あの地球儀は、教壇の下に放り込んだまま、なぜだか回収しませんでした。


 

 シューベルト先生は、警察本部に連れて行かれたものの、ろくに事情聴取もなく、警察次長さんから、こう、言い渡されました。


 『君の裁判は、エウロパで行われるだろう。たぶんな。モアベスがどうするかは判らないがね。もう、火星に帰ることはない。』


 シューベルト先生は、べつに反論もしませんでした。


 しても、無駄だからです。


 裁判などは、行われません。


 記録上は、したことにはされますが、実行をされないことは、もはや火星の常識でした。


 それは、分かってはいましたが、あえて反抗してみたのです。



 火星の地上に住んでいる人間は少なくて、大部分はたくさんの空中アパートに居住していました。


 ほんとうは、テラフォーミングされるはずだったのですが、その計画は、すでに失敗したのです。


 地球人類には、最初からあまりに荷が重かったのですが、いまだに、そのようにしておく必要性がありました。


 つまり、地球がもう、長くはもたないことは、指導者には、早くからわかっていたのです。


 しかし、地球の住民を管理するには、都合のよい方策だったのでした。


 おおかたの地球人類は、いまも、地球人類は、火星のテラフォーミングをしていると思って暮らしていますが、実はもう、資源の掘り出ししかしていませんでした。


 シューベルト先生たちは、それを、だいたいは、見抜いていたのでした。



       🌏️


 

 

 


 


 


 


 

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る