猫耳をつけて完璧にしたい

白米おいしい

猫耳をつけて完璧にしたい

「ふう~ん、メイド服もなかなかよく似合ってるじゃない」

「くっ、……ころせ!」

「わあ。面白い言葉知ってるのね、アンドロイド君」

「おまえの本棚で勉強した」

「勉強熱心なのはいいことだけどね」


 女の子は苦笑いしながら、スカートをはいた男の子をながめた。


 メイド服姿の男の子、ルンはアンドロイドだ。彼を作ったのはココ。自室の本棚に特殊な本を並べている。実験作品のルンは手近な本棚から情報を仕入れていたところ、ココの性癖にそうように成長しつつあるようだ。


「それにしても、君がメイド服に目覚めるとは思わなかったよ」

「ココが恥ずかしがって着られない服を着ると、なんだか勝った気分になる」

「むう、恥ずかしいわけじゃないし。あと、その文脈でいくと『くっ、ころせ』は使い方が違うね。修正しなくちゃ」


 ココはルンのメイド服の腰のリボンの三センチのズレの見栄えが気になったのでちょいちょいと手を振って「後ろを向け」と指示を出した。


 カチッ


「うっ……」

「どうしたの」


 半身をひねった状態でルンの表情が固まった。困った様子でハの字眉をつくり、ココを上目遣いで見る。

 自分より背の高い人に上目遣いされるのはなんともふしぎな気分だ。ココは首をかしげてメイド服姿の男の子を観察した。

 

「肩が動かない」

「不具合かな。ちょっと待って」


 アンドロイドの左肩をさわってみる。服の上からでは特に違和感はない。ココはポケットからスマートフォンを取り出してアプリを起動した。同期しているルンのデータを確かめる。


「ココ、どう? 直りそう?」

「あー、至近距離で話さないで。君けっこうなイケボだから耳元でささやかれるとなんか気まずい」

「へー、面白れー女」

「低音ボイスやめろ」


 本棚の整理をした方がいいかも。ココは心の中でうーんとうなる。ずぼらだから腕を伸ばした先にすぐ摂取できる「栄養」を並べているのだ。

 このアンドロイドは知識を吸収して、知恵として実践している。彼の健全な成長のためには父親の書斎に連れて行った方が良いのだろうか?


「接続が悪いのかなあ。ついでだから語尾にニャを付ける実験もしてみようね」

「ご主人様は勝手だニャ」


 ルンがにらんでくる。そうそう、このジト目がいいんだ。お気に入りの表情のひとつだ。ココは楽しそうにデスクに座り、キーボードを叩き始めた。



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