第22話 二大イケメン、始動
申し訳ありません。
不具合で、22話が抜けていました。
一読頂きますよう、よろしくお願いいたします。
尚、26話も18時に投稿します!
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六月も終わり、七月に入り始めた頃。
「おい碧斗、後で大事な話がある」
いつも通り昼食をとっていると、翔が何やら深刻そうな顔をしていた。
とはいえ、多分夏鈴のことなので、碧斗も深く心配はしなかった。
「なんだよ、そんな改まって」
「なんだよじゃねーよ。やばすぎるぞこれは」
「……まさか、夏鈴のこと誘えたとか?」
「近いけど違う。お前にとってはもっとやばい」
「俺にとって?」
「そうだ。まじでやばいやばすぎる」
語彙力が皆無になる程、重大な事実を昨日知ってしまった翔。
忘れ物を取りに帰った時、三大美女が教室に残っていた。
思いがけなかったので、教室には入らずに側でバレないように聞き耳を立てると――
――"碧斗と夏祭りデートに行ける権利"を求めて、言い争いをしていたのだ。
「ちなみにどんな?」
「いや……ここでは言えねえ。放課後に人がいないとこで言ってやる」
「おいおいこえーよ……」
「俺の方がこえーよ!」
翔の言う通りである。
どう考えても、まだ在学して1ヶ月程の転校生が、学年の三大美女から求められている方が怖い。
そして、当たり前のように平然としているのがもっと怖い。
―――――――――――――――
同じく昼休み。
夏鈴は、ある人物と共に昼食をとっていた。
場所は1-B教室ではなく、外で。
「ねー夏鈴ちゃん」
「なーに?」
「昨日の放課後ね、三人で話したの」
「あー、乃愛と小春と?」
「うん、そうそう」
そう、夏鈴が共に昼食をとるのは――小野寺陽葵だ。
「それがどーしたの? なんかあった?」
「いやー、夏祭りあるじゃん? 今年も」
「そーだね、ちゃんとある」
「……陽葵ちゃんだって碧斗と行きたいのにさ!」
「まさか、あの二人に取られちゃったの」
「もう実質そんな感じ! 陽葵ちゃんは悲しすぎるんですよほんとに!」
目を擦り、泣くふりをしながら話す陽葵。
「へえー。ちなみになんで取られちゃったの?」
「期末あるじゃん? その点数が一番高かった人が碧斗のこと誘えるルールなの。陽葵ちゃんには無理ゲーです……」
「しゅん」と音が鳴るように、肩をがっくり落とす陽葵。
ただ、相談相手は伝説級の点数を取った夏鈴だ。
まあ、陽葵はそれをも上回る点数なので相手として間違ってはいないのだが。
「夏鈴もバカだから、陽葵の力になれないんだけど……」
「いやいーの。"いつも"聞いてもらってるから夏鈴ちゃんには言いたくなっちゃう!」
「ん、そういうとこ可愛いね陽葵は」
「えへへー、ありがとー。てか、夏鈴ちゃんにはいないの? そーゆー人」
「え、え? 夏鈴に?」
不意な質問に、夏鈴は分かりやすく動揺する。
勿論、そんな反応を陽葵は逃さない。
「あー? その反応はいるなー?」
「えへへ、ま、まあね? 夏鈴も女の子だから」
「なになに、誰なの」
陽葵が問うと、夏鈴は頬を赤らめて、恥ずかしそうに名前を口にした。
「翔くん……」
「……えええ!? あ、あの?」
「うん、陽葵の隣の」
「ごえええうおおえええ!?」
あまりに衝撃的すぎたのか、陽葵は人間とは思えないような声を出す。怪獣だ。
「つ、つまり夏鈴ちゃんは翔くんと夏祭りに行きたい……と?」
「う、うん。でも恥ずかしくて誘えなくて……」
「なーるほどなぁ」
翔と同じく、夏鈴も恥ずかしくて誘えないらしい。
甘酸っぱすぎる青春が、翔と夏鈴の間では繰り広げられていた。
「んー……あ! いい事思いついたよ夏鈴ちゃん!」
何か閃いたのか、陽葵は人差し指を立てながら夏鈴へ視線を送る。
そうして、夏鈴が「ん?」と返事をすると、陽葵は言葉を続けた。
「私たちも、テストで勝負しない?」
「え、夏鈴たちが?」
「うん! だってさ、私たち一緒のレベルじゃん?」
「まあ、うん。なんか悔しいけどその通り」
「でしょ。だから陽葵ちゃんにテストで勝てたら、隣の翔くんにその事を言ってあげます!」
「ええー! ほんとに、いいの?」
「いいよー! "いつも"碧斗の話聞いてもらってるし!」
「えへへ、ありがとー!」
こうして、陽葵と夏鈴による、どんぐりの背比べすぎるテスト勝負が決まった。
それから少し談笑を挟んだ後。
「ねーね、夏鈴ちゃん」
「んー?」
「碧斗にさ、伝えてほしいことがあるんだけど」
「え、でも言っていいの? ――夏鈴が三人と仲良しなこと」
「だいじょぶ! ちょっと意地悪したかっただけだから。それで伝えてほしいことなんだけど、小春の事で色々思うことが出来ちゃってね。それでさ――」
そうして陽葵は、『碧斗に伝えてほしいこと』の内容を、夏鈴へと聞かせた。
―――――――――――――――――――――
「なー優太」
「どうしたの?」
華月学園の二大イケメンは、今日も共に昼食をとっていた。
外にいる為、ちらほらと教室から女子の視線を感じつつも、二人には意中の女の子がいるので気にしない。
意中の女の子とは――
「俺、乃愛ちゃんと夏祭りいきてーよー」
「そうだね、僕も陽葵ちゃんと行きたい」
二大イケメンを虜にする女の子。
それは、――乃愛と陽葵なのだ。
ちなみに、小春は完璧すぎるからという理由で、二人の想い人にはなっていない。
「どんな感じなんだろうな。
「陽葵ちゃんはさせてくれそうだよね。乃愛ちゃんはガードが強そうだから分からないね」
華月学園の二大イケメンでも、意中の女の子とのイチャイチャは妄想する。
やはり、恋心を持つ高校生であることは、イケメンでも変わりない。
「てかよ、体育祭終わったぞ」
「そうだね」
乃愛と陽葵を手に入れる為に行動を起こすとは言ったものの、体育祭も重なっていた為、特に行動は起こせなかった。否、――体育祭が終わった後に行動を起こすと決めていた。
「そういえば心穏、体育祭の時の乃愛ちゃんへの声援すごかったもんね」
「あったりめーだろ。叫びまくったわ」
「全然名前らしくない」
短い赤髪を風に揺らす心穏と、爽やかな茶髪を風に揺らす優太。
よくある恋愛ゲームアプリのような光景に、密かに窓から見ていた女子達はメロメロになっていた。
「んなことよりよ、俺はマジで乃愛ちゃんと夏祭りに行きてーよ」
「それは僕も一緒。陽葵ちゃんと回りたいよ」
女子達の視線などお構い無しに、二人は会話を続ける。
外にいる為、会話の内容は聞こえていないものの、もしも何らかのきっかけで女子達がこの会話を知れば、発狂してしまうだろう。
「話戻すけど、行動起こさね?」
「ん、まあそうだね。決めたもんね」
「でもよ、どうするよ。まずは知ってもらうことだろ」
「さすがに、女子達があの感じなら知ってるんじゃないかな?」
そう言うと、優太は気付いていたのか、窓に指を差す。
その指を追って心穏は窓を見ると、女子達からの熱い視線が向けられていた。
「……やべーなおい」
二人が振り向いた途端、窓にいる女子達の様子は一気に変わり始め、窓を貫通して嬉しき悲鳴が聞こえてきた。
「ま、俺は乃愛ちゃんしか興味ねーからな」
「そうだね、僕も陽葵ちゃんだけだよ」
「でもお前、今日も体育館裏に呼ばれてるよな?」
「うん。すぐ終わらせる」
優太は、今日も女の子に呼ばれている。
無論、内容は"告白"なのだが、優太は陽葵以外に眼中に無いため、その女子が付き合えることは無い。
「――動く前に、確認しておきたいことがあるんだ」
少しの沈黙の後、優太は表情を強ばらせて呟く。
「なんだ、どうした?」
「転校生のことだよ」
名前は知らないが、まだ転校して一ヶ月程なのにも関わらず、三大美女と雰囲気が良いという噂が絶えない。
実行委員を共にしていたこと、大玉もペアだったこと、借り人競走で共にゴールしていたこと。
これらの事実からも、噂に間違いは無いだろう。
そして、――偶然ではなく、必然的にペアになっているのも確か。
「ああ、あいつか」
「まずはその子と、話しておかないとね」
「そうだな。……って、顔怖いぞ優太」
「嫉妬だよ」
「そうか。んで、どうする?」
「――明日、呼びに行こうか。名前は分からないから、とりあえず1-Bに行こう」
「おけ、分かった」
こうして、二大イケメンの計画は、確かに始まりを迎えた。
まずは、転校生が何者かを知ること。
そして、乃愛と陽葵を――落とす。
――――――――――――――
時は経ち、放課後。
無人だったはずの教室には、二人の姿があった。
「で、なんだ大事な話って」
「やべー話だ。ちゃんと聞けよ?」
「分かったってば。お前の話はちゃんと聞いてるだろいつも」
「いや、もうひとつある。ちゃんと"答えろよ"?」
「……まあ、分かった」
未だにピンと来ていない碧斗。
翔の"大事な話"が、どういう内容なのかも、どんな質問をされるのかも、何も分かっていなかった。
そうして、翔は"大事な話"をし始めた。
「――俺がよ……忘れ物を取りに帰った日、あるだろ?」
――――――――
最後までお読み頂き、ありがとうございます。
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申し訳ないです(;_;)
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