第16話 体育祭、開幕
「これより、華月学園高等学校体育祭を開催致します」
グラウンド。
壇上に立つ校長先生の言葉で、いつもとは違う一日が始まる。
そう、今日は来たる六月末。
"体育祭"当日だ。
碧斗たちは、教室からグラウンドへと椅子を移動させ、応援席という名目で外に座っていた。
「あーあ、始まってしまっちゃってしまいましたよ……」
「何を言ってんだよ」
隣に座る夏鈴から、絶望感溢れるセリフが聞こえる。
どうやら、文法が壊滅的になるほどに嫌らしい。
「みんなー! 今日は頑張るぞー! 気合い入れろ女子ー!」
「おー!」
「男子はー!?」
「おらー!」
そんな夏鈴などお構い無しに、陽葵は前に立ってクラス全体の士気を上昇させている。
三大美女直々の士気上昇に、1-B以外からも「かわいいぞー!」という声が聞こえたのはさすがだ。
「なんであんな元気なのかなー……陽葵は」
「ん、まああいつらしいよな」
夏鈴が"陽葵"と呼んでいることにはまだまだ違和感を覚えるが、変な事を言ったらまた"夏鈴の勘"に苦しめられるのでやめておく。
それに付随して、「小野寺さん」とか「陽葵さん」とか呼ぶのも、また"夏鈴の勘"に苦しめられそうなのでやめた。
「え、てかさ」
「うん」
「この前、三人で競走してたじゃん?」
「うん、乃愛が一位になってたな」
三大美女対抗かけっこ。
体育祭より少し前の、大玉転がし練習の時。
小春と陽葵が喧嘩している所に乃愛が乱入し、その勝敗をかけっこで決めたという何とも可愛らしい事柄だ。
結果は、乃愛が一位で終わった。
「てことは、その時は敵だったってことじゃん?」
「まあ、そういうことだね」
「でもあの三人……今日の学年対抗リレーで走るよね!?」
夏鈴の言う通り、小春と陽葵と乃愛は、学年対抗リレーの一年女子部門の選手として選定されている。
クラス対抗リレーに出なかったのはそれが理由だ。
「うわ、確かにそうじゃん」
「"昨日の敵は今日の友"ってやつかぁ……まあ昨日じゃなくてこの前だけど。……ってか熱すぎるでしょ!? あの三人が共闘するなんて!?」
「え、そうか? あいつらそもそも仲良しじゃない?」
「仲良し……?」
「え? そんなことない?」
やはり、夏鈴は何かを知っている気がする。
三人の仲が悪いのは、碧斗しか知らないはずなのだが。
とはいえ、最近、クラスメイトの前で少し雰囲気を悪くしていたのも事実なので、碧斗は深追いするのをやめた。
「ま、まあ確かに。雰囲気悪くなってたりしたからそう思うのも無理はないか。やっぱり俺もそう思う」
「……」
「なんだよその疑う目は。……ってか熱っ! 確かに三人の共闘は熱すぎる!」
「そのわさどらしい後付けに夏鈴の頭は怪しいと言っていますよ……」
「わざとじゃない! 楽しみにしとくわ」
「ふーん」
結局、"夏鈴の勘"に苦しめられてしまったが、今日は体育祭なので大目に見ることにしよう。
そんなことを考えていると、「準備体操をするので前に集まってください」とアナウンスが入ったので、碧斗たちは前へと向かった。
「小春ちゃん、リレー頑張ってね!」
「はい! 転んでも笑わないでくださいね?」
「笑うわけないよ〜。そんな小春ちゃんも可愛いって思っちゃうから」
「ふふ、ありがとうございます」
体操をしながら、隣のクラスメイトへと優しい微笑みを飛ばす小春。
日に照らされるその艶やかな黒髪は、さながら「人形」のような雰囲気を放っている。
「乃愛、リレー緊張してる?」
「してる訳ないでしょ。てか、応援してくれる?」
「当たり前でしょ! めっちゃ声出すから私の声聞いてて」
「ありがと。聞こえなかったらこちょこちょの刑に処すね」
乃愛も、体操をしながら隣のクラスメイトと談笑している。
クラスメイトは、むしろ"こちょこちょの刑"をされたいとまで思っていた。
ちなみに、乃愛が応援を求めているのは緊張してしまうから。
「陽葵ー! 今日見てるからねー!」
「うん! 陽葵ちゃんが爆走するとこ見てて!」
「別の人にバトン渡したりしないでよ?」
「それはない! なんてったって、陽葵ちゃんはアンカーですからね!」
「アンカーじゃなかったら?」
「普通に別の人に渡してた!」
「そんなはっきり言う……?」
こちらも、朝から陽葵の陽気さに振り回されているクラスメイト。
だが、陽葵のお陰で緊張が解ける部分もあるので、さすが陽葵と言ったところだ。
「……てお前、なんでここにいるんだよ」
「いいじゃねーかよ。話そうぜ」
列を無視して碧斗の横へやってきた翔。
まあ、体育祭である今日は先生達も大目に見てくれそうなので、無理に注意はしないことにした。
「大玉転がし、上手くいってんのか」
「それがさ……」
「ん、なんだ相性悪いのか」
急に神妙な面持ちになる翔に、碧斗は少し心配になる。
「夏鈴ちゃん、可愛すぎね?」
「……」
「まずあの顔な。くりくりした目が可愛すぎるんだよな。あとは小柄なのにおっ……」
「落ち着け。分かったから落ち着け。興奮のあまり言っちゃいけないこと言いそうになってるから」
「あ、わりわり」
一気に早口になり、人前でデリカシーの無い発言をしそうな翔を碧斗は制止する。
とはいえ、夏鈴の話になると露骨に嬉しそうにする翔に、碧斗は心の中で「頑張れよ」とエールを送った。
そうして、各方面での談笑を交えながら、体操は終わりを迎えた。
午前、最初の種目は三年生による徒競走。
最高学年は一年生よりもレベルが高いので、見応えがある。
「夏鈴、三年生に友達とかいるのか?」
「んーん。全く居ないよ」
「そうなんだ」
「碧斗は……聞かなくてもいいか!」
「うん、まあ居ないけど聞いてくれてもよくない!?」
「えへへ、ごめんって」
可愛げな笑顔を浮かべる夏鈴。
そして、悲しいことに友達がいないと決め付けられた碧斗。正解だが。
そんな二人を傍目に、三年生の徒競走はスタートし始めた。
「はっや」
「なんであんな走れるんだろー。夏鈴には全く理解出来ない」
「俺にも全然無理だあれは」
「すごいよね、ほんと。夏鈴も男の子だったらあんくらい走れたのかなー?」
運動が苦手な夏鈴は、レベルの高い三年生へと尊敬の念を向けている。
なんとも平和すぎる夏鈴の言葉に、碧斗は「多分走れたよ」と返した。
三年生の徒競走が終わると、次は二年生による障害物競走が始まった。
徒競走に比べて、純粋な走力ではなく障害物の適応能力が必要になるこの競技は、運動が苦手な生徒でも十分に勝機がある種目だ。
「夏鈴、これだったら一位取れるかも! 足遅くても勝てそうだし!」
「それはそうかもな」
「ま、出ないけどね」
「なんだそれ……」
「結局出ないのかよ」とは思いつつも、言葉にするのはやめる。
そんな時、『一年男子綱引きの準備をお願いしまーす』と、招集がかかった。
「お、碧斗頑張って〜!」
「おーっす」
そして、碧斗が移動しようとすると、
「碧斗ー! 一緒にいこうぜー!」
と、後ろから翔の声がかかった。
「おう、いくか」
「頼むぜ。圧勝しようや」
招集場所まで歩きながら、談笑する二人。
「まあそんなに力ないから戦力になれるかわからんけどな」
「はあ? うなぎ持ってくる度にあげてるんだから力あんだろ」
「それは俺の卵焼きもそうだろ……」
そんな会話を挟みつつ、招集場所まで到着した二人は、入場の為に列に並んだ。
『続いては、一年男子による綱引きです』
本部にいる放送委員会からの放送で、碧斗と翔を含めた一年男子は綱引きの位置へと移動する。
組み分けは、1-Bと1-Cが赤組、1-Aと1-Dが白組だ。
「碧斗ー! とそれ以外のみんなー! 頑張れー!」
「おおおおおお!!」
応援席から聞こえる陽葵の声に、一年男子生徒は士気が上がりまくっていた。
勿論、三大美女は陽葵だけじゃないので――
「如月乃愛さーん! 応援してくれー!」
「俺たちは如月さんの応援がほしいぞー!」
「夜桜さんの応援もほしくね?」
「小春さーん! 応援してくださーい!」
と、小春と乃愛への声援を要請している男子が沢山存在していた。
「はぁ……めんどくさ」
碧斗が居るので、若干嬉しさはあるものの、碧斗以外もいるので面倒臭さを感じる乃愛。
だが、根は優しい女の子なので、そんな男達の喉から手が出る程の声援の欲望に応えることにした。
「もう、頑張ってーっ! ……って、碧斗しか応援してないけど」
と、最初は聞こえるように、最後は聞こえないようにボソッと呟く。
「頑張ってくださーい! 応援してますよーっ!」
心優しき小春は、全員に向かって微笑みながら声援を送った。
そうして、三大美女から直々に声援を送られた男子生徒達は、
「うおー!! 頑張れる! まじで頑張れる!」
「やっぱり我らの如月乃愛ちゃんですわ」
「夜桜小春が日本一だよ!!」
「小野寺陽葵しか勝たんだろー!」
と、溢れ出る喜びを抑えられずに爆発させていた。
三大美女からの応援だ。負けられない。
――そんな三大美女達にいい所をみせようと結果、力みすぎてあっさり負けてしまったのだが。
「敗因が"可愛かったから"ってどーゆーことだおい」
「面白いくらいにみんな力入ってたな……」
綱引きが終わり、応援席へと戻りながら会話をする碧斗と翔。
「可愛いは罪ってこういう意味だったのか?」
「まあ、ある意味そういうことだよな」
「美の暴力ってのもこういう意味か?」
「うん、それもある意味そうだな」
本質的な意味は違えど、言葉の額面通りに受け取れば、本当にそうである。
可愛すぎて、美しすぎて、男子生徒たちはやられてしまった。
不意に、翔から質問が飛ぶ。
「てか、誰推しなんだよ」
「だ、誰推し?」
「三大美女に決まってるだろ。誰だ」
――翔からの質問に答えようとした時、自分の心の中に何かモヤの様な感情が存在しているのを、碧斗は感じた。
「いないな、てか、可愛いとかそんな感情が湧かない」
それを悟られないよう、誤魔化す。
そして、続くと面倒なので今度は碧斗から言葉をかける。
「翔は? 誰推しなの?」
「そりゃ、俺は夏鈴ちゃん推しに決まってんだろ? 三大美女より"一大夏鈴"なんだよ」
「なんだよ"一大夏鈴"って」
初めて聞く言葉に碧斗は笑いつつも、改めて翔は夏鈴が好きなんだなと思う。
そんな会話を挟みつつ、二人は応援席へと戻った。
「なーに負けてんのー?」
「いや、全員あの三人の可愛さにやられた」
「可愛くて負けるって。男の子ってほんと面白い」
席に着くと、隣に座る夏鈴が微笑みながら話しかけてくる。
そして、夏鈴は言葉を続けた。
「にしても、碧斗にはそんな感じしないなあ」
「俺は慣れてるからな」
「ん? 慣れてる?」
思わず口が滑った碧斗を、夏鈴は逃がさない。
「あ、そのあれだよ。なんか俺にだけおはようって言ってきたりさ? そーゆーこと」
「ふーん」
「……」
「ま、いいや! 綱引きお疲れ様!」
そうして、怪しげに納得した夏鈴は碧斗を労うと、碧斗も「おう」と返事をして席に着いた。
綱引きが終わると、そのまま順調に何個かの競技が消化され、二年生による台風の目が始まった。
そして、その途中のアナウンス。
『一年生、大玉転がしに出る生徒は準備をお願いします』
と、招集がかかった。
夏鈴と翔より一足先に、碧斗は大玉転がしの為に招集場所へ向かおうとすると、後ろから声がかかった。
「碧斗くん」
「ん、小春か」
「せっかくなら一緒に行きましょう?」
「周りの目が怖いけど、まあペアだから大丈夫か」
声の主は、ペアである小春だ。
そして、小春はおもむろに碧斗に近付くと、耳打ちをするように、碧斗の耳へと顔を近づけた。
「……私は手を繋いで行きたいくらいですけどね」
碧斗の耳元で囁く小春。
あまりの破壊力。――でも、碧斗は何も感じない。
それを見ていた周りの生徒達には「作戦会議ですよ」と、小春は微笑みながら誤魔化した。
「作戦とかあるのか?」
「うーん……碧斗くんは何かありますか?」
並びにつきながら、本当の作戦会議をする碧斗と小春。
「いや、俺は小春についていくのが精一杯かもしれない」
「ふふ、なんだか可愛いですね」
「バカにされてるなこれ」
「そんなことないです。赤ちゃんみたいだなーって思っただけです」
「うん、バカにしてた」
「まあ、作戦というかその方針で大丈夫ですよ。私についてきてくれれば良い結果を残しますので」
「なんか情けねえな俺……」
頼もしすぎる小春に頼ることにした碧斗。
一方、地獄のようなトレーニングをしていた乃愛とクラスメイトは、
「あんだけやったんだから大丈夫よ。期待してるからね」
「は、はい! 頑張ります!」
「なんで敬語?」
「あ、その……如月さんに見惚れてしまって……」
「何よそれ。 どーもですけど」
三大美女・如月乃愛に「期待してるよ」なんて言われれば、普通の男子生徒ならイチコロだ。
乃愛のペアであるクラスメイトも、勿論その一員。
後ろで繰り広げられるそんな会話に、小春は「ふふ」と微笑むと、乃愛へと言葉をかけた。
「乃愛、ちゃんと一位でゴールしてくださいね」
「ふん、分かってるわよ。その前に小春が一位で渡してくれないと困るんだけど」
「私はいつだって一位ですからね」
「はあ? 何言ってんの。私が勝ったこともうわす……」
「うし! 二人とも頑張ろうな!」
雰囲気が悪くなるを察し、碧斗が二人を言葉で制止する。
殺伐とした空気が流れかけたが、碧斗のファインプレーでそれは阻止できたようだ。
一方その頃、小春たちの前にいる夏鈴と翔も、会話をしていた。
「なんとか頑張って翔くんについてくから、置いてかないでね?」
「当たり前だろーよ。てか、俺に競走勝ったんだから自信もってくれ」
「えへへ、まあそれはそうだけどさ? 翔くんが優しいからでしょ?」
「そ、そんなことないって。あれでも、本気だったんだぜ?」
不意に褒めてくる夏鈴に、ポッと頬が赤くなる翔。
「まあ、夏鈴のことサポートしてね! 頼りにしてるから!」
「任せとけ!」
殺伐とした空気になりかけている後ろで、相変わらず平和でほっこりする会話が繰り広げられていた。
程なくして入場が始まり、碧斗たちはスタート位置へと歩き出す。
歩いていると、碧斗は自分の小指に違和感を感じた。
「ちょ、小春……みんないるから」
「歩いてる時くらい大丈夫ですって。そんなに暴れたら逆に怪しいですよ?」
「おいおい……」
大所帯で歩いている事を利用して、小春は碧斗の小指をさりげなく握っていた。
人が多く死角も多い為、バレることは無い。
「……っておい!お前もかよ」
「何? 背中に砂がついてるから取ってあげてるんだけど」
「いやいやいや……」
後ろを歩く乃愛は、小春に負けじと、碧斗の体操服を掴んでいる。
隣のクラスメイトと碧斗には、「砂がついてるの」と言い訳をしているが、ずっと服を握っているので明らかにおかしい。
些細な時間でも対立している小春と乃愛は、「私の碧斗」と言外で伝えるように、バチバチな視線を交差させていた。
乃愛と小春は相変わらずバチバチなまま、本番を迎えた。
「パンッ」というスターターピストルの音と共に、各クラスの大玉転がしが始まる。
B組は案外良いスタートを切れたので、一位に君臨していた。
「よし! いくぞ夏鈴ちゃん!」
「うん!」
二番目のペアから大玉を受け取った翔と夏鈴は、一位を保持したまま走っていく。
だが、二位クラスとの差はほとんど無く、少しでも手こずれば抜かされそうな距離だ。
そして、運動嫌いな夏鈴のスピード感も相まって、B組は二位に転落。
「抜かされちゃいましたね、二人」
「まあなー、仕方ない」
「にしても、間宮さんは優しいんですね。夏鈴にスピードを合わせてあげてますよ」
「あの……小春さん。それ自分に言い聞かせといて……?」
「ふふ。碧斗くん、準備出来てますか?」
二位に落ちたことで、再び闘志が燃えたぎる小春。
碧斗の要望などお構い無しだ。
そしてここで、碧斗にとって最悪の質問が入る。
「……そういえば、大玉転がしの練習の時、乃愛が4本って嘘つきましたね?」
「……なんでバレたんだ」
「乃愛から聞いたからです。トークで」
「終わった……」
ここにきて、あの時の嘘が仇となってしまった。
こうなった小春は、もう止められない。
「許してあげるので、私の好きな所一個言ってください。今すぐ」
「え、ええ?」
「言えないなら10回分の出力で走りますよ」
「わ、分かった! えーっと……髪の毛が綺麗なところ!」
「……許します。嬉しいので」
「ちょろすぎる」
碧斗に褒められた小春は、満更でもない顔をしていた。
ちょろすぎる小春だが、それも彼女の優しさ故。
すると程なくして、大玉を転がしながら夏鈴と翔が帰ってきた。
「小春ごめん! 抜かされちゃった!」
「いえいえ、お疲れ様です。よく頑張りましたね」
大玉を受け取りながら、小春は優しい微笑みを夏鈴へと向ける。
「たのむぜ、碧斗」
「おう……ついていけるか分からんけど頑張るわ!」
「……はあ?」
そしてこちらは、小春の燃えたぎる闘志に不安になる碧斗と、そんな碧斗に理解ができない翔。
各方面での些細な会話を終えて、碧斗と小春は位置を立て直す。
そして――
「よし! 行きますよ! 碧斗くんっ!」
「おう……ってもう行ってるし」
碧斗が返事をしきる前に、小春はスタートしていた。
とはいえ、まだなんとかなる距離なので碧斗も気合いで追いつく。
「そうです!そのままついてきてください!」
「相変わらずはえーな……」
「どんどん縮まってますよ」
「すっげ……」
日に照らされる黒髪を靡かせながら、どんどんと進んでいく。
速さが功を奏し、首位に躍り出た小春と碧斗はそのまま乃愛とクラスメイトペアへと大玉を受け渡す。
「頑張って、乃愛」
渡すと同時に、乃愛へと声をかける小春。
「言われなくても頑張るっつーの……ほらいくよ!」
「は、はい!」
首位で大玉を託された乃愛とクラスメイトは、勢い良くスタートした。
若干、クラスメイトは遅れ気味だが、練習のお陰か、乃愛にしっかりついていた。
「ふぅ……碧斗くん、お疲れ様です」
「はぁ……死ぬわほんと……」
なんとか気合いで小春についていた碧斗。
その代償が押し寄せて、疲れで死にそうになっている。
「碧斗くんが頑張ってくれたおかげで、一位で乃愛に渡せました」
「……そうだな……感謝してくれよ……」
「ふふ、じゃあ終わったらくっつかせてください」
「……相変わらず"じゃあ"の意味が分かんねーな……」
優しく微笑む小春は、今日も今日とて碧斗を困らせる。
乃愛とクラスメイトのペアは、クラスメイトが死にかけになりながらも、無事に一位でゴールした。
そうして、午前の種目は終了した。
午後の種目には、大目玉の"クラス対抗リレー"と、"学年対抗リレー"がある。
少し前は、敵としてかけっこをしていた三大美女達による、大きな大きな晴れ舞台が。
――そして、その結末は、誰にも予想できない程に盛り上がることを、応援席は誰も知らない。
――――――――
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