第338話 動き出す終焉
私とマオちゃんの結婚式から一年の時間が経った。
クララちゃんは数か月と言っていたけれど原初の神様…マリアさんはまったくアクションを起こしていないようで、目撃情報すら出ない。
そしてそれはマナギスさんのほうも同じで、やはりあの時に瓦礫に潰されて死んだ説が濃厚になってきている。
私たちのほうもやることは無く平和な日常が流れていたが一つだけ心配なことがあった。
マオちゃんのお腹にこの一年間なんの変化もない事だ。
よく見れば膨らんでいない事もないレベルで変化がなく、最悪の事態を想像して怖くなったけれどマオちゃん本人は「大丈夫」としか言わない。
私は何が出来るわけでもないのでマオちゃんを信じてそのままにしているが…心配は拭えない。
だがそんな私をよそに、マオちゃんには何かが分かっているらしく、特に慌てた様子もなくいつも通りの日々を過ごしている。
マオちゃんに至っては興味がないという事は絶対にないので本当に大丈夫なのだろう。
「あ、また…やんちゃだね~きみは」
たまに独り言を呟きながらお腹を撫でるマオちゃんを見かけることがあるが、そんな時は決まってマオちゃんの近くにあった、もしくは手に取っていた果物なんかが腐っている。
メイラが厳しい目で鮮度のチェックなんかはしているはずだから元から腐ってる事なんかはあんまり考えられないわけで…マオちゃんの反応的にお腹の子が何かしているって事なのかな…?でもそんな事ある?と思いつつ、リフィルの時も大変だったしそういう事もあるのだろうと納得している。
メイラと言えば、最近マオちゃんとよくお茶をしているのを見かけるようになった。
あの二人が絡んでいるのって一年前はあんまり見なかったけれど、私が見なかっただけで仲が良かったのかな?今ではそれこそ姉妹みたいに見えることもあり、少し嫉妬してしまう。
はっ…これがマオちゃんがよく言うやつか!と思いつつも仲がいいのはいい事なので邪魔をしたりはしない。
ただ気になるのはマオちゃんとお茶している時メイラは何を飲んでいるんだ?という事。
コーヒーやお茶が飲めないわけではないだろうけど、メイラには美味しく感じられないし、毒にも薬にもならないそうなのでどうなっているんだろう?と…。
楽しそうにしている様子から無理にお茶に付き合っているわけではないと思う。
どれだけ仲のいい人と一緒でも、クソまずいお茶やお菓子を食べながらという物はどうしてもテンションが下がると思うのよ私は。
関係ない事だとは思うけれど不思議なことがあって、
「喉乾いちゃった~ちょっとこのポッドの中身は飲んでいいのかなぁ?」
と以前に厨房に立ち寄った際に一番近くにあったポッドを指差して、そこで何やら作業していた悪魔ちゃんたちに尋ねると。
「ああ!?それはダメっす!」
「申し訳ありません、すぐに別の物を用意しますので!」
と慌ててポッドを持っていかれてしまい、一瞬だけ鉄のような…生臭いような不思議な臭いが鼻を突いたのを覚えている。
「ちょっと!ちゃんと隠しておかないと!」
「いや、今から持っていくところだったんだよ!」
「メイラさんは衛生管理?とか言うのには厳しいのですからまた殺されますわよ!」
「わかってるって!…ったく、自分の飲んでるやつのくせに衛生もクソもあるかってんだ…早く「特別調理室」に行くわよ。昨日入った「新鮮」な奴も解体してしまわないと…」
「ええ、私たちにも血肉を分けてもらえるのですから丁寧にですよ」
「分かってるって。あ~ちょっとだけ精のほうも…」
なんていうよく分からない会話を聞いたのだけど本当になんだったのだろうか?謎である。
そしてもう一つ。
なんと帝国が建国された。
別にどこに国ができようと気にすることではないのだけれど、なんとコウちゃんが新たに国を興したのだ。
一年前からほとんどこっちに帰ってこなかったけれど、まさか国を作っているとは思わなくて、アーちゃんから聞いた時には本当に驚いたものだ。
何度か顔を見せに行った時にはげっそりと疲れたような表情をして「なぜこんなことに…」と呟いていたので皇帝って大変なんだなぁとしみじみ思ったので、こんどクララちゃんの居場所を探して帝国でライブしてもらえないか頼んでみようと思う。
風の噂では今をトキメク大人気アイドルの名をほしいままにしているそうなのでコウちゃんもたぶん喜んでくれるだろう。
そんでもってつい二月ほど前に無事に建国し、評議会?みたいなところにも承認されたそうなので建国祭にかこつけて私もお祝いに行こうとしたところ「絶対に来るんじゃねぇ!!!!!」と照れているようだったので空気が読める私は大量のお花を持って友達の華々しい門出を祝いに行きましたとさ。
私の姿を見つけた時のコウちゃんは顔を真っ青にさせたり、真っ赤になったりと喜びすぎて変なテンションになっていた。
「リリちゃん!今度またコーちゃんのところ連れて行って!」
「いって~」
一年でちょっとだけ背が伸びた娘たちもコウちゃんの新しい国を気に入っているらしく、しきりに遊びに連れて行けとせがんでくるので週二~月一くらいで遊びに行くようにしている。
その度にコウちゃんがこれでもかと完全武装した騎士達を護衛につけてくれてるので私も安心だ。
たまに護衛というよりは監視に見える時もあるけれど、それだけ騎士のみんなが仕事熱心という事だろう。
関心関心。
そんなわけでいろんなことに警戒はしつつも穏やかに日常は流れて行った…しかしやはりいつまでも日常系を続けることは出来ないようで、その知らせはコウちゃんとアーちゃんからもたらされた。
「仕留めそこなったなお前たち」
「どうやら生きていたみたいですよ」
それが誰の事を指しているのか、もはや聞くまでもない事だった。
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