第247話 人形少女は閉じ込める

 視線の先でメイラがはっちゃけている。

ここで私が気にしていることはメイラが今どっちの目的で動いているのかだ。


私と同じように屋敷を囲んでいる人たちの目的を聞いているのか…もしくは普通に食事をしているのか。


前者の場合は私がしゃしゃり出るよりメイラにお任せしたほうが絶対にいい…だがただ単に食事をしているのならば止めないといけない。


だって目的を聞く前に皆食べてしまうだろうから。

見た目細いのに大食いなんだあの子は。


うんうん、いっぱい食べる女の子は健康的で大変良いと思いますよ私は。

思うけどもね?今はちょっと困るよね~?みたいな。


「う~ん…とりあえず行ってみて邪魔になりそうならすぐに戻ればいいか」


そんなわけでメイラの元に向かっていたのだけど…。


「リリちゃん!」

「ん?」


背後からリフィルの声が聞こえたので振り向くと二階の窓からリフィルとアマリリスが顔を出しており、さらに屋敷に侵入しようとしている三人の人間の姿が見えた。


「はぁ…」


なんでこうなるのか…私はとりあえず目的を聞きたいだけなのにさ。

明らかに扉を壊して侵入しようとしてるし、そういうことをされると私としてももう彼らを排除しないといけない。


少しでも私の大切な娘たちに危害が及びそうなら親としてちゃんと守ってあげなくてはいけないのだから。


私は空間移動を使い、男たちの背後まで移動すると両手で一人ずつで計二人の首を握りつぶした。


「な、なんだ!?」

「はい、こんにちは~」


残った一人の首を掴んで持ち上げる。

鎧込みでもなかなか軽いね。ちゃんとご飯食べているのだろうか?

まぁどうでもいいか。


「ぐぐぐ…は、離せ!俺は栄えある…!」

「ちょ~っとだけ静かにしようか」


今度はボキッといってしまわないように細心の注意を払って優しく首を掴む手に力を入れる。

それだけで男は苦しそうな顔で私から逃れようと暴れまくる。

バタバタと足や手が私の身体に辺りはするけれどもちろん私の身体になんのダメージも与えない。


「そのままでもいいからちょっとお話ししてくれる?あなた達は何をしにここに来たの?」

「うぐぐぐ…」


「うぐぐぐ~じゃなくてさぁ質問に答えてくれると嬉しいな。あんまり苦しい思いはしたくないでしょう?」

「話せば…助けてくれるのか」


「うーん助かるの意味にもよるかも?もう苦しまなくていいって意味では助かるよ?生きて戻りたいって意味なら無理かなぁ」


明らかに武装して娘がいる我が家に土足で踏み込もうとしたのだから生かして返すという選択肢はない。

そんなことしたらマオちゃんにも怒られそうな気もするしね。


「ぐっ…なんなんだ貴様らは…!」

「ねーねー私の話聞いてる?」


ちゃんと会話をしてくれない人というのは私の中でトップクラスに好感の持てない人種だ。

イライラしてきたしもう殺してしまおうか?

そう思って腕に力を込めようとした時だった。


「リリちゃん、この人たちこのお家が欲しいんだって。私たちを殺してここを貰うつもりだったみたい~」

「は?」


またも二階から顔を出したリフィルがそんな事を言ったのでついつい妙な声が出てしまった。

なんでリフィルがそんな事を知っているのか分からないけどそれが本当なら大変な事だよ。


「今の話ほんとう?」

「…」


男は無言で目を見開いて私と二階のリフィルを見た。

この人は本当に会話ができないらしい。


「もう一回だけ聞くよ?今の話はほんとう?」

「ち、ちがっ…俺たちはただここがどういう場所なのかと調査をしようと…」

「嘘。リリちゃんそいつ嘘ついてる。うそつきは嫌い」


そう言ってリフィルは顔を引っ込めてしまった。

いつも元気いっぱいで明るいあの子のあんな様子初めて見た。

それだけこの男が嫌だという事なのだろう。


なんでリフィルがこの人の心を読んだようなことを言えたのかは分からないけど娘の言う事は信じるよ私は。

そうなると…。


「死ね!」


背後から軽くつつかれるような感覚がしたので首を掴んでいた男の首を握りつぶしてゆっくりと振り返った。

そこに槍のようなものを突き出した男がいた。


「なぁに?」

「ば、化け物…」


男が私を見たまま動かなくなったので適当に火の魔法で焼き殺した。

さて…分かってはいたけど完全に武装してきているしどうやらリフィルの言っていたことで間違いはないみたい。

こいつらは私たちの家を奪いに来たのだ…しかも私たちを殺す気満々でだ。


許せるわけないよね。


「【惟神】」


私は惟神を発動させて辺り一帯を闇に包み込む。

今はクチナシがいないからできる事は少ないけれどこの闇中からは簡単に外に出ることができない。

屋敷のまわりにいる人間を全員閉じ込める…それだけで十分だ。


今ここに居る人間は誰一人として帰さない。

だって一人でも逃げられるとまた仲間を連れてくるかもしれないから。


「殺そうとするのなら殺される覚悟を持ちましょうね」


私はメイラがいる場所とは逆方向の人間たちのいるほうに向かった。

惟神を発動している以上、この闇の中は私の世界だ。


もし娘たちに何かあればすぐにわかる。

だから私は遠慮なく害虫駆除に専念するとしましょう。

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