第223話 魔王少女は進んでいく
「や、やめて…やめてください…」
「嫌」
目の前で命乞いを始めた魔族をオーラでぐちゃぐちゃに潰した。
それを見た他の魔族は奇声を上げながら散り散りになって逃げていくがめんどくさいのでオーラで全員捕まえて勢いよくお互いに衝突させて肉塊に変えた。
「300と34」
忘れないように殺した魔族の数は逐一口にする。
今現在の魔族の残りが1000に満たないくらいなので三分の一程度は始末ができた計算になる。
できれば今日中に一人残らず始末したいけど…生き残りを一切出さずというのはどうしても難しい。
私が把握している魔族の数も申告されているものだから何らかの理由で申告漏れがある魔族がいると数が合わないなんてこともありうるわけで…。
「まぁしらみつぶしに頑張るしかないか~」
ぐっと身体を伸ばして一息ついて次の場所へ。
私の魔王の力もここにきて完全に身体に馴染み…いやむしろ調子がかなりいい。
もしかしたら魔王の力に染み付いた魔族への怒りや恨みという物がここにきて影響してきているのかも。
でも思えば魔族も哀れな存在なのだ。
そもそも彼らは本能として他者を傷つける方向に思考が向きやすい種族で、そして魔王はそれを利用し誘導するためのサンドバッグなのだから殴ってもいいと言われたものを殴っていたはずなのにこんなことになった。
可哀想と言えば可哀想だ。
「ま、そんなこと今さら関係ないけどね。343」
ぐちゅっと気味の悪い音と共に魔族が潰れた果実のような見た目に変わっていく。
もう今となっては胸がスッとするとかもなくて完全に作業だ。
「私…すっごい悪い女になっちゃた。368」
それでもこんな私を愛して迎え入れてくれる人がいるから。
だからそのほかの事なんてどうでもいい。
大切な家族たちと他人、それは天秤にかけるまでもなくどちらをとるかなんて明らかなのだから。
私は私の幸せのために全ての魔族に死んでもらうのだ。
今までは私の中にわずかな情と踏み切れない甘さ、まだ方針が決まり切っていなかったのもありゆっくりとやっていたけどもはや遠慮も意味もない。
「お待ちください魔王様…私は今まであなたに尽くしてきました…そんな私をなぜ!」
「さあ?尽くしが足りなかったんじゃない?」
最近雑務などをしてくれていた魔族を殺した。
恐怖に駆られて媚を売っていた人に尽くしただの言われても何も響かない。
私は君たちに尽くされた時間より虐げられた時間のほうが長いという事を理解してほしいところ。
「あ」
先ほどの魔族を殺した場所がそいつの家だったのだけど、やけに背後を気にしているなと思ったらそこから繋がる階段の下に地下室があり、そこに女魔族と子供がお互いを抱きしめるようにして震えていた。
どうやら先ほどの彼の家族らしい。
「ど、どうか…この子だけはお許しください…」
「母さん…」
私は二人を安心させるように笑うと地下室を出た。
ほっと安心して息を吐くような音が聞こえたがすかさずオーラを部屋に流し込んで圧し殺した。
子供を手に掛けるのはやっぱり苦手だ。
だけどここで手加減するのはありえないのでせめて苦しまないように一息に殺してあげた。
忘れてはいけない、彼ら魔族は年端も行かなかった私の娘たちを誘拐した前歴があるのを。
人の娘を害する癖に、自らの子が害されないなどと都合のいいことを考えるのはダメだよね。
いつかこの全てがブーメランのように自分に帰ってきそうだけど。
「そうならないためにも魔族という種は全て刈り取っておく必要があるの」
故に手加減などしない。
しばらくそうしていると都合のいいことに魔族側から私の元に来てくれた。
かなりの数だ。100人以上いそうな気がする。
「皆から来てくれるなんて…いい部下たちをもったよ私は」
「だ、黙れ!おぞましい化け物め!」
「お前が魔王などと名乗るのをこれ以上認めるわけにはいかない!」
各々武装した魔族たちは威勢のいいことを言いつつも手は震えていた。
正直少し期待していたのだ。
こうやって理不尽に命を奪っていけばどうせやられるならばと纏まって歯向かってきてくれることを。
思惑通り彼らはこうしてやってきてくれた。
いちいち探し回らなくていい。
「私に勝てると思うの?」
「この数を見てそんなことが言えたな!?」
「そうして澄ましていられるのも今の内だ!」
「そう。あ、もしも自分たちの身内をここに連れてきてないのならその人たちがどこにいるのか教えてくれたら命は助けてあげるよ?…それか他人が匿ってる人の場所をこそっとでも教えてくれたら家族を含めて身の安全を保障してあげる」
ざわっと魔族たちが揺れた。
チラッと隣の魔族を気まずそうに見たり、疑心暗鬼に駆られたのか抜け駆けはするなよとでも言わんばかりに他者を睨みつけている者もいる。
独りで何かを考え込んでいるように見える奴らは家族を売る算段でも考えだしているのだろうか?
あーあーやっぱり馬鹿しかいないなぁ。
私ならたとえ胸に刃を突き刺されても家族を売ったりすることなんて選択肢にすら入りはしない。
まぁ他人に勝手に情報を売られるなんて考えると疑心暗鬼にはなるかもだけどね。
「落ち着け!卑怯な魔王の罠だ!冷静に考えろ!こんな手段に出るという事はこの数相手には分が悪いと思っている証拠だ!怯むな!」
先頭に立っていた魔族が威勢よく檄を飛ばした。
やっぱり人数がいるとこういう人が出てくるものなんだなぁ~勇ましいのはいいけれど勘違いされるのは癪だ。
プチっとその魔族を潰した。
いやグシャっ!だったかもしれない。
インパクトが大事と思って勢いよく潰したものだからいろんなものが飛び散ってアラ大変。
可哀想に近くにいた魔族に内臓やらなにやらへばりついちゃって気持ちが悪そうだ。
シーンと静まり返ってしまった魔族たちに私は静かに質問した。
「次は誰がそうなりたい?」
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