第146話 人形少女は殲滅する
「ふん、ふ~ん、ふふん~」
別に楽しくもないけれどなんとなく鼻歌を歌いながら魔界を歩く。
「や…やめろ…来るなぁあああ!!」
私の少し前で尻もちをついている男の人が必死の形相で石を投げてくる。
実は今マオちゃんからの「お願い」で何個か領地を潰すために一人であくせくと働いている最中なのだ!もう無職とは言わせない。
「大丈夫だよ~痛くしないから、ね?」
たぶんこの魔族は見た目からも庶民ぽいし何もしていないのだろうけど…それでも目につく人は殺しておかないといけないので残念ながら死んでもらうしかない。
せめてあんまり恐怖を与えないようににっこり笑顔を向けて、苦しくないように一撃で首を落としてあげるのが落としどころなのよ。
「ひぃ…っ!やめろ!やめ…」
今の人でかれこれ30人目くらいだろうか?まだまだ先は長い。
「うわぁああああああ!!!家族の仇ぃいいいい!!」
青年が剣を持って叫び声を上げながら突撃してきた。
勿論私はそれを避けたりはせずに正面から受け入れる。だって襲ってるのはこっちだからね。
やるのならやられる覚悟大事。
まぁただの剣なんて通らないんだけどさ。
私に叩きつけられた剣はあっけなく折れて、次は私の番という事で青年の首を掴んで一息にへし折る。
「じゃあ次~。ふん、ふふん、ふ~ん」
マオちゃんからは皆殺しにはしなくていいと言われているのでのんびりと歩きながら身動きができなくなっている人、向かってくる人を中心にその命を奪っていく。
何度も何度も、ほんっと~うに何度も言っているが私は別に人殺しは好きじゃない。
しなくていいのならぶっちゃけしようとも思わない。
今回は私自身には何も関係ないし、なんでこの人たちを殺さないといけないのか全く分からないので理由すらないわけで。
だけどもね、マオちゃんから頼まれたらそれは理由になるからさ?残念ながら諦めてもらうほかない。
「そこまでだ悪魔め!!」
「およ」
なにやらでっぷりと太った魔族がたくさんの兵隊さんを連れて現れた。
あの人あれだ、マオちゃんから絶対に首をとってきてほしいと言われてた人のような気がする。
「さあ我が兵たちよ!乱心した愚かで無知な愚図魔王のしもべである悪魔を討ち倒し、我らの正義を示すのだ!」
「「はっ!!」」
兵隊さんたちが一斉に私に武器を向けた。
この指揮をしている太っている人が確かここの領地を治めている領主らしい。
「あのさ、勘違いしてるようだけど私は悪魔じゃないよ?それとさ」
私は適当な魔法を兵隊さんに放って適当に始末した後に領主の前まで来てその首を掴んだ。
「うぐぅ!?」
「ねーねー、今マオちゃんの悪口言ってたよね~?言ったよね?」
これはもう許すわけにはいかなくなった。
なんでここを滅ぼさないといけないのか分からなかったけど、マオちゃんの悪口を言う人が治めているところなんて碌な場所のはずがないから仕方ない。
「ぐ…ぐるじぃ…はな、せ…」
「ねーねーさっきみたいな悪口を普段から言ってたの?返答次第では助けてあげるよ?」
勿論嘘だ。
だけど何を勘違いしたのか、にやりと笑った領主がペラペラと語ってくれた。
力もない小娘のくせに魔王など生意気だとか、血筋も分からない孤児のくせにだとか、甘ちゃんすぎて人間に戦を仕掛けない腑抜けだとか。
だというのに後半は力を振りかざす馬鹿だとか、政治というものが分かっていないとか。
最後には言うに事欠いて私に自分の配下になれとかいう始末。
何でもあんな小娘よりはうまく使ってやる…だそうで。
そんな事を周りにも言っていたの?と聞いたら「みんな」そう思っているという返答が帰ってきた。
私が男の首から手を離すとそのまま地面に崩れ落ちた。
「さて」
周りをぐるっと見渡すと今までのやり取りを見ていたのか領民達が恐怖に歪んだ顔でこちらを見ている。
「みなさん聞こえますか?実は私マオちゃん…魔王様からこの領主の首をとってくればあなた達を皆殺しにする必要はないって言われてはいたのですが…先ほどの領主の魔王様を馬鹿にする発言に少し怒ってしまったのでやっぱり皆殺しにしまーす」
最初のんびりしていたせいですでに領地を出てしまった人がいるかもしれないけれど探し出して一人残らず殺す。
みんな言っている、の「みんな」は全員殺す。
それがどこまでみんななのかは分からない。近くの領地まで含むのだろうか?それとももしかして魔族みんな?
だとしたら私がやることは?
「おっといけない。とりあえず今は目の前の問題から片づけて行かないとね」
さすがに歩いて行くのは効率が悪いので遠くにいる気配に向かって魔法を放り投げる。
どかんどかんといろんな所が爆発してなんだかちょっと楽しい。
近くにいる人たちにはびゅんっと近づいて首を落とす。
「うわぁああああああ!!!?」
「あんたのせいだぞクソ領主!」
「助けて…お願いします!」
叫び声がどんどんうるさくなっていく。
まぁ数が減っていけば静かになるでしょうとどんどん腕と足を動かしていく。
「ゆ…許して…私には子供が…」
女の人がまだ幼い魔族を抱えて涙を貯めた目で私を見てくる。
あ~どうしようこれ?前から子供はちょっと殺しにくいなぁとは思っていたけれど最近は特にそれが顕著だ。どうしても娘二人の事がちらついてしまうからかもしれない。
う~ん…と私が動きを止めていると女魔族が子供を私に投げつけてそのまま逃げた。
「そういえば魔族は子供を基本ほったらかしにしてるんだっけ」
マオちゃんがそう言ってた。
でもさっきは家族の仇とか言ってた子もいたし良く分からんものだね魔族って。
とりあえず逃がすわけにも行かないので適当に炎の魔法で女魔族さんをこんがり焼いた後、子供たちはやっぱり殺す気にならなかったのでその場に捨て置くことにした。強く生きるんだよ。
「さて…たぶん残ったのはもう領主さんだけかな」
「お、お助けを…魔王様に忠誠を誓います…なのでどうか…」
「忠誠、誓ってくれるの?」
「誓います!誓いますぞ!何でも言ってくだされ!!」
「じゃあ死んで」
「え…」
その顔面に拳を叩きつけると、まるで卵のようにくちゃっと割れた。
気持ち悪い感触と音だ。
そんなこんなでとりあえず最初の領地での仕事は終わったのでいったん帰ることにした。
お願いされている場所がもう数か所あるのだけれど、一か所ずつ時間を置いたほうがいいとも言われているので今日はこれでおしまい。
というわけで魔王城に帰ると…明らかになにやら怒っている様子の仁王立ちしたマオちゃんと、すさまじく美しい態勢でマオちゃんに土下座しているクチナシと、申し訳なさそうに正座しているメイラがいた。
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