第57話人形少女は優しく見守る
メイラがようやくその気になってくれた。
どうしてかはよくわからないけれどずっとご飯を食べてないみたいだったからすごく心配してたんだよね~。
やっぱりお腹がすいてるとイライラしちゃうし力も出ないからね。
「じゃあはい、メイラどうぞ」
ご飯として連れてきた二人をメイラの前に投げ出した。
私のお金を盗んだ人と果物屋のおばあさん…と見せかけて話を聞いてみると最初から共犯で親子なのだそうだ。
メイラが食べやすように少しだけ糸をほどく。
「ぶはっ!お前ら何なんだよ!金なら返しただろ!」
「こんなところに連れ込んで…もしかしてあんたらそういう性癖でもあるのかい」
おばあさんが何やら不思議な事を言う…なんだよ性癖って。
ちなみにだがこの二人を選んだことに他意はない。たまたまお金を盗まれたからちょうどいいか~ってだけ。
「この人たちリリさんのお金を盗んだんですか?」
「うん~返してもらったけれどね」
「じゃあ悪い人なんですね」
「うん」
「じゃあいいんですよね?本当に…いいんですよね」
「おーけーおーけー」
もうとっくに食べる気だったのにさらに理由をつけようとするのはなんなのか…でもまぁそれでご飯が美味しく食べられるのならぜんぜんいいんだけどね。
「じゃあ…いただきます」
メイラが最初に目を付けたのはおばあさんのほうだった。
意外だな~若いほうが美味しいのかとなんとなく思ったんだけど…いや、好物はとっておくタイプなのかも?そもそも味って違うのかな?う~んわからん。
「い、いただきます…?なんだいあんた…私に何をしようと…」
「あ~~…」
困惑するおばあさんをよそに…口を大きく開けたメイラがその喉に噛みついた。
「あ…がふっ…!?あっがぁ…?!!」
「お、おい!?なにやってんだ…お前かあちゃんに何やってんだよ!!!?」
噛みついたまま目を見開いてじっとしていたメイラだったが…やがでそのまま喉を嚙みちぎった。
派手に血をまき散らしながらおばあさんが倒れる…うわぁなんかすごい痙攣してる…こわ~。
というかこれ部屋よごしちゃうかな?あとで怒られるかも…?と思ったが不思議なことにおばあさんの血は身体から噴き出した後、どこも汚さずひとりでに空中に集まりだしそのまま大きな赤い水玉になって浮いている。
そしてメイラはしばらく茫然と咀嚼を続けて…口の中の物を飲み込むと同時に顔を抑えた。
「どうしたの?おいしくなかった?」
「いえ…ちがうんです…」
顔を上げたメイラは…とってもかわいく笑っていた。
「おいしい…すっごくおいしい!!」
「そっかそっか、よかったね。ほらまだまだお腹すいてるでしょう?いっぱいお食べ」
「はい!」
今まで我慢していた反動からか、そこからはもう面白いほどにおばあさんをむしゃむしゃと食べだした。
血はどんどんと空中に溜まっていっている。
おばあさんは喉がなくなってるから声も上げずに食べられている。
ほほ~賢いなぁ…これならご飯も静かに食べられるしいい方法だ。
「ひぃ!!?なんだよ…なんなんだよこれは…!!!?」
男のほうは何やら大声をあげだすのでまた糸で口を塞いであげた。
「ごめんね、静かにしてあげて。メイラにとって久しぶりのご飯なの…ね?」
「んー!…んふーーーーー!?」
頼んでも暴れようとしたりする男に少しだけイラっとする。
「もう一度言うね、静かにして?ね?」
顔を正面にして目を覗き込みながらお願いするととっても静かになった。
うむ…やっぱり真摯にお願いするとお願いって聞いてくれるもんなんだな~。
「ふぅ…」
「ん?終わった?」
「はい、少しだけ落ち着きました!」
嬉しそうなその表情に私まで少し嬉しくなってくる。
「あれ?骨はいいの?」
「ええ…骨はちょっとあんまり…」
おや?前は骨まで美味しくいってた気がするのは気のせいだろうか?まぁいいか。
「この血は?」
「あ、そっちはちゃんといただきます」
メイラが口を大きく開けると血の玉がメイラの口の中に流れていく。
そのまますごい勢いで飲み干していくのだけれど…この体積とか容量とか明らかに無視してるのすごいよね~ほんと。
「ふぅおいしかった…」
「よかったね~こっちはどうする?」
「あの…恥ずかしいんですけど…」
「うん?」
「そちらも今いただいていいでしょうか…」
もじもじと顔を赤らめながら上目遣いでそんな事を言うメイラ。
「え…いいと思うけど…」
「え、えへへ…じゃあいただきますね」
「んーーーーーーーーー!!んんんん-ーーーーー!?」
何が恥ずかしかったのだろうか…?よくわからないけれどメイラの中の羞恥心がそれを恥ずかしいと思うらしい。
大食いだと思われたくないとか?わからん…。
そんなこんなでもぐもぐと食べるメイラを横目に見ながら私も果物を口にした。
うん、おいしい。
「ごちそうさまでした」
「満足した?」
「…えへへ」
「まだなのね」
結構な食いしん坊ちゃんでした。
「じゃあどうする?もう少しご飯探しに行く?」
「いや~でも…う~ん…今日はもう探しに行くような気分でもないような?」
「じゃあもう寝ちゃう?具合は良くなったの?」
「あ、はい!おかげさまで少しだけお腹も満たされたので体調はばっちりです!」
じゃあ少し早いけれど寝る準備かな~っと考えていたところで、部屋の扉の鍵が開けられた。
そして案内してくれた男たちと…さらに知らない男たちが数人入ってきた。
やたらとキラキラした宝石がついた趣味の悪い服を着ている。
「え~と?なにか用ですか?」
とりあえず聞いてみたけれど男たちはニヤニヤしているだけで答えようとはしない。
「どうです?上玉でしょう?」
「確かにな、二人ともなかなかのみてくれではないか」
「ええそうでしょう!そうでしょう!」
「本当にこの二人を自由にしていいんだな?」
「もちろんでさぁ!そのかわり…」
「わかっとるわ。事が済み次第、適当な金額を言え」
「あざーーーっす!」
そんなよくわからない会話を繰り広げる男たち。
というかなんで勝手に部屋に入ってきたの?レディの部屋ぞ。
「あぁ~リリさんこれあれですね」
「あれ?」
「私達みたいなのを騙して連れ込んで…その…えっちな事を無理やりするみたいな…」
「あらまぁ」
なんてこった。親切な人だなぁって思ってたのに裏切られたわよさ。
「おいそこの女ども、痛い思いをしたくなかったら服を脱げ」
「大人しくしていれば貴様らも楽しめるぞ?ぐふふふ」
男たちがニヤニヤしながら近づいてくる。
気持ち悪いし不快だなぁ…というかエッチな事ってなんだよ、私の身体はマオちゃんの物なのに!きゃっ!大胆発言しちゃった!
というのは置いておいて。
「メイラお代わりする?ご飯のほうから来てくれたけど」
「そうですね。探しに行く気分ではないですが出されたものならきれいに食べる主義です!食べ物は無駄にしない!元宿屋の娘として譲れない部分です!」
「そっか。じゃあ私は寝る準備でもしようかな」
「は~い」
メイラの綺麗な口から、真っ赤な舌がぺろっと一瞬だけ見えた。
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