第54話人形少女は旅行する

「と、言うわけで…今度は帝国?ってところに行ってくるね!」

「またえらく突然だねリリは。別れてから10分くらいしか経ってないのに」


メイラと急遽旅行に行くことになったのでマオちゃんには報告しておこうと思ったんだけどマオちゃんはなんだか少し困り顔だった。


「うん!今さっき決まったからね!」

「ははは…うん。行ってらっしゃい」


「行ってきます!ところでお土産は何がいい?なにか美味しい物とか知ってるかなぁ?」

「う~ん…私は人間の住処になんてほとんど行ったことないからね~わかんないや」


「そっか~」

「あぁでも気を付けてね。帝国ってうちと戦争真っただ中だから」


なんてこった。

そんな危険なところに招待しやがったのかあの野郎!


「知らなかったのね。まぁ私達魔族と人間たちなんて年中戦争してるんだけどね。だけどあそこはその中でもさらに特殊でね…私、というかアルギナの言うことにもあんまり従わない血気盛んな魔族とか積極的に侵略しろって言ってくる過激派とかがいるんだけど、それを食い止めてるのがあの帝国。まぁ実質的に私たち魔族が人間を強引に侵略できない最大の理由だね」

「へぇ~すごいところなんだね~」


「うんうん。だから一応気を付けるんだよ?」

「はーい!」


────────


「って会話があったから気を付けようねメイラ!」

「ひぇぇぇぇえ…」


荷物の準備を終えて二人で魔界を旅だったので、ふと思い出したことを教えてあげたのにメイラはがたがたと震えだしてしまった。


「どしたの」

「いや…だって…怖いじゃないですか」


「だいじょうぶだいじょうぶ~大人しくしてればばれないよ」

「う~…だといいんですけど…」


「というかさ、私ってただのモンスターだしメイラも悪魔じゃん?魔族じゃないし案外受け入れてもらえるんじゃない?」

「私には余計にダメな気しかしないのですが」


メイラは細かいなぁ~もっと緩く生きたほうがいいと私は思いますですよ。


「あっ!というかリリさん!」

「ん?」


「そういえば私って角が生えてるんですがどうすれば!?」

「あ」


ほんとだ。どうするんだこれ?

完全に忘れてたよね。これは大変だぞ~?


「背中の翼みたいに収納できないの?」

「無理ですね…」


メイラは実に悪魔的な蝙蝠っぽい翼があるんだけれど普段は引っ込めることができるらしく見えない。

しかしその右の側頭部からねじれるようにして上向きに生えている角はどうしようもないみたい。


「帽子被る?何個かあるし私の貸そうか?」


メイラに手持ちの中で一番大きい帽子を被せてみたものの…。


「これ完全に浮いてますよね」

「浮いてますな」


角が長すぎてどう見ても不自然だった。


「う~ん…どうしたものか」

「あの、やっぱり私は留守番で…」


「ここまで来て何言ってるの~何とかなるって~」


とりあえず角を触ってみる。

硬くてすべすべしてるけどごつごつもしてて…不思議な手触りだ。

せめて半分くらいの長さなら帽子で隠せそうなんだけどなぁ………。



折るか。


「てい」

「え!!!!!???」


手刀で根元近くのあたりから折ってみた。

わりとあっさりといったので良かった。めちゃくちゃ硬かったらどうしようかと。


「これくらいなら帽子で隠れるね!」

「え、ちょっ…折った…?ほんとに!?え!?折っちゃったんですか!?えぇぇえ!?」


「うん、はいこれ折れた角」

「これって折っていい物だったんですか!?」


「さぁ?」

「さぁ?って!無責任んんんんんん!!!!」


なんだかメイラがとっても元気だ。

うんうん最近はなんか暗い表情をしてる時があったから心配してたので安心した。


「でも何ともないみたいじゃない?」

「…確かに、これといって問題はないような」


「じゃあいいんじゃない?」

「あのでも…悪魔って確か角を折ったらそこから力が抜けて最悪死ぬとか聞いたような…?」


「生きてるじゃん」

「生きてますね…?」


どこでそんな話を聞いたかは知らないけれど現にメイラに何も起こっていないんだしガセネタだったてことだね。


「じゃあはい、帽子を被せてっと…これでオッケー!よし行くよ!」

「…なんか釈然としない」


そんなわけで問題も解決し歩くこと2週間、ようやく私たちは帝国にたどり着いたのだった。


「長かったですね…」

「うん~私は知らない場所には飛べないからさ~お互いに疲れ知らずでよかったね」


「いや私はそこそこ疲れてましたよ…」

「そうだっけ?」


確かに数日くらい私がメイラを背負って歩いていた気もする。


「じゃあ入ろうか」


入国許可証を取り出して門番のような人に渡す。

すると手続きもほとんどなく中に入れてくれたので楽でした。

それよりも気になるのはメイラが喋らなくなってしまったことだ…中に入った途端に、いや少し前くらいからなんだか震えているし口数も少ない。


「どうしたの?」

「いえ…」


「ほんとに疲れた?」

「そういうわけでは…いえ…そうですね。少し疲れてしまいました…先に宿を探してもらってもいいですか…?」


「おっけ~」


本当はまず食べ歩きとかお土産の物色とかをしたかったけれど疲れたのなら仕方がない。

先に宿を探そうではないか。


「なんか食べる?」

「大丈夫です…」


そうは言うけれど食べないと力が出ないだろうから後で食べ歩きのついでに何か持って行ってあげようと思った。

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