第47話人形少女は魔族人間と出会う
「どちら様かな?」
突如割り込んできた謎の人物!
見た目は完全に人間の…少年…いや少女…?どっちだ…?
まぁいいや、中性的な見た目をしたどう見ても一桁程度の年齢の子供だ。
ゆったりとした和服のようなものを着ている…あれはアルギナさんとお揃いにしてる感じなのかな?
とにかくそんな子供が割り込んできてしまったのでどうしたものかなぁ。
「ボクはレイって、いいます」
「これはご丁寧に~あいさつは大事だよねうん。私はリリって言うの、よろしくね」
お互いにぺこりと頭を下げてご挨拶~。
うんうん大事!
「レイ何しに来た!今すぐ逃げるんだ!こいつは…!」
「だめ!ギナさん死んじゃう!」
ギナさんって!愉快な呼び方だな…かなり親密な関係そうだな~…もしかして娘とか?いやでも人間ぽいしなぁ…あ、もしかして!
「あれかな、魔王城にいるっていう人間!」
「っ!そう…です」
ほぇ~…まさかこんな小さな子供だとは思わなかったな…。
「で?今お姉さんたち取り込み中なんだけど…なにかようかな?」
「ギナさんたちを殺さないで、ください」
ばっと両手を横に広げてアルギナさんを庇うように私の前に立つレイ…くん…ちゃん…レイちゃんでいいか。
「う~んレイちゃんあのね?それは出来ないかなぁ~って思うんだけど…ちょっとそこどいてくれないかな?」
「ギナさん殺さないでくれないと、どきませ、ん」
う~ん…どうしようかなぁ…子供はさすがにどうこうしたくないんだけど…でも邪魔するなら仕方ない気もする…。
「レイやめろ!あいつはお前でも遠慮なく殺す…すぐに馬鹿な真似は辞めて逃げろ…!」
「だめ!」
やばい私の悪役感がすごい。
なぜだ!私はこんなにも必死に頑張っているだけだというのに…モヤモヤするなぁ~…もう二人ともぐちゃっと行けばスッキリするだろうか?
「じゃあもう遠慮なく」
「まつ!ボクたち殺すのきっとよくない!」
「…その心は?」
「ボクたち、魔王様の部下!きっと魔王様かな、しむ!」
「む…」
そういえばマオちゃんにできるだけ穏便に済ませてくれたら嬉しい的なことを言われてた気がする…それにアルギナさんは母親みたいな物って聞いたし…メイラちゃんの事も考えると殺しちゃったらマオちゃん悲しむかなぁ…。
でもでも殺さないとマオちゃんとの事を認めてもらえないし…ううん、私の事よりもマオちゃんが悲しむのは嫌だしね。
「じゃあ、うん…わかったやめるよ」
「あれ…思ったよ、り、あっさり?」
「うん、あっさり」
「ギナさん殺さな、い?」
「殺さない殺さない」
「お前…急にどういうつもりだリリ…」
「ギナさん、めっ!」
ぷぷぷ~子供に怒られてる~恥ずかしいんだぁ~!
うんうん面白い物見れたし満足した!アルギナさんはやっぱりこのままにしておこう。
「リリさん!」
「なぁに?」
「ベリちゃん元にもど、せますか!」
「ん~?」
ベリちゃんってのは…多分べリアちゃんの事だよね?
元に戻すとはもしかして人形の身体をってことかな?
「できないです、か!」
「できなくはないよ?でもなぁ~」
人形ボディは割と便利だと思うんだけどなぁ~べリアちゃんも戻りたくないって言うかも!
「べリアちゃんどう?元の身体に戻りたい?」
「・・・」
何も答えないべリアちゃん。
やっぱり戻りたくないのかな?あ、違う!もしかしてかなり「進んじゃってる」のかな?
背後の人形をちらっと見るとやはり私の意志を汲んでくれたようでべリアちゃんを繋いでいる赤い糸がべリアちゃんを引き上げていく。
そしてそのまま数本だけ糸が消えた。
「これで喋りやすくなったかな?で、どう?」
「もどして…もうこんなの嫌…私の身体を…かえして…おねがい…」
ぽたぽたと涙が頬を伝う。
そんなに嫌か…むむむ…まぁ私も最初は嫌だったしなぁ~そんなものか~。
あ、そうだ。
「ねーねーべリアちゃん。少しは私の気持ちわかってくれた?」
「え…」
「いやほら最初に会った時さいろいろやっちゃったからね。私も今のべリアちゃんみたいに自由になれないのが嫌だったの…わかってくれた?」
「わかった…もうわかったから…」
どうやらわかってくれたらしい。
考えてみたらべリアちゃんたちに初めて会った時に戦いになっちゃったことがいけなかったのかもしれないし、今ならあの時の私の気持ちをわかってくれて水に流してくれるんじゃないかな!って思ったけれど大正解だったみたいだ。
これからはべリアちゃんとは仲良くなれそうな予感!
「うん、じゃあ元に戻してあげるね!」
私がそう言うと大きな人形が指を動かす、すると闇の中からまた人形がたくさん出てきてべリアちゃんに群がっていく。
その姿は人形たちに覆いつくされて完全に見えなくなった。
「っ!!!ぅぁああああああああああ!!!!!!!?いぎぃぃぃぃいいい!!っ!!ああああああ!!!!!!」
人形たちの中からすごい絶叫が上がった。
「なんだ…何をしているリリ!」
「べリアちゃんの身体を元に戻してるんだと思うよ?人形にするときと違って元に戻す時は痛いのかも?ま、仕方ないよね」
身体を作り替えるとは簡単な事ではないのだ!たぶんね!
「いや…もうやめて!もういいから…許してお願い…片腕だけでこんな…いや…いやいやいやいやいやいやいやもうい、…っ!────────!!!?」
急に悲鳴がくぐもったような声に変わった。
人形たちが口を塞ぐとかしたのかもしれない。
「とりあえず…これでいいかなぁレイちゃん?」
「…あ、あと…レザくんも」
「ああレザね」
ずっと人形の片腕に握られていたレザ。
忘れてたけどこっちはこっちでちゃんとしておかないとね。
人形がレザを握る腕に力をこめたのが分かった。
バキッっと骨が砕けるような音が連続で聞こえてくる。
「ぐぁあああ!?」
「っ!?なんで!レザくん、殺しちゃダメ!」
「そういうわけにはいかないのよねぇ~」
人形はその力を一切緩めずにゆっくりゆっくりと力を加えていき確実にレザの身体をつぶしていく。
「なんで!魔王様、きっとかなしむ!」
「いやでもレザ君は二回目だからさ」
「くっ!させるものか!」
「アルギナさんはおとなしくしてて」
大きな人形があいているほうの手でアルギナさんを押さえつける。
「やめて!やめて!レザ君かえして!」
「あのね、レザ君はね?この前ゆるしてあげたばかりなの。私レザ君に酷いことされてね、とっても悲しかったんだ~だけどマオちゃんが許してあげてって言ったから許してあげたの。なのにレザ君はこんなことをしたの。ここで許しちゃったらレザ君はまた同じことをする…だからもうダメなの。悪いことをしたらその報いは受けないと…おかしいでしょう?」
「がっ…!ごほっ…!」
レザ君のいろんなところから赤い血が噴き出してくる。
痛い思いをしないとわからないだろうから痛くしてもらってるけど…そろそろ可哀想だから一思いにやってあげて。
人形の腕に最後の力が籠められようとしたその時。
「リリ」
私の誰よりも大好きな人の優し気な声が聞こえた。
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