第46話人形少女は認めてもらいたい
それにしても大変なことになった…急に頭に浮かんで使えるようになった謎の力「惟神(かんながら)」。
よくわからないままアルギナさん達と戦ったけれど…結果はまずまずだ。
誰も殺さずに動きを止めることができたし、よくわからない人は帰っていったのでとりあえずは解決!ってわけにもいかないのでこれからは楽しい楽しいお話合いである。
「と、いうことで…とりあえず私の勝ちってことでいいかな~?」
「ふざけるな!私はお前には屈しない!」
アルギナさんが私を射殺さんばかりに睨みつけてくる…なぜここまで嫌われてしまったのか…理由がさっぱりわからない。
神都の調査報告が気に入らなかった?メイラちゃんを連れてきたのがダメだった?
でもでも私は私にできることを十分にやったと思ってる。
だからそこで嫌われてもどうしようもないわけで…。
「アルギナさん~仲直りしましょうよ~悪いところがあったら直せるように努力はしますし…ね?」
「なら今すぐべリアを元に戻せ!」
「え~…だってべリアちゃん暴れるじゃないですか。なのでダメです!」
めっちゃ刺されたし斬られたしで大変だったんだこっちは。
今はそれこそ文字通り人形のようにおとなしくアルギナさんの動きを止めてくれている。
今のべリアちゃんとならすっごく仲良くなれそうな気がする。
「お前はいつだってそうだ…自分勝手に行動してその結果周囲がどうなるかなんて考えもしない…お前は災害だ!のうのうと生きていていい存在じゃない!」
「それはさすがに酷いなぁ…生きるのは自由じゃないです?せっかくここ最近生きることが楽しいって思えるようになったんです!だから私はこれからも生きますよ!」
「そのお前の自由でいくつの命が踏みつぶされていくと思っている!」
「さあ…?」
さっきからアルギナさんが怒ってるのは分かるけど…なんで怒られてるのかは分からない。
いやでもここで考えなくなるのは私の悪い癖だうん…「あの事」もあるし私も少しは成長しないといけないところまで来てる…だから考える。
察するにアルギナさんは私が生きていることが嫌…らしい。
そしてその理由は私が生きることで死ぬ命がある…?
「それって普通の事じゃないです?」
「なんだと…?」
「ありきたりな事言いますけど私に限らず生き物って生きてる限り何かを殺して生きてるでしょう?それで死ねって言われたら…生き物なんて絶滅しません?」
アルギナさんだってお肉とか食べてるし…私だけ責められるいわれはない気がするよ!
「お前は…まさか今までの自分の行動を省みてもそう言い切れるのか…?」
「…?」
「今までいたずらに命を奪ったことは無いと言い切れるのか!!」
「うん」
私は別に殺すことが好きなわけじゃない。
必要ない命を奪ったりはしておりません!ふふん!
「…か」
「ん?何か言いました?」
「お前に…アルを渡せるものか!」
「…アル?」
なにそれ?渡せるか…?何のことだろう…。
「あぁそうだお前は名前すら知らないのだろう!アルソフィア…私の大切な娘だ!」
誰だろう…?さっきの龍神とか言ってた人?いや…もう少し違う感じの名前だったような…。
待てよ?娘って言ったよね。
そういえばなんか最近そんな話を聞いたな…。
「あ、もしかしてマオちゃんの事?」
「お前があの子の何に関心を持ったのかは知らない…だが絶対にお前はあの子の未来を壊す存在だ!これ以上…あの子に近寄らせはしない!」
酷い言われようである。
しかしそれは困った…もしかしてこれはあれかな…娘はやらん!てきな。
ふむふむ…ということはだよ?ここはアルギナさんをなんとか認めさせないとマオちゃんとあんなことやこんなことができない!?
えらいこっちゃ!!!!
「それは困るよ~どうしたら認めてくれる?」
「認めないと言っている!私が生きている限りあの子の未来は私が守る!必ずだ…!いつか必ずお前を…!」
「な~んだ!よかったぁ~…」
「は…?」
いやぁほんとによかった…。
前世でうろ覚えだけどなんかの話で娘が欲しくば貴重な枝を持ってこいやら玉を持ってこいやらの無理難題を吹っ掛けるみたいな話があったから緊張しちゃったけれど…「簡単なお題」でよかったよかった~。
「生きている限り…つまり「アルギナさんが死ねば認めてくれる」んですよね?」
「な…っ!」
娘が欲しくば俺を倒してみろ!パターンだったらしい。
シンプルでとってもいいと思います。
「じゃあアルギナさん…私たちの今後のために死んでください」
私の背後の大きな人形がレザを掴んでいない左腕を大きく振り上げる。
この子はなんなのかいまいちわかってないけれど…今はいい。
とりあえずアルギナさんを殺して認めてもらわないとねっ!あ、このままだとべリアちゃんも巻き込んじゃうな?
でも今動かすとアルギナさんも逃げちゃうかもだし…。
ま、いいか。
べリアちゃんもアルギナさんに味方してたし大丈夫でしょう。
きっと認めて欲しければ私も倒していきなさい!とか言っているに違いない。
「べリア!動けべリア!このままではお前も…!」
「だ、め…うごけ、な…い…」
二人仲良く会話しているところを見ると私の考えは間違っていなかったようだ。
ならもう遠慮はいらないと私は人形の腕を振り下ろした。
「まって…!」
ちりーんと軽い鈴の音のような音が鳴った。
そして誰かがアルギナたちと人形の間に割り込んできたので慌てて腕を止める。
その巨大な関節からバキボキと大きな音を鳴らしながら腕が戻って来た。
背後の顔をちらっと見ると口も眉もないから表情が微塵もわからないけれど…なんとなく不満そうだった。
さて…問題は割り込んできた誰かだけど…。
それは小さな子供のように見えた。
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