第36話人形少女は報告する
あ~あ~本日も晴天なり~…いや魔王城の周りはいつも曇ってるから晴天ではないけれど一仕事終えた私の心はまさに晴天の霹靂!
そんなこんなでるんるん気分でマオちゃんとアルギナさんに報告に来たのだけれど…なんだか微妙な空気が流れていた。
「…つまり、リリとしてはもう現地でやることは終えたと判断したわけだな?」
「うん」
何故か大きなため息を吐くアルギナさん。
え?何かまずかったの?
「私としてはもっと長期…数年がかりの仕事にしてもらうつもりだったのだけれど…まだ一週間ほどしかたってないな?」
「うん」
そんなこと言われてもどうしようもない。
そもそもあれだけ騒ぎがあったら私の顔なんてもはや化粧しても関係ないくらいに周知されちゃっただろうし…あれ以上調査したいのなら私には無理だと思いますです、はい。
マオちゃんはそんな私を見てくすくすと笑っていた。
「…まぁいい。確かにいろいろと起こったみたいだからな…それでそっちの悪魔はなんだ?」
おそらく私の隣のメイラちゃんの事を言っているのだろう。
無事に神都から脱出した後、そのまま捨てていくのは気が引けたので空間移動でここまで連れてきたのだ。
「さっき話したメイラちゃん。とりあえず連れてきたんだけれど…ここに住まわせてもいいかなぁって」
「ダメだ」
まさかの即答である。
無慈悲なるアルギナさんの一撃。
「もうちょっと考慮してあげてよ~帰る場所もなくて可哀想でしょ~」
「話に聞くとそいつは悪魔だ。ここに置いておくわけにはいかない」
「魔族と悪魔って何か違うの?同じような物じゃないの?」
「違う」
「リリ…それはたぶん…怒られるやつだなぁ」
アルギナさんだけじゃなくてマオちゃんからもバッサリいかれてしまいました。
「そうなんだ?具体的にどう違うの?」
「何もかも違うとしか言えないな…」
「ふーん…人間と魔族くらい違うの?」
「いや…なるほど、そこからか」
「あのねリリ、私達魔族と人間はそんなに違いじたいは無いの。人間の価値観で言うのなら私たちは亜人とでも言うのかな?原点は同じだけれど進化の過程で別れたのが魔族と人間」
よくわかるマオちゃんの解説コーナーが始まった。
なんというかマオちゃんの声はとってもきれいだからスッと入ってきていいなぁ~。
「ほうほう、で悪魔は?」
「悪魔はだから生物として違うの。魔族は人間に近いけれど、悪魔はモンスターに近いって感じかな?」
「なるほど!マオちゃんありがと!」
「どういたしまして」
にっこりとした笑顔をマオちゃんが向けてくれた。
なんというか…。
「マオちゃんなんか雰囲気変わった?喋り方も」
「そうかな?…うん、そうかもね。変かな?」
「ううん、かわいいよ!」
「そっか」
「…とにかく、その悪魔にここをうろつかれるのは困る」
そして最初に戻ってしまった。
「え~…いいじゃないですか~暴れたりもしないですよたぶん。ね?メイラちゃん」
「え、あ…はい!」
「ダメだ。そいつは悪魔の中でも質が悪い…暴食の系統なのだろう?」
また知らない言葉が出てきたなぁ…知識がない人に専門の言葉を使ってくるのやめてほしい。
まぁ語感から想像するのならめっちゃ食べる悪魔ってことかな?
「でもでもメイラちゃんって食べるの人間だけみたいだよ?魔族には食欲湧かないって…だよね?」
「ええ一応…食べたらおいしそうだなとは思いますが…食欲は特に感じないですね…」
「ほら安全」
「いや…微妙に安全じゃなかったと思うが…人を喰うやつを置いておけないと言っている」
なんでそこまで頑ななのか…人間がいるわけじゃないしいいじゃないか。
そもそも魔族と人間って仲が悪いんでしょう?問題ないじゃん!
「リリ、実はここね…人間が一人だけいるの」
「え?ほんとに?」
「うん。私の部下にね、まだ紹介はしてなかったけれどアルギナと一緒にいろいろやってもらってる子がいるんだ」
「・・・」
「なるほど…それはまぁ確かにまずいかもねぇ~」
なんで人間が?と思わない事もないけれどいるのなら仕方がない。
アルギナさんの様子を見るに大切な人っぽいし反対するのも納得だ。
となると…メイラちゃんはどうしようかなぁ…うーん。
「しかしアルギナ。話を聞いた感じさすがにすぐに放り出すのは可哀想だ。せめて少しの間だけでもどうにかならないかな」
「…わかった。リリにかしている部屋を一緒に使ってくれ…ただし部屋から一歩も出るな。もし出た場合はこちらも実力行使にでる。必要なものは後で届けさせる」
うーん…それはちょっと厳しすぎる気もするけれど…。
「どう?メイラちゃん」
「置いていただけるだけでもありがたいので…それに私もなんの罪も恨みもない人を食べるようなことはしたくないのでむしろいいかもしれません」
健気な子だねぇ…そこまでしてあげる義理があるかは微妙だけれどちゃんといつか居場所を見つけてあげよう。
そうすればあのメイラちゃんの両親もうかばれるだろう。
少しだけしか見なかったけれど、幸せそうに団欒していたメイラちゃんたちの姿が脳裏をよぎった。
「家族、か…」
「ん?リリどうかした?」
「ううん、何でもないよマオちゃん」
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