第31話人形少女は突然の出来事に困惑する
「なんじゃこりゃ」
マオちゃんとの楽しいお茶会を終わらせて神都に戻って来た…のはよかったんだけど何やらすごいことになっていた。
お世話になってるメイラの宿に空間移動で帰ってくると誰もおらず…外に出るとあら不思議、何やら大声が聞こえたり向こうのほうで火が上がってたりして大騒ぎ。
お祭りかな?
「出店とかあるのかな~くそ~お土産買うタイミング間違えたかな~?」
りんご飴とかいろいろあったら悔しいなぁ~…はぁ…悔しいから屋台探して食べてやる!
人形だし多分太らないでしょう。
というか私って食べたものどこに行くんだ?トイレなんか行ったことないし…もしかして中に溜まってるとかないよね…?え、ほんとにないよね…?
はからずとも恐ろしい可能性を想像してしまった…。
もういいや、早くお祭りを見に行こう。
そんなこんなで声のするほうへ足を進めていたのだけれど何やら様子がおかしい。
人の声は歓声というよりは悲鳴だし、火も何が燃えているのかと思えば建物がファイアーしている。
しかも何というか…鉄臭い…これは血の匂いかなぁ?さっきも結構嗅いだし間違いない。
「もしかしてかなり物騒なお祭りなのかな…こわ~」
これは出店の食べ物なんて期待しないほうがいいな、うん。
まぁでも怖いもの見たさで見学はして行きたい。
そこから数十分…教会に向かう道をたどっていたところ人がこちらに向かって必死の形相で走ってくるという光景に遭遇した。
「もし、そこの人。これってなんのお祭り…」
「どいてぇえええええ!!!」
走っているお姉さんに話しかけてみたのだけれど一蹴されて走り去っていった。
「ええ~…」
なんというか…必死が過ぎるね!もう少し余裕を持ってもらいたい。
仕方がないのでさらに騒ぎの中心に向かって進んでいく。
「おお…すごぃ…」
教会に近づくにつれ地面や建物から赤い色の大きな棘が突き出しているのが見えるようになった。
近づいて見てみるとサビているようで、触ると何とも言えない引っかかるような感じがした。
そしてさらにさらに目を凝らして見てみると棘の何本かには人が串刺しにされていた。
「おぉ~…さてはこれお祭りじゃないな?」
衝撃の事実に気づいてしまった私だが…どうするかな…。
帰ろうか?
でもでもここで何が起こっているのか調べて報告すると私の評価点はアップするかもしれない!
さっきの騒動でアルギナさんを少し怒らせちゃったみたいだし、ここで印象アップと行こうじゃないか!
そうと決まればダッシュだーっしゅ!
棘が多く生えているほうに行けば元凶がわかるはず!
目指せ好感度アップ!
_________
「うげぇ…おぇぇぇっ…うっぷ…」
建物と建物の間に隠れて、一人の少女が必死に「食べた物」を吐き出そうと努力していた。
「なんで…なんで私…あんなことを…」
少女の両手は血で染まっており、溢れてくる涙を拭おうとすればその真っ赤な鉄の匂いが鼻腔を刺激した。
本来ならそれこそ吐き気を覚えそうなものだが少女…メイラにとってそれは何より食欲を覚えてしまうものだった。
「違う!ちがうちがうちがう…こんなの美味しそうなんかじゃない…!人なんて食べない!!こんなの私じゃない…この髪も腕も翼も私の物じゃない!!!目が急に見えるようになったから混乱してるだけなんだ…!」
頭を押さえて必死に自分を納得させようとしているメイラ。
彼女が意識を取り戻したのは突然だった。
悪魔としての本能のまま「食事」を続け、30人ほど食べたあたりで小腹が満たされ…そこで意識を取り戻した。
メイラは困惑した。何が何だかわからなかったが、だんだんと自分が何をしたのかの記憶を認識して…震える自分の手に丸い何かが握られていた。
それは人の頭部で…剝き出しになった眼球がメイラを見つめていた。
そして彼女は…それを美味しそうと思って…慌てて投げ捨てた。
そして今に至り…現在メイラはぐちゃぐちゃになった頭で半狂乱になりながら自分を殺さんと追ってきた神聖騎士達から逃げていた。
「おい!いたぞ!こっちだ!」
「メイラ・アルセ!大人しく我々と来い!これ以上罪を重ねるな!」
「ひぃ…!」
ただでさえ自分が人を食べたという事実に混乱している少女にとって、騎士から武器を突き付けられ殺されようとしている状況を受け入れ切れるはずもなく、一心不乱に逃げ出してしまう。
そしてそのたびに彼女の身体の傷から血がこぼれ、その意志とは無関係に棘を生み出し被害を広げていく。
「ひっ…いやぁあああああ!悪魔憑きよ!騎士様達!!」
「やめてやめてやめてやめて!私はそんなのじゃないぃぃぃ!!」
逃げた先で一般人と遭遇し悲鳴をあげられてしまう。
やめて悲鳴をあげないで、私の居場所を知らせないで、悪魔と呼ばないで…!
そんな思いが彼女の心を支配し、気づけば目の前の人は棘に串刺しにされていた。
ごくり
目の前の血の滴る死体を見て、喉が鳴る。新鮮で美味しそう…いや食べるときっとおいしい。
そんな考えを何とか頭から追い出そうとするが食欲を抑えることができない。
「もう…いやぁ…助けて…誰か…助けてよぉ…」
少女が流した悲痛の涙も血の海に溶けて消えていく。
「見つけた…!」
そんな言葉と共に誰かがメイラの腕を掴んだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます