第25話人形少女はお土産を買う
「リリさん、お待たせしました」
「おかえり~」
メイラがやっと戻って来た。
一人で待ちぼうけしてるのは暇すぎて周囲の散策にでも行こうかとも思ったけれどメイラには宿を紹介してもらった恩もあるし、少しは合わせてあげるべきだろうと思った所存ですハイ。
「これからどうしますか?」
「う~ん…」
もう少し街を回りたいけれど…またここみたいなところに連れていかれたらしんどいので遠慮したい気持ち…なのでとりあえずは今日は探索はこの辺にして別の事をしたいのです。
かといって何があるかと言えば…どうしよう…。
あ~…なんかいろいろとめんどくさくなってきたなぁ…マオちゃんとお茶でもしながらのんびりしたい~…。
あ、そうだマオちゃん。この前顔を出した時マオちゃん忙しそうだったし何か差し入れを持っていくのはどうだろう!もしかしたらアルギナさんも許してくれるかもだし。
「このあたりにお土産屋さんってある?」
「お土産…リリさんもう出ていくんですか?」
「いやいや、ただ出ていくときに買っていくものを下見しておこうかと思ってね~」
「なるほど…どんなのがいいです?」
「食べ物かなぁ」
「わかりました、じゃあ特産物とか売ってるところ案内しますね」
そして再び、メイラの案内のもと神都を歩く。
もう何回も言ってしまうけど本当にスイスイ歩きおるねこの子。
そして相変わらず周りからは謎の視線とひそひそ声…なんなのホント。人間怖いわ~。
まぁいいや。今はマオちゃんとのお茶にぴったりな食べ物を探すのが先決!
「リリさん、このあたりはずっとお菓子を売ってるお店ばかりですよ」
「おお~いっぱいあるねぇ」
ずら~っとお店が並んでいる。
ケーキのようなものや、クッキー状のもの…瓶に入ったオシャレそうな謎のお菓子などより取り見取りだ。
マオちゃんどんなのが好きかな~紅茶ばっかり飲んでるから紅茶に合うのがいいよね~。
まぁ片っ端から買ってみるか!
まずはケーキ屋のようなところに入ってみる。さすがに前世のような小綺麗な感じじゃないが不潔感とかはないし十分綺麗だ。
「いらっしゃいませ~」
エプロンを着たお姉さんがやってきて笑いかけてきた。
うむ、営業スマイルが眩しくてよろしい。
「なにかおススメあります~?」
「おすすめですか?こちらなど季節ものの果物を使っておりまして~」
長ったらしいお姉さんの説明を聞き流して勧められたものを適当に買ってみた。
聞き流すのになんで聞くのかって?なんでだろうね!
そしてケーキを受け取る際にお姉さんが小声でひそひそと話しかけてきた。
「あの…外の子…あなたあの子に案内してもらったの?このあたりでは見かけない服装だし旅の人よね?」
「ん?」
お姉さんの視線をたどるとお店の外にメイラが立っていた。
ありゃ入ってこなかったのね、遠慮しないで入ってくればいいのに。
「メイラのこと?うん、案内してもらってるの。最近来たばっかでね~宿もかしてもらってるんだ~」
「…悪いこと言わないからあんまり関わらないほうがいいわよ」
「…?なんで?」
「あの子ほら…悪魔憑きだから」
悪魔憑き?なにそれかっこいい。
俺の右腕が疼く…みたいなものだろうか?
「危ないの?」
「いや…不気味でしょう?」
「何が?」
「あの子…教主様のお話の最中に教会で急に視力がなくなったのよ…邪悪な魂を持っていたから神様から神罰が下ったんだってみんな言ってるわ」
マジかよ。神罰とかあるのこの世界…私もしかして危なかったんじゃ?
「し…神罰って…?」
「いや詳しくは知らないけれど…見たことないし…でも目が見えなくなったのにすぐに何事もないかのようにふるまえたり色々不気味よ…一緒にいるのもよくないわきっと」
なんだ噂の類か…よかった~神罰なんてものが日常的にあったらさすがにアルギナさんに抗議するところだったよ!
「へ~」
「よかったら別の宿紹介しましょうか?」
「別にいいよ~めんどくさいし…じゃあケーキありがと~」
「え、ちょっと!」
話を切り上げて店を後にする。
あのまま話しててもつまらないしね~。
「あ、リリさんおかえりなさい。いいもの買えました?」
「うん~」
じっ~とメイラを凝視してみる。
あらためて見てみると確かに…なんだか普通の人間とは違ったものを感じる…なんだこれ?
別に強いだとかはないんだけど…不思議な力の塊のようなものがメイラの目を中心に存在している…みたいな。
「どうかしました?」
「別に~?」
まぁ私には関係ないか。
悪魔憑きとかも別にどうでもいい。だって私も人形だしね!
「あの…もしかして私の…悪魔憑きのこと聞いてしまいましたか?」
「およ」
なぜバレたし。
「図星みたいですね…すみません隠すつもりはなかった…いえ、ありました」
「あったんかい」
「ごめんなさい…どこか別の宿紹介しますね」
そういってメイラは少し悲しそうに笑った。
なんでそう別の宿を紹介したがるの…?
「ええ?いいよそんなの。荷物移動させるのとか面倒だし…」
「え…でも私とはもう居たくない…ですよね」
「いやべつに」
「え」
「だって悪魔憑きだとか私に関係ないし。どうでもいいよそんなの」
「…ですか」
う~ん…何か嫌だなぁこの暗い感じ…どうしたものかなぁ…そもそもなぜメイラはそんなに落ち込んでいるのか…。
「悪魔憑きって言われるの嫌なの?」
「…そりゃそうですよ」
「かっこいいのに」
「あはは…リリさんは言われたことないからそんなこと言えるんですよ」
「そう?言われるくらい大したことじゃないじゃん」
「大したことですよ…私は何もしてないのに勝手に怖がられるんですから」
「いや怖がられては無いと思うけどなぁ」
「はい?」
怖がるというのは少し前の私が縛られたり封印されたりするというのを考えたときの…あの気持ちの事を言うのだ。
だとしたら周りの人間のそれは怖がっているとは言えない。
「本当に怖がってたとしたら、君にあんな態度はとれないよ。君の事怖いとか思ってないからひそひそ悪口言ったりできるんだよ」
「…それは…確かに…」
「ね?別に悪いことしてないんだし堂々としてたらいいじゃない。君は自由なんだから。生きてることに感謝して人生楽しもうよ」
「リリさんってやっぱり優しいんですね」
なぜそうなったのか。
今の話に優しい要素は果たしてあったのか…わからないけれどめんどくさいから何も答えずにお菓子を買いあさったのでしたとさ。
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