第21話人形少女は教会に行く

「ところで教主様って?」

「え~っと、この神都で一番偉い人…と言えばいいんですかね」


「へぇ~そんな偉いのか…その人の話を急に行って聞いていいの?」

「教主様のお話は誰でも聞けますよ。主神様のありがたい教えを説いてくれるんです」


やっぱりどう聞いてもめんどくさそうだ。

話を聞けば聞くほど行く気がなくなっていく…しかしメイラちゃんはすごくニコニコしてるし今更やっぱやめたとかは言いにくい。

仕方がないので話をつないでいきながら歩くしかないこの悲しみ。


「主神?」

「この神都で信仰されてる神様の事ですね」


「ほぇ~何て名前なの?」

「さぁ…主神様としか呼ばれていないので」


適当だな!それでいいのか神都…まぁ案外そんなものなのかも…?

そんなことを考えていた時、がしゃがしゃと音を立てながら走ってくる集団が見えた。


「そこ!少し道を開けてくれ!」

「おっと、メイラこっちこっち」


危なそうだったのでメイラちゃんの腕を引っ張って道の端によけた。


「え…?」

「ん?どうかしたのメイラ」


「あぁいえ…なんでも」

「?」


「そんなことより何かあったんですかね?」

「さぁ?何かお祭りの準備とかじゃないの?」


「いえ…今の鎧の音は多分、ここを守っている神聖騎士の皆さんだと思うので、何か事件があったのかもしれません」

「ほぇ~」


平和そうに見えるけど物騒なことだなぁ…怖い怖い。

そんなこんなでそこから、数分ほど歩いたところで無事、教会に到着した。

そこそこ人がいる…そんなにありがたい教えとやらを聞きたいのだろうか…?私にはよくわからぬ!


「では、はいりましょう!」

「ほいほい」


無駄になんというか…これぞ神聖!みたいなつくりの教会に足を踏み入れる。

というかこれ大丈夫だよね?モンスターが入ったらなんか聖なる力によって弾かれた!とかないでしょうね?大丈夫だよね?


「大丈夫でした」

「え、なにがですか?」


「気にしないで。これって座るところいっぱいあるけどどこでもいいの?」

「はい、自由だから好きなところに座りましょう」


後ろのほうでいいか。前だとうっかり寝ちゃった時に目立ちそうだしね。

始まるまでもう少しらしいけれど…待ち時間が手持ち無沙汰だ。

映画でもあるよね待ってる間の何とも言えない空気感。まぁ私、前世で映画館なんて行ったことないけどさ!

しかし先ほど歩いてる時もそうだったけれど、ここでもなんだか周りからひそひそ話が聞こえてくる。

こっちのほうをみんなちらちらと見てるみたいだけれど…え?ほんとにばれてるわけじゃないよね?

仮に私がパペットだとバレた場合はどうすればいいのか…みんな殺すのが早いんだけどそんなことしたら追い出されそうだしなぁ…。

それはそれで早く帰る口実になるかもだけど、マオちゃんに私が役に立つところを見てもらいたいし…。う~ん困った。


「あのリリさん」

「ん?」


「リリさんのその…パペットってどんなのなんですか?」

「気になる?」


「少しだけ」


突然どうしたんだろうか?同じく手持ち無沙汰になっちゃったのかな?

別に断る理由もないので懐から小さな人形を取り出す。

モンスターではなく、普通の操り人形だ。これを魔法の糸を使って動かすのだけれど…正直私自身が人形だからいい気はしない。


「こういうのなんだけど…わかる?」

「触らせてもらっていいです?」


「どうぞ~」

「・・・」


なにやら神妙な顔で人形をぺたぺたと触ったり腕や足を動かしたりしている。

ほんとにどうしたの…?


「あの…他にはありますか?」

「他?ないけど?」


「そうですか…ありがとうです」


人形を返却してもらった後も、しばらくメイラは難しい顔をしていた。

私はどうしたのか聞こうと思ったのだけれど、それは突如響いた重たい鈴のような音にさえぎられてしまった。


「あ、教主様が来たみたいですね」

「やっと始まるのか~」


正面にある高い演説台のような場所に男が現れた。

メガネをかけた金髪で長髪の若い男だった。


「アレが教主様?」

「あの足音は教主様のもので間違いないです」


「思ったより若いね。おじいちゃんを想像してたよ」

「先代様のお孫さんで、最近その座を受け継いだばかりなんですよ」


「へ~」


そして教主様とやらが話し始めたのだが…やはり私にはよくわからない話だった。

なにやら小難しい事をぺらぺらとよどみなく話す姿は若干だがすごいな~と思った。


「どんな人なの?教主様」

「いい人ですよ。私の目が見えなくなった時も真っ先に心配してくださったんです」


「ん?それって生まれつきとかじゃないんだ?」

「目ですか?そうですね…数年前に急に見えなくなってしまったんです」


「結構最近だね?それにしては随分と慣れてる感じだったけれど…」

「不思議ですよね。最初は不安でしたけど時間が経つごとに他の部分が鋭敏になっていって…今ではこの通りです」


そんなものなのかな?

ま、私が気にしてもどうにもならないか。


「あ、リリさん。始まるよ!」

「なにが?」


と言った瞬間、教主が大量の紙を上に放り投げた。

その紙は空中でひとりでに鳥のような形に折れていき、教会中を飛び回る。

やがて紙の鳥は教会内にいる一人一人のところに落ちていく…私の前にも一枚…一羽?落ちてきた。

ほほ~これも魔法かな?面白い使い方があるもんだ…。

マオちゃんにやってあげたら喜んでくれるかな?


「何が書いてありました?」

「え?」


「これ開くとお告げが書いてあるんですよ~、いいこと書いてあるといいですね」

「ほぉ~」


おみくじかよ。

なんだなんだ?大吉!とか書いてあるのか?うん?

鳥を分解して中を開く…すると本当に文字が書いてあった。


――少し話がしたい。終わった後、少しだけ残ってくれると嬉しい。


「どういうことやねん」


内容的にはめんどくさいし意味が分からないということで大凶だった。

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