第14話人形少女は朱色に彩る
「死んでも文句ないだと?それはこっちのセリフだ!やれお前ら!」
ガグレールの言葉に従って数人の魔族が私に武器を持って襲い掛かってきた。
私はいつものように腕から刀を出して応戦しようとした…のだけれどめちゃくちゃあっけなかった。
相手が振り下ろした剣を受け止めようとしたらそのまま剣を砕いて首を切断してしまった。
メリケンサックのようなものをつけて殴りかかってきた拳を払いのけようとしたらそのままおもいっきり吹っ飛んで壁にぶつかりつぶれた。
いくら何でも弱すぎない…?
「ちっ!おい魔法だ!魔法で焼き尽くせ!」
そんなわけで私に飛んでくる数々の魔法たち。
火の玉が飛んできた、そこそこの勢いで水が飛んできた、小さな雷が落ちてきた、大きめの石が飛んできた。
いや…何も感じないんだけど?服すら燃えない火に温められて水にぬれて、砂に汚れてマッサージの刺激にもならない電撃…。
「えっと…何か遊んでる…?」
実はクーデターというのも嘘でマオちゃんが仕込んだドッキリとか?
背後のマオちゃんを見る。まぁ私は何故か視界が360度あるので顔は正面を向いたまんまなんだけれども。
あらまぁマオちゃん、びっくりした顔してる!ドッキリじゃないのか!?どっちなんだ!
「ちっ!なるほどな…魔王の貧弱さを補うための特別製ってわけか…へっそれならそれでいい。魔王を先に殺せ!」
私の視界にマオちゃんの背後から忍び寄る数人の魔族の姿が映る。
いや、実は最初から気づいているんだけどね。最初の数人の突撃に紛れてこそこそと背後に移動してる姿が普通に見えたから何の冗談かと…。
というわけで以前使ったイビルランスを発動させてマオちゃんに近づく前に串刺しにする。
死んでも文句なんてないよねとは言ったが、殺していいのかはわからないから一応急所は外した。
え?最初の数人?あれはノーカンです。
「魔王のくせに生意気な魔法使いやがる…!だがお前の実力じゃあそんな強い魔法なんてもう撃てねえだろう!オラ!どんどん行けや!」
どうやらさっきの魔法はマオちゃんが発動したものと勘違いされてしまったらしい。
なんかよく驚かれるけどパペットって魔法使えないのかな普通?
まぁそんなことはどうでもいい…とりあえずマオちゃんを助けないと。
しかし数が多い…これは殺さないように処理するのはなかなか骨が折れるなぁ…骨ないけどさたぶんね。
「はははは!どうだ魔王!そんなパペットしか頼るものの無いお前とは違って俺様にはこんなにも部下がいる!お前と俺様とでは力ではなくカリスマも大違いってことだ!」
なかなか言うなガグレール。
まぁそれくらいじゃないとクーデターなんて起こさないか…。
マオちゃんはマオちゃんでうつむいて黙ってるし…。
「安心しろ!そのパペットもお前が死んだあと俺様が有効に使ってやるからよぉ!なかなか強ぇようだし俺様が使ってやる価値はギリあるだろうぜ」
今こいつなんて言った…?え?もしかして私を使うって言った?
あーあ…せっかく気を使ってあげたのに…殺さなくちゃいけなくなっちゃった。
「ガグレール口を閉じろ!!!!それ以上は…!!」
マオちゃんが何か叫んでる。
あぁマオちゃんも私のこと気遣ってくれてるのね?マオちゃんって本当に優しい。
それに比べてこの男は…やっぱり駄目だなぁ…マオちゃんしか私の味方はいないんだ。
そして敵は殺すしかない。なら殺そう。簡単なことだ。
とりあえず私はマオちゃんに飛び掛かろうとしていた魔族の首を掴みそのまま首の骨を握りつぶした。
血を吐きながら数度痙攣した後、地面に転がった。
こいつらもガグレールの味方なんだから敵だよね?殺すしかないよね?
「ま、待て…リリ…落ち着いてくれ」
「大丈夫だよマオちゃん。すぐ終わるからね」
カタカタと指を鳴らしながら手近なところにいるやつから順に首を切り落としていく。
十人ほど殺したところで逃げ出そうとするやつも出てくるが速度が遅すぎる。
そんな程度で逃げ切れるはずもなく、なんなく首を落とす。
相も変わらず脆い武器でつついてきたり、ちょっと汚れるだけの魔法をぶつけてきたりしてうざいからそういうやつから殺していく。
多いなぁ…なんでこんなに私には敵が多いのかなぁ…どれだけ殺せば静かになるのかなぁ。
無我夢中で刃を振るい、魔法をぶつける。
そして気づけば敵はガグレールだけになっていた。
「なんだ…なんだこれは…!」
すっかり血の海になってしまった部屋でガグレールが足を震えさせている。
「どうしたの?そんなに震えて」
「ひ、ひぃ!」
優しく声をかけてあげたのに、尻もちつきやがった…なんて失礼な男だ。
そしてでかいから尻もちついててもでかい。
首が斬り落としやすい位置にある。
「じゃあ…そろそろ死のうか」
一歩、一歩ゆっくりと脚を進めていく。
「く、来るな!来るな化け物!?」
ガグレールはその巨大なハンマーを私に放り投げてきた。
避けたらマオちゃんに当たりそうだから適当に殴って砕いておく。
「ばかな…その武器は代々俺様の家に伝わる…」
何か言ってるが気にしない。
また一歩…そして一歩…と歩みを進めていく。
「来るな…来ないでくれぇええ!!」
もちろんそんなことを聞いてあげるわけもなく…一歩ずつ確実に距離を詰める。
「わかった!俺様が悪かった…!もうクーデターなんて考えないから!いうこと聞くから!」
そんなの私には関係ないのでもちろん止まらない。
「魔王頼むよ!パペットを止めてくれ!な!?絶対服従するから!魔王様!!」
「すまない…私にリリを止めることはできない…」
一歩、そして最後の一歩。
手を伸ばせば首を落とせる位置までたどり着いた。
「あ、あぁぁ…!やめろ…やめてくれ…俺を見るな…その目で俺を見ないでください…」
その目?今私はどんな目をしているのだろうか?割と普通だと思うけれど。
そろそろいいかと腕を振り上げる。
「許してくれ…何でもするから…」
どうやら何でもしてくれるらしい。
それはいい事を聞いた!なら私が望むことは一つ。
「じゃあ、し、ん、で?」
そして私の刃は無事、敵の命を奪うことができたのだった。
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