第13話人形少女は魔王のために戦う

「ねーねーマオちゃん」

「…それは私の事か?」


「うん」

「…魔王だから?」


「そう!」

「…それで何か用か?」


今現在私は魔王の仕事場…魔王の間とか呼ばれている場所で魔王が書類に目を通しているのをぼ~っと見つめている。

この前会ったアルギナさんから魔王と一緒にいてくれと言われたためここにいるのだけれど…。


「ひま!」

「いや、私は忙しいのだが…」


いかんせんやることがない。静かすぎるのもマイナスだ。

なんでも今日は魔王の部下は皆用事があるらしく誰もいない。退屈を持て余しすぎて死にそうだ。

魔王城の探検とかさせてもらおうとも思ったけれどせっかく魔王と二人っきりだし二人で何かしたい気持ちなんですよ私は。


「え~つまらないなぁ」

「もう少しで一段落するからその時にお茶でも飲もう…だからそれまではおとなしくしていてくれ」


「は~い」

「誘っておいてなんだが…君は飲食はできるのか?」


確かに。

私じつはこの世界に来てから一度も飲み食いしていない。

人形だから食べなくても平気…なのだがそもそも食べれないのか、食べる必要がないだけなのかは知らない。

これはチャレンジしてみるべきかもしれない!

魔王に言われるまで気にもしてなかった!


「やっぱりマオちゃんは私にいろんなものをくれるねぇ~退屈が紛らわせそうだよ!」

「それはよかった…というか私にそんな感謝をする必要はないと思うぞ?あの自分に魔法をかけるという方法だって単純なものだったし…いずれ君自身でも気づけたと思う」


私は魔王の元に移動して後ろから抱きしめた。


「そんなことどうでもいいの~私はマオちゃんがしてくれたことが嬉しかった。ただそれだけだから」

「そ、そうか…あの…すまないが離れてもらえると…」


ガタガタとマオちゃんは震えていた。

寒いのかな?私、人形だから身体がひんやりしてて冷たかったのかもしれない。

悪い事しちゃったかな~?しかたない離れるとしましょう。

その後も休憩時間を心待ちにしながら魔王をただただ見つめる。

時折こちらをちらっと見ては目が合って慌ててそらすのが何とも可愛い。


「マオちゃん、なにか手伝おうか?何でも言って~」

「いや…今は大丈夫だ。ありがとう」


「え~つまんないの~」

「…では少し早いが休憩にしよう」


「え!?ほんとに!やったー!」


るんるん気分でいると突然、扉が勢いよく開いた。

音がすっごい大きくて、殴り飛ばしたとか蹴り飛ばしたとかそんな感じの開き方だ。


「よぉ魔王様」


魔王の間に入ってきたのはやたらとでかい一つ目の男だった。

いや、それにしてもでかい。2メートル以上ある。


「ガグレール…これはどういうつもりだ?」


でか男の名前はガグレールさんというらしい。

なんとなく嫌な雰囲気をかんじるですよはい。


「どういうつもりだ?決まってんだろ。軟弱な魔王様に対してクーデターでも起こそうと思ってなぁ…お前ら!」


ぞろぞろとガグレールほどではないがなかなかでかい男たちが入ってくる。

そしてさらに後ろには角が生えてたり獣の姿をしていたりと実に多様なおそらく魔族の人たちがいっぱいいる。


「お前たちが私に対して不満を持っているのはわかる…しかしクーデターを起こすほど愚かだとは思わんかったぞ」

「はっ!そういうところがダメなんだお前は!だから俺様がお前に変わって魔王をやってやろうって言ってんだよ」


「私の部下が出払っているタイミングでか?それでよく私の事を軟弱だと言えたものだ」

「俺様はあいつらのことは認めてんだよ!やつらは強いからなぁ…だがお前はなんだ?弱っちい虫けらじゃねえか!俺様達魔族の本分は破壊、殺戮、闘争!だろうがよ!それをてめえの力が弱いことを棚に上げて日和やがって…ふざけんじゃねえ!」


「…人間たちとの事を言っているのか?だとしたら何度も説明したはずだ。我々は人間に比べて数が少ない。向こうにも強者が存在する以上ここで戦争を起こしても被害が多くなりすぎ、」


ガグレールがどこから取り出したのか巨大なハンマーのようなものを取り出し、床にたたきつけた。


「ぐだぐだうるせぇんだよクソが。雑魚が俺様に指図するんじゃねえ。とっとと俺様に魔王の座を明け渡せ、さもないと殺すぜ?」

「・・・」


ガグレールさんが魔王に近づいてくる。

私が見た感じ確かに魔王はガグレールに比べてだいぶ弱い…というか魔王があんまり強くない。

レザの半分くらいの強さだ。

対するガグレールは…レザと互角くらいかなぁ…?べリアちゃんよりは弱そう。

なんだか魔王が普通に負けてしまいそうだし、ここは私の出番かな!?

というわけで二人の間に割り込む私。


「なんだ?誰だ貴様…パペット…?ははは!これは傑作だな!とうとうこんな小細工にまで手を出したのか魔王!パペットモンスターなどと言う雑魚に頼るなど笑いが止まらんな!」

「待て、ガグレール。私の事はいい、そいつを刺激するな」


「あ?なんだなんだ?このパペットが大事なのか?ならこうしてやるよ!」

「ガグレール!!!!」


ガグレールが私にハンマーを振り下ろした。

この野郎…思いっきり顔面にやりやがった…こんなにかわいい人形なのになんてことするんだ。

いやしかし、びっくりするほど痛くない。なんだこれ…?


「なんだ…このパペット…無茶苦茶かてぇ…?」

「いやいや、君の力が弱いんじゃないかな~」


「喋っただと…?」

「そりゃあ喋るよ。あとこれいい加減どけてくれないかな~?」


ハンマーを軽く押しのける。それだけでガグレールは大げさに態勢を崩した。


「なんだ…?どうなってやがる?」

「いやこっちのせりふだよ、何やってるの」


「ちっ!お前ら!この人形ごと魔王もやっちまえ!」


ずらずらと後ろにいた人たちが私と魔王を囲む。

う~む少しだけめんどくさいけれど頑張らなくては!魔王にいいとこ見せて好感度アップだ!


「安心してねマオちゃん!私が守ってあげるからね」


右腕を持ち上げて指をカタカタと鳴らす。

さぁ始めましょう。クーデターなんて起こしたんだもんね?


「死んでも文句なんてないよね?」

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