第28話 ゴブリンはザコじゃなかったよ 2

 ドラゴンの剣を僕の剣で受け止めた。

 だがダメだ。モフラーの姿では剣を握っている訳ではないので競り負ける。

 剣が弾かれドラゴンの攻撃が来る。ブースターを使って回避。

 ドラゴンが追って来る。弾かれた剣で牽制するが盾で防がれ勢いは止まらない。

 ドラゴンの剣が燃える。【炎の刃】も使ったのだろう。

 逃げながらモフラーの本来持っている魔法【ダークスパイク】を使う。黒い球体がいくつも空中にばらまかれ浮いている。

 この球体は振れられるとトゲで突き刺す能力を持つ。

 うん、ダメだ。ドラゴンは全く気にした様子はない。突き刺さっても鎧から出た炎で傷口は焼いて塞がれている。

 ドラゴンはあっという間に目の前にやってきて、そして斬られた。

 だがこちらの鎧も頑丈だ。体が切り裂かれることは無く、地面に叩き落された。

 そこへ燃える盾でさらに押しつぶされた。

 盾から抜け出せぬまま変身が溶けた。


「【魂の同調ソウルシンクロン:岩マムシ】」


 盾がどく気配なないので岩マムシとなって地面に潜る。


「【エレメンタルア――」


 地面の中を移動しながら新しい防具を用意しようとしたらその地面が急に溶けだした。マグマのようになる地面。

 マグマに腕が突っ込まれ、掴まれた。そのまま握りつぶされた。

 防具がなくて即死だった。変身が解ける。


「【魂の同調:大ムカデ】」


 大きな体になる事で腕の拘束を解く。


「【エレメンタルソード】」


 すべての足と牙に付与。

 そのまま腕から巻き付き、その首元に噛みついた。

 ドラゴンが抵抗して巻き付いた右腕を振りまわしたり、左手の燃える盾で殴ってきたりする。

 体が燃えて熱いが気にしない。

 巻き付いた腕の防具が壊れ、骨の折れる音があたりに響く。

 そろそろ限界かな。やっぱり虫は火に弱いのかな。鎧なしでも片腕折るまで行けたけど、こっちの体もボコボコのグチャグチャになっている。

 変身が解ける前に離れよう。


「【雷光一閃】」


 大ムカデには光魔法の適性があったので【雷光一閃】で一気に距離を離す。

 変身が解けてゴーストの姿になる。


「【魂の同調:ニードルウルフ】」


 ドラゴンは【ヒール】を使い折れた腕を直す。壊れた鎧も元通りだ。

 大丈夫、ドラゴンの魔力も無限じゃないはず。いつかは回復できなくなる。それまで耐えられれば……。

 しかも今攻撃した箇所に紫の光が見える。【エレメンタルソード】には【毒の刃】の効果も付加されているようだ。名前を付けた時に剣に付与してあったからかな?

 

「【エレメンタルアーマー】」


 大ムカデの時に足や牙に【エレメンタルソード】の付与をしたからそれは継続されている。

 ブースターを点火する。

 毒の効果でドラゴンの右腕の動きがぎこちない。

 放水を使って体を横にスライドして剣を回避。

 そのまま攻撃をする。盾で防がれたが、何度も爪で攻撃し盾を破壊する。

 盾への攻撃でドラゴンが動けない内に、背後から弾かれて遠くへ飛んでいた【ストーンスピア】を呼び戻して攻撃。尻尾を切り落とすことに成功した。

 盾を壊したら、そのまま左腕に乗って噛みつく。

 相手の剣が来る。ブースターと足裏からの放水で即座に離脱。

 剣が自分の腕を斬らないように止まる。

 その剣を【ストーンスピア】で叩く。

 剣の破壊と、勢いで自分の腕を斬らないかなと思ったが、剣は少し欠けて左腕に少し剣が食い込む。

 よし、これなら――。

 空中で方向を変えて剣への追撃の体当たり。

 僕の鎧は壊れたが、そのおかげで左腕が落ちた。

 ドラゴンの怒りの視線。剣が振り上げられ【ストーンスピア】は破壊され、変身も解除された。


「【魂の同調:シビレグモ】」


 腕も尻尾もすぐに【ヒール】で治された。だけど腕の鎧や盾の再生はさせない。

 魔法で出したモノだから魔力を使えば直せるはずなんだけどな。

 剣が真ん中で別れ、二本になった。ここからは二刀流で行くようだ。

 なんだ、戦い方を変えるから盾はいらなっかたのか。


「グウォォ~」


 しまった、いつの間にか【聖女のヴェール】の効果が切れていたようだ。

 体が動かなくなる。

 あっさりとやられてしまった。

 変身が解けたことで状態異常もリセットされる。


「【魂の同調:ゴブリン】【聖女のヴェール】【エレメンタルアーマー】【魂の同調:チュパカブリ】」


 移動して相手の攻撃を避けながら、次々に呪文を唱えていく。

 聖属性が使えるゴブリンは次にヴェールが切れた時のために残しておきたい。

 チュパカブリになり擬態発動。馬巨人の姿になるけどこれでも大人と子供みたいな差があるな。


「【ストーンスピア】【エレメンタルソード】」


 作った剣で相手の剣を受ける。

 受け止め身動きが取れなくなったところにもう一本の攻撃。

 ブースターを体を支える補助に使い、片足を使い二本目の剣を蹴って弾く。

 剣から手を離し一本目の剣を殴る。

 鎧や盾を修復していない理由は、僕がそんなことしなくても倒せる程度の相手と見ているのか、又は修復できるだけの魔力が残っていないかだ。

 さっきから火の攻撃も出なくなっているし後者の可能性が高い気がする。

 それを確認するためにも武器の破壊を目指す。

 剣は魔力で動かしてドラゴンの背後へ。さすがに前後同時に対処は出来ないでしょ? 出来ないよね?

 翼が二枚落ちる。剣も一本破壊できた。

 さて、どんな結果になるかな?

 胸の鎧を蹴る。足裏から火の力で爆発を起こして勢いで離れた。

 しかし接近しすぎだった。僕も離れる時に片腕をやられてしまった。

 ま、こっちは擬態なり変身を解けばなんの問題もないけどね。


「【魂の同調:牛魔人】」


 ドラゴンは【ヒール】は使ったが、やっぱり壊れた剣も鎧も修復しなかった。

 まだ魔力は残っているけど僕がどんなに倒されても変身して立ち上がるから警戒して節約しているとか?

 魔力で剣を呼び寄せる。牛魔人の体では馬巨人サイズの武器は大きいな。

 ま、使い方としてはファンネルなんだけどね。


「【ストーンスピア】【エレメンタルソード】」


 同じ大きさのものをあと三本。合計四本の剣を振り回す。

 相手の武器や鎧が回復しないのなら僕は拳でそれを破壊をしつつ、魔法で操った剣で斬りつける。

 翼や尻尾、手足を斬りながら、もう一本の剣も破壊した。

 ドラゴンが手足を再生させるが、翼と尻尾は直さない。


「グウォォ~」


 今までに落とした全てのドラゴンの部位が集まり、新しい防具と二本の剣へと変化した。

 それだけではなく新たに二本の腕まで生えている。

 その腕が飛び回る僕の剣を掴み、握りつぶした。

 さらに接近したドラゴンが剣で攻撃してきた。一本目を避け、二本目も避け、殴られた。


「くはっ」


 地面へと叩きつけられる。

 そこへドラゴンの剣が投げられた。


「【魂の同調:チュパカブリ】」


 また馬巨人の姿で、こっちも両手に剣を持つ。

 さて、牛魔人もやられてこっちもそろそろヤバいぞ。残っている戦えそうなのはチュパカブリとゴブリンだけ。

 相手の剣を避け、こっちも剣で攻撃し、避けられ、剣を掴まれ、壊し壊されしながらなんとか方法はないかと考える。

 幸いなことに壊れた武器はもう直されず【ヒール】を使う気配もない。

 むこうの魔力が尽きているのは間違いない。

 さらに追加された腕は、生身の腕を生やしたのではなく、防具の形を変えて新しい腕を作っていたことが片腕を破壊して判明した。

 だからって勝てる方法が閃いたわけでもないんだけどね。

 やがてチュパカブリも倒された。

 ドラゴンの方も翼は全てなく飛ぶことは出来ない。鎧も胴体以外破壊、剣も一本しか残っておらず追加の腕もない。

【毒の刃】による毒も全身に回り動きが鈍くなっている。


「【魂の同調:ゴブリン】【聖女のヴェール】【エレメンタルアーマー】【エレメンタルソード】」


 これで五つ星並みの強さのモンスターはラストだ。

 手足に【エレメンタルソード】を付与。【ストーンスピア】に使う魔力を節約して体の強化に使っているのだけど、結局最後に頼れるのは筋肉だっていうファジズ義兄にいさんの言葉は真実だったな。

 ゴブリンの大きさは人間の子ども程度。人間とアリの対決のようだ。

 ドラゴンの攻撃に対して殴る。剣と鎧がぶつかり、剣を砕いた。

 折れた刃を掴んで投げる。


「グルゥ~」


 刃は肩に突き刺さった。

 ブースターを全力でふかしてさらにそこへキックを食らわせる。刃がグイッと入り骨で止まる。

 折れた剣の柄で殴られそうになる。

 回避するけど一回で諦めてくれるわけもなく、折れた剣で何度も攻撃される。

 ブースターを使い、風を操り速度を上げ、手から放水で位置の調整や回避をして、攻められる隙を探しては突進して左肩に刺さった刃を殴る。

 骨を超え左腕を切り落とすことに成功した。そのまま刃は胴の鎧に当たり地面に落ちていく。

 折れた剣の攻撃を避けて、持っている手を攻撃。骨の砕ける音が聞こえた。

 剣が落ちる。

 よし、もう少しで――。

 片手を切り落とし、武器も手放なさせた事で少し油断してしまった。

 折れた腕で摘ままれ、そして口へ運ばれ噛まれた。

 防具などなんの意味もなくかみ砕かれ、変身が解けた。

 これでもう、強いモンスターは全部やられてしまった……。

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