第27話 ゴブリンはザコじゃなかったよ
六体の五つ星モンスターが新たに手に入ったわけだけど、どれで戦おうかな?
やっぱり火の弱点である水で行くべきだよな。
ボックスから魔法一覧表示で水属性を選択して並び替え。
水の適性があったのは三体。酸ゼリーとドライアドとゴブリンだ。
その中で五つ星なのはゴブリンだけ。というか――
「ゴブリン魔法の適性多すぎない?」
水だけでなく火、風、土、聖の五属性も持っている。ゴブリンなんてその辺で拾った石やら骨やらで戦う数が多いだけのザコって認識なのに、こんなに多芸な魔物だったか?
「グルルゥゥ~」
細かいことを確認している場合じゃなくなったな。
とりあえず牛魔人の姿のまま。僕が苦労させられたアレで時間を稼ごう。
魔力を練り、両手から感覚を惑わせる【闇の霧】を発生させた。
闇属性の魔法適正がなければ何も見えなくなり、相手の気配もわからなくなる霧だ。ドラゴンに闇の適性がなければ効果があるはず――。
よし、問題なく聞いたようだ。ドラゴンが僕を見失い、尻尾を振り回して出鱈目に攻撃している。
今の内にゴブリンの能力を細かく見よう。
「あ、そういう事?」
ゴブリンの名前の横に『ゴブリンウィザード』や『ゴブリンメイジ』の名前もあった。
ゴブリンウィザードは魔法で攻撃してくるゴブリンで火魔法を使う『フレイムゴブリンウィザード』みたいに土の『アース』風の『ウィンド』水の『ウォーター』と四種類のゴブリンウィザードが存在している。
そしてゴブリンメイジは補助や回復などの聖属性の魔法を使う。
「ゴブリンウィザードだメイジだって名前はギルドが付けたもの。おはぎとぼたもちみたいに地方や時期で呼び名が違っているだけで中身は同じみたいな? だから魔石は同じゴブリンで統一され、全部の魔法適正が現れていると……」
同じような事はモフラーにも起きている。このモンスターは
この二体もボックスには同一のモンスターとして処理されている。
変身の時は能力は変わらないけど、どちらの姿になるのか思うだけで選べるようだ。
「とりあえず闇の霧の効果が切れるまではこのまま戦うかな? いや、でも――」
闇魔法の適性を持たないゴブリンでは霧の中で戦いにならないのだけど、先に【ストーンスピア】で出した剣に水の魔力を付与しておくのもありだろう。
いや、どうせなら全属性の魔力を付与したら最強なんじゃね?
「【
剣にどんどん魔力を付与していくと赤、オレンジ、緑、青、紫の五色の輝きを持つ剣となった。
土属性もなんかないかなと思ったら【土の刃】も思いついた。切れ味が増して、頑丈になる効果のようだ。
聖属性には武器を強くするものはないようだ。そもそもが強化や補助の魔法だから使用者の身体能力を上げているし、それでいいだろ的な事かな?
「【サポーター】【魔力ブースト】【魔獣探知】」
自身にも強化魔法をかける。
「防御も上げておくかな。火と風の鎧は……【業火の鎧】【疾風の鎧】」
すでに発動している【岩石の鎧】【流水の鎧】に加えて二属性の鎧を作る魔法も使う。
四つの属性の鎧が混じり、変化する。
「聖属性や呪術属性の鎧は――【反射の鎧】か」
聖属性はやっぱり何もなかったが、呪術には【反射の鎧】というダメージの一部を相手に返す付与が出来るようだった。
こうして五種類の魔法wを付与された剣と鎧が出来上がった。
「なんだかどこかのロボットアニメに出てくるロボみたいな見た目になったな」
全体的には白く、肩や胸などが青や黄色、赤色に塗られた、スーパー系ではなくリアル系の主人公機のような配色だ。兜の黄色い角やバックパックについたバーニアなんかもそれっぽい。
自分の魔法だし強そうな鎧として僕が潜在的に思っていたのがこのモビルなスーツって事?
「準備完了っと【魂の同調:牛魔人】」
バックパックから火を出しドラゴンに斬りかかる
「グウォォ~」
こっちの接近に気付いたドラゴンが吠えるが、ユイのかけてくれた【聖女のヴェール】がまだ残っているので動けなる事はない。
ドラゴンがブレスを吐いた。それは僕がいるのと反対の方向。
剣で翼の付け根を攻撃、少し硬いが力を入れたらいけそうだ。
「りゃ~」
「グウォォ~!!」
片方の翼が地面に落ちる。
鱗の隙間から炎が溢れて火球となり僕に攻撃してくる。
バーニアを使って即離脱。
風と火の力を使って空中を逃げ回る。【黒い霧】の効果があるはずなのに、火球が正確に僕を追いかけてくる。なんだろ、追尾機能を持った自動反撃の魔法とか?
「【ビックシールド】」
追いかけられているので身代わりを用意。
その盾に火球が当たり、一瞬で完全に溶かした。別の火球が溶けた盾を突き抜け追いかけてくる。
これは受けないとダメかな?
「【魂の同調:馬巨人】」
覚悟を決めてドラゴンに対抗できないだろう弱いモンスターで受ける事にした。
二発、三発と当たり爆発する。
「おや、意外と……耐えられているな」
十数発は爆破を耐える事が出来た。さすがに全弾を防せぎきれはしなかった。
「【魂の同調:モフラー】」
今回は鎧が壊れるタイミングがわかっていたから壊れる瞬間に変身したけど、間に合わずに馬巨人はやられてしまった。
変身先は闇の魔法属性を持つモフラー。
五つ星で空を飛べるモンスターはこいつだけだから残しておきたい気持ちもあるが、鎧があれば飛べることもわかったし、ドラゴンの片翼は切り落とした。
魔法で強化した剣と鎧があれば十分戦える。
「大自然の四属性を持つ強力な剣と鎧か。【エレメンタルソード】【エレメンタルアーマー】と名付けようか」
魔法が発動する。
剣にさらなる付与と、壊れた鎧が復活した。
え? なんでだ?
なぜか新しい無属性魔法が手に入った。それが今発動した二つ。
誰でも使えるという意味での無属性ではなく、特別で、おそらく僕しか使えない特殊な魔法としての無属性魔法だ。
効果はさっきまで使ってたのと同じ四属性の効果を持たせた武器付与魔法と鎧作成魔法だ。
武器付与の方は前にかけたのがまだ残っているのにその上にさらに別魔法として追加された感じだ。
しかも無属性だからどのモンスターの姿でも発動可能という優れもの。
この状態で【伸びる刃】を使ったらどうなるんだ?
あの魔法は付与された全魔力を一撃に込めて放つ魔法。今の状態で撃ったらどんな威力なのか試してみたい。もしかしたらドラゴンも倒せるんじゃないかな?
「いっけ~」
蛾の手では剣なんて持てないけど【ストーンスピア】で作った武器なので意思だけで動かすことが出来る。
斬撃を放った瞬間、剣も消えた。全てが魔力となって衝撃波に乗って飛んでいく。
僕に迫ってきていた全ての火球が誘爆し、【闇の霧】も斬れて消えた。
霧が無くなったとこでドラゴンがこちらの位置を正確にとらえた。
ドラゴンが首を動かし、斬撃を食べた。
おいおい、嘘だろ……。
「グウォォ~」
ドラゴンの体が輝く。
あれはユイが【ヒール】を使った時の光に似ているな……。
そんな事を思っていると、折れたはずの角や斬れた翼があらたに生えてきた。やっぱり【ヒール】だ。
火属性だけでなく聖属性も持っていたのか。
僕の魔力を食って自分の魔力に変換したか?
そして使った聖魔法は【ヒール】だけではない。何かしらの強化魔法も使ったようだ。
ドラゴンの背中にさらに翼が生え、六枚の翼を持ち、その体は巨大化していき四足歩行だったのが二足歩行のリザードマンや竜人に近い姿となる。
それだけでなく炎が全身から噴き出したかと思ったら、真紅の鎧へと変化した。落ちた翼が姿を変え手には剣を二つくっつけたような両端が刃となった剣と盾を持っている。
変化を終えてドラゴンが剣を構える
「【ストーンスピア】【エレメンタルソード】」
こちらもそれに対応すべく剣を用意した。
それにしてもデカすぎんだろ、牛巨人や大ムカデのような今まで見た巨大なモンスターの倍以上あるんじゃないか?
こんなのに勝てんのか?
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