第16話 ついに手に入れた人間の姿 5
岩マムシとの戦いは他人の目もあるのでいつもとは違う。いつもだったら魔力切れも気にせず全体に【土壁】で足場を鉄板にして穴を掘って逃げられないようにしてから上からさらに【土壁】で押しつぶしてしまうとか、【ストーンスピア】で大量の武器を出して振り回して倒しまくるという方法もとれる。そして魔力が切れたら別のモンスターに変身して戦い続けるといういつもの戦法だ。
だけど今回は変身を使って別の姿になるわけにはいかない。なのでまずは【伸びる刃】を使って衝撃波で大量に排除。
ボックスで牛魔人の状態を確認して魔力が四分の一になるまでは変わらずこの方法で戦い、四分の一を切った所で攻撃するフリをして岩マムシごと地面を陥没させる。
「【土壁】」
不自然じゃないタイミングで地面を盛り上げエターナル・フォース・ブリザードから僕の姿が見えないようにする。
「【
そして新たに融合で手に入れたチュパカブリ、擬態能力があり過去に遺伝子を取り込んだ事のある相手の姿になる事が出来る。そして僕はマーク2の血を飲んでいるので今と同じ牛魔人の姿に擬態可能。
一瞬だけチュパカブリ本来の姿をさらすのでそこだけ隠せば、はい元気。
そしてまた衝撃波を出しまくる。チュパカブリだと牛魔人より威力は落ちるて倒せる数は減るけど一撃で倒せるのに変わりない。
よし、順調に数は減っているな。そろそろチュパカブリの魔力も減ってきた。
牛魔人もチュパカブリも魔力がなくなった時にどんな影響が体に出るかわからないのでこの場で限界まで使う勇気はない。
だから四分の一まで減ったらまた地面を攻撃して【土壁】
「【魂の同調:牛魔人】」
今回は姿が変わらないので隠す必要は無いかもしれないけど、変身の瞬間に自分では気づいていないけど一瞬ゴーストの姿に戻っているなんて事があればバレるかもしれないので念のためにだ。
牛魔人に戻ったのはこっちの方が筋力の数値が高く物理攻撃が得意だからだ。
岩マムシの数はだいぶ減っていたがまだそれなりに数はいる。エターナル・フォース・ブリザードの人に当たらないように人の居ない所を担当していたので残りはエターナル・フォース・ブリザードの周囲ばかりだ。
それとこの戦闘中も【魔獣探知】に新たに岩マムシが産まれた気配が何度も伝わってきた。
そういえば、ボスが討伐されるとしばらくモンスターの出現数が減るから、強いモンスターの存在が他のモンスターを産み出す要素の一つになっているのでは、なんて説があるとかないとかそんな話をクーガ団最年長のドワーフ、ファイズの兄さん――三百歳越えだがドワーフ基準だと爺さんと呼ぶと怒られるので兄さんと呼んでいる――から聞いた事があったな。
この場にはハンマーテイルと僕がいる。巣って事はただですら岩マムシが産まれやすい環境に二体の強いモンスターの影響で排出率がフィーバー状態なのかもしれない。
いや、ここで倒した岩マムシの魔石は全部貰える約束になっているし、別に倒せない魔物ではないので僕一人ならば大歓迎な状態だ。
でもエターナル・フォース・ブリザードの人達の安全を考えたらさっさと終わらせてあげた方がいいだろう。
セイテンは僕に見せてくれた時以外に【伸びる刃】を使っていない。この魔法は使うたびに武器に纏わせた魔力を全部撃ち出すから、岩マムシの【岩石の鎧】で防御されて魔力を纏っていない武器ではあまりダメージを与えられない関係で使っていないのかも。
僕みたいに魔力切れたら別のモンスターになります、ケガも全部元通り。なんて
残りの岩マムシは他の人の周囲にいるのと新たに産まれてくるのだけ。さて、どこの岩マムシから片付けようか?
現在の位置取りはランド、アリシア、セイテンの前衛三人組と残りの後衛四人組。
前衛とまとめたけど、バラバラに動き回っているので、三人の動きの邪魔にならないように気を付けながらその辺にいるのを片付ければいいのだろうけど、後衛のフォローもあり自分達でも吹っ飛ばしているのでほっといても減らしてくれるかも。
後衛四人はまとまっていて、ブットビに煩わされなくなったユイの防御魔法とシモンが近付いてくる岩マムシに対応している感じだ。
ユイの魔力がどれだけあるかわからないし、後衛組はあんまり動いていないからこっちの方が戦いに参加しやすいかも。
そんなわけで後衛の周囲をお掃除開始だ。
◇◇◇◇◇
「【カオスゲート】」
戦いの邪魔になるので倒した岩マムシを全部回収。ちゃんとびっくりされないように使用前に大声で全員に伝えてからの使用だ。
新しく産まれた岩マムシを戦いと関係ない場所まで蹴り飛ばす。残りの岩マムシはもういない。新しく産まれるのをすぐに片付けつつエターナル・フォース・ブリザードとハンマーテイルの戦いを見ていく。
と言ってももう戦いは終わりそうだ。名前の由来の尻尾は切り落され【岩石の鎧】も破壊され大量の血を流している。そして足は凍らされ動けず、片目に矢が刺さっている。
炎に包まれたランドのバスターソードとアリシアの風を纏う剣がX《クロス》してハンマーテイルを切り裂いた。
「ギュエェェ~」
断末魔の悲鳴を上げハンマーテイルが倒れた。エターナル・フォース・ブリザードの勝利だ。
「うっしゃー俺達の勝ちだぁ~!!」
ランドがバスターソード高く上げた。
「まさか倒せるとはな」
「お、やったな大将」
「これはおいしいお酒が飲めそうね」
「ユイちゃん、シモン君ケガしてるよぉ~。回復おねが~い」
「はう、ごめんなさい、もうユイ魔力が――」
「……大丈夫……ポーション……ある」
全員が喜んでいるようだ。僕はそれを見ながら新たな岩マムシを倒して【カオスゲート】で回収。
「ジオグーンさ~ん、やりましたよ。ジオグーンさんが手伝って下さったおかげでユイ達ハンマーテイルに勝っきゃっ」
ユイが走ってきた。そして足をもつれさせてコケそうになる。
すぐに近付いてコケないようにささえる。
「ふぇ、ご、ごめんなさい」
「魔力が切れかけているんですよね。無理は良くないですよ」
魔力を減ると状態によって頭痛だったりフラフラしたり、気絶したりする。
ユイの状態は気絶の直前、本当に限界まで魔力を使ったのだろう。
「大丈夫、ユイはまだ元――」
あ、気絶した。
ユイの体がそのまま後ろに倒れそうになったので抱きとめる。これどうしよう――
そう思って彼女の仲間の方を見ると召喚獣の白馬が消えていた。召喚主の意識が消えたからいなくなったか。
「支えてくれてありがとね。ユイは私が預かるわ」
アリシアがユイを背負う。
奥ではライムがハンマーテイルを【カオスゲート】で回収していた。
「ところでブットビの死体がそのままなんだけどいいの? 【カオスゲート】が使えるんだから回収すればいいのに」
「え? だって報酬は岩マムシだけですよね。アレはアナタ達のものなのでは?」
「ブットビを倒したのは貴方じゃないの。気にせず持っていっていいわよ」
「あ、そうですか。では遠慮なく【カオスゲート】」
ブットビも回収。これはギルドに提出するから魔石は奪っちゃダメだと憶えておかなきゃ。
「なぁ姉御、戦いが終わったんならとりあえず移動しようぜ。ここだとまたいつ岩マムシが復活すっかわかんねぇぞ? 大将達は移動するのに賛成だ」
セイテンもこっちに来た。
「そうね、すぐに移動しましょう」
「ジオグーンも一緒に来いよ。大将が感謝の宴会をしようって言ってんだ」
宴会か……。エターナル・フォース・ブリザードの皆さんはハンマーテイルとの戦いで疲労困憊でボロボロだしな。ここで次のモンスターに襲われたら大変だ。
うん、せっかくだしもう少し一緒に行こう。
「はい、ではお言葉に甘えて行かせてもらいます」
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