第12話 ついに手に入れた人間の姿
ニードルウルフはまだ体力が回復しきってないので変身は出来ないが、融合には使えるようだ。
モンコモとニードルウルフを合わせて出来るモンスターは――
「チュパカブリ? なんだかヤギの血を吸う未確認生物みたいな名前だな」
コウモリを使っているし、名前的にも血を吸うモンスターなのだろうか?
名前以外の事はおしえてくれないようだ。
融合後のモンスターの名前と「融合していいですか?」と「はい」か「いいえ」の選択肢だけ。
まったく情報はないけど今回はお試しだし作ってみよう。
「二つの魂を束ね、新たな力を今ここに
別にこんな呪文を唱える必要はない。ただ「はい」を押せばいいだけだ。だけどなんか雰囲気づくりなつもりで適当な事を言いながら「はい」を押した。
画面に
六芒星が消えて見慣れたモンスターの詳細画面。
真っ白な
魔法は呪術属性のみだが、今までに手に入れた呪術魔法はデフォルトで覚えているので全部――【催眠術】【超音波】【石化】【毒の刃】【夢の霧】【魔封剣】は――無詠唱で発動できるようだ。
ニードルウルフには特殊な能力がなかったので何も継承されていない。
鋼のような体毛とか嗅覚とか脚力とかどうなのって思ったけど、モンコモからも飛行能力を継承できていないし動物としての特性的な何かは引き継がれないのかな?
モンコモに関しては呪術魔法と血を吸うと体力や魔力を回復できる吸血の二つを継承できた。
そしてチュパカブリの持つ新たな能力は擬態。
血を吸ってその姿を被る、だからチュパカブリって事かな?
「これって大当たりのモンスターじゃん。僕が欲しかったのこれだよ」
チュパカブリの擬態能力と僕の遺伝子情報があれば人間だった頃の僕の姿を取り戻せるという事だ。
人間に近い姿ならいいかなと思っていたけど、これは本当にうれしい。まさか元の自分に戻れるなんて。
そして僕の遺伝子情報だが、ある。スケルトンの持っているポーション用の試験管の中に僕の血が入っているのだ。それを飲めば僕は
だけど今はまだスケルトンが回復待ちの状態なのでダメだ。
「スケルトンにはなれないけど、魔石のもとは僕だし擬態出来たりしないかな?」
試してみるかな?
「【魂の同調:チュパカブリ】」
変身して擬態をする。頭の中に候補が浮かんでくる。モンスターになってから肉を食べたり血を吸ったりしたモンスター達の姿。ゴーストの姿もあったがその中に自分の姿は無かった。
「ダメだったか。今後の事を考えるとこの擬態を出来るモンスターを複数体所持しておきたいかな。スケルトンが回復するまで時間あるし、モンコモとニードルウルフの魔石を集めておくか。よし【魂の同調:牛魔人】」
牛魔王は半裸の姿だ。もしかしたらサニーサイドアップの人たちを見かけたように誰か冒険者に出会うかもしれない。牛魔人の姿ならば僕がフォールだとは気付かれないけど、牛の獣人だとは思われるだろう。
でもダンジョン内を半裸で歩いていては頭のおかしな人間だと思われて印象に残るだろう。
【闇の羽衣】で服を用意する。格闘家の道着のような恰好。
次のモンスターが入ってこないように覆っていた土壁を解除する。その先にモンスターの姿はもうなかった。
「【足音】」
次にどこに行こうかという
闇魔法にいい感じのものありませんか?
何も魔法は思い浮かばなかった。
「聖魔法はどうだろう?」
マーク2との戦いでやられなかったモンスターはあと馬巨人だけ。その馬巨人の魔法適正は聖魔法だった。手がかりが何もないのでワンチャン試してみるか。
「【魂の同調:
変身して願ってみる。女神様、索敵魔法が欲しいです。
「お、来たぞ【魔獣探知】」
モンスターを探すことが出来る魔法だ。モンスター以外の存在はわからないようだけど、そこは【足音】と併用していけばカバーできるかな?
さて【魔獣探知】の結果だけど斜め下からモンスターの気配。天井にいるようだ。モンコモかしら?
「【魂の同調:牛魔人】」
【闇の羽衣】の効果は【岩石の鎧】と同じく変身すると自動でそのモンスターのサイズに合わせて変化してくれるようだ。変身するたびに魔法を使いなおす必要が無くて助かるな。
「【落とし穴】【土壁】」
穴を開けて飛び降りたら、あとから来た誰かが落ちないようにすぐにその穴を閉じる。そして反応のあった場所に向かって歩き出す――
「偽名というとクワトロとかゼクスとかモンターク……」
もし冒険者に出会った時の偽名は何を名乗ろうかと考えながら。
人間の姿を手に入れたからだろうか、人間に出会えることを心から期待していた。
「よし決めた。ジオーグにしよう」
予想通り天井に止まっていたモンスターはモンコモだった。一匹目を全力で殴ったら破裂して返り血が顔についた。【カオスゲート】を使って回収して顔から血をはがす。幸い魔石は壊れることなく地面に落ちた。少し力を弱めて二匹目、また破裂した。三匹目、もっと弱めて――失敗。さらに弱めて――失敗。さらに弱めて――失敗。
もう撫でるくらいの気持ちでソフトタッチ、ようやく体を残して倒せた。
モンコモを全部倒した後、もう一度【カオスゲート】を使って返り血も飛び散った肉片も全部回収。よし、綺麗になった。
でも戦うたびに手加減を意識するの面倒だな。
そうだ、弱体化の武器を【魔剣所持】で作ればいいか。でも自分を弱らせるでいいのか?
壊れなければいいから不滅とか不壊とか手加減みたいな効果を付ければいいか。
方向性が決まったので道着に合わせて手加減の
両手に生み出した武器が装着される。効果は望んだレベルの手加減を自動でやってくれる手甲だ、それと同時に本来の力と手加減で伝えられた力の差分だけ蓄えて、自分の意思でそれを放つことが出来る。ちなみに一度魔法を解くと蓄えた力がリセットされる仕組みなので注意が必要だ。
「お、この反応は人間か?」
【魔獣探知】と【足音】で異なる数の反応が下からあった。
【魔獣探知】には大きなモンスターが一体と小さいモンスターの反応がなんか大量。それと空中を素早く動き回る一体。
【足音】には七人動き回る振動と、地面を這いずるようなたくさんの動き、それと四足歩行の何かの重い振動。
場所はかなり下、ダンジョンの底なんじゃないかな?
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